4 卯の花が咲く頃
今日は天気が良くほんのり暖かい、久しぶりにジョギングを楽しもうと、軽い格好に着替えて走りに出ました。久しぶりだったせいなのか、直ぐに膝が痛くなり、帰ってきました。
それでは小説の続きを書こうと机の前に座りました。今度は瞼が重くなってきました。だめな私を許してください。
ああ眠い。朝は依然として寒いが、日中は暖かい。虎子も外で日向ぼっこする時間が増えてきた。ウグイスやメジロは最近とんと来ない。空の上は、トンビがゆっくりと上昇気流に乗って旋回している。
秘密基地であるコタツ布団は2階にあるベランダで干している。
私も庭に出て草むしり。
いつの間にか雑草が勢いよく伸びている。可愛いタンポポは既に花を付けている。
非情な私は、これらを全て抜いてゴミ袋に入れていく。それを虎子は横目で見ながら、私の周囲をうろうろしている。
私の身辺警護でもしているつもりだろうか。見た目はそのとおりであるが、私は全く期待していない。
なぜなら虎子の特性は暗殺者であるから。犬なら主人の傍を離れず、主人を守ろうとするだろうが、ネコである彼女にそのスキルは無い。その気も全くない。
草も粗方抜き終えた頃、バイクのエンジン音が聞こえてきた。また郵便屋さんだろう。
私の予想は当たり、私は郵便屋さんから直接、手紙を受け取る。
郵便屋さんを見送った後、虎子がいない事に気が付く。
窓から家の中を覘くと、コタツ布団を外されたコタツの掘りの中から、頭だけを出してこちらを見ている虎子がいた。
とても警戒している。その仕草がとても可愛い。
近づくバイクの音で、直ぐに身を隠したのだろう。ある意味期待通りである。
庭が、私一人になった事を確認できたのか、虎子は再び庭に出てきた。そして私の足にすり寄る。
「自分だけ逃げたのを謝りに来たのか。そんな事は気にするな。虎子軍曹には虎子軍曹の仕事がある。その時は期待している」
少し前にも言ったかもしれないが、これからの季節、この家には招かざる客が沢山訪れます。
そろそろ、山との境界付近に茂っている卯の花が咲くころだ。
白い綺麗な花だが、それを合図とでも言うように、ムカデやクモ等の虫たち、時にはマムシが我が家に訪れるはずだ。
虎子軍曹は忙しくなるだろう。今はのんびりできる最後のひと時。
4月最後の日、それはやって来た。正確に言うとやって来た痕跡があった。
朝刊を取りに玄関に行くと、その土間にバッタの足?緑色のぴょんぴょん跳ねる虫の後ろ脚が一本落ちていた。それ以外の部位はない。
猟奇的殺人現場、虫だから殺虫現場かな。ここにはない部位は何処にあるのか、容易に想像できる。
後ろを振り返ると、いつの間にか虎子がそこにいた。欠伸をしている。昨晩寝不足になる様な事があったのだ。疑いは確信に変わる。
「虎子軍曹、昨晩は侵入者を迎撃したようだな。ご苦労」
「ニャー」
得意げな顔をしている。
やはり虎子がバッタ?足しか残っていないのではっきりとは分からないが、それを食べたのだ。
少し嫌な感じを受けたが、人間社会でもイナゴを食べる文化がある。ここは個人の嗜好の違いで合って、口を出すことではない。
しかし、事件はそれだけでは終わらなかった。更に衝撃的な事が起こる。
次の日の朝、玄関の土間には、黒い虫の足が落ちていた。これには見覚えがある。多分、Gだ。あれを食べたのか。
「これは個人の嗜好、問題ない。これは個人の嗜好、問題ない」
私は自分に言い聞かせて、心の動揺を抑える。
でも、Gは絶対ダメだろう。止めさせる方歩を考えなければならない。
取敢えず言って聞かせる。
「虎子軍曹、虫は食べてはいけない。お腹を壊すかもしれないから」
「ニャー」
返事はするが、キョトンとしている。
やはりだめか。
有効な手段が思いつかないまま、一週間が過ぎた。
しかし、心配をよそに、その間は虫の死骸を見ることは無かった。
安心した。
だが、ある日、私はこの事件の真相を知る事になった。
現場は事件と同じ玄関の土間。
そこには、食事中の大きなクモがいた。Gを捕食していた。
そうだった。思い出した。この家には昔から大きなクモが住んでいた。ゴキブリなどの害虫を退治してくれていたのだ。
私は、虎子に濡れ衣を着せていたようだ。
虎子は無実だった。
とは言え、Gを食べていたからと言って、有罪でもないのだが、とにかく疑いは晴れた。
このエピソードを書き終えると、外は雨が降っていました。書いている間は気が付かなかったのに、今になって大きな雨の音に驚いています。次回は、雨の日の話にしようかな。




