手の中の北極星
掲載日:2026/10/23
どこにも行けない夜の底で、小さな道標を見つけるためのお話です。
闇の底ですれ違う息の白さばかりを数えていた夜、
指先を掠めたかすかな冷たさは、どこか遠い銀河の破片だった。
掌を開けば、そこにぽつりと灯るちいさな白銀。
誰の地図にも載っていない、誰も見上げる必要のない、
世界でたったひとつの、ぼくの手の中の北極星。
街灯は不機嫌に点滅を繰り返し、
迷子の靴音だけが濡れたアスファルトを叩くけれど、
ここにある光は揺らがない。
震える爪先を照らし、行先をそっと指し示す。
かつて見上げては手を伸ばし、ただ諦めていた空の向こう。
巨きな北斗七星の尾を離れ、
落ちてきたのは冷酷な夜の静けさではなく、
温もりさえ抱えた一粒の道標だった。
手の中の北極星だよ、と君は笑う。
ポケットに拳を突っ込んだまま歩く日々にも、
この小さな導きがあれば、
どんな暗がりもどこかへ繋がる小径に変わる。
掴んだ握りこぶしを解くたび、
眩しさに眩んだ世界が、すこしだけ優しく回り始める。
ご覧いただきありがとうございます。
暗闇の中でふと見つける小さな光のような、誰かの夜にそっと寄り添えるお話になっていれば幸いです。
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