レコードとソノシート
幼稚園に入るか入らないかの頃、音楽メディアの主流はレコードだった。家には子ども用のポータブルレコードプレーヤーがあり、童謡やアニメソングは、いわゆるEP盤という小さなサイズのレコードで売られていた。幼稚園を卒園したときには園歌のレコードをもらい、それが今でも幼稚園時代の思い出として残っている。
大人向けのクラシックなどで使われていたのは、LP盤という大きなサイズのレコードだ。これはポータブルレコードプレーヤーでは再生できなかった。子どもの頃、音楽といえばレコードで聴くものだった。
今、インターネットでレコードについて調べると、「しなやかで耐久性がある」と書かれている。しかし実際には、強い衝撃を与えれば簡単に割れる。椅子から転んで一枚割ってしまったことがあり、そのときに聴いていた曲と一緒に、今でもはっきり覚えている。何度も聴いていたレコードを、自分の不注意で割ってしまい、もう聴けなくなった。子どもながらに、とても悲しかった。
父もLP盤のレコードを何枚も持っていた。園児や乳児に割られないか、内心ハラハラしていたに違いない。
今でも覚えているが、小学館の学習雑誌『小学1年生』の4月号の付録は、紙で作る手回しレコードプレーヤーと、ソノシートと呼ばれる薄いレコードだった。ソノシートを手で回すと、金属製の針がシートを擦り、その振動で紙製のプレーヤー全体が鳴る仕組みだった。私が小学校に入学した年のソノシートは、「ドラえもん、ハットリくん、ケムマキ」の三人の声が聞こえるものだった。小学生が紙で作るものでも再生できる。これがレコードのいいところだと思う。実際には、小学校一年生が作って、ちゃんと音を聞くのは難しかった。比較的工作が得意だった私ですら、母親に手伝ってもらって、やっと聞けたと記憶している。ちゃんと声が聞こえるように、ゆっくりと一定のスピードで回し続けるのが実は難しい。
調べてみると、この手回しレコードプレーヤーは昭和56年に登場し、平成3年が最後だったという。その後はCDに移行したらしいが、当然ながらCDは手回しでは再生できないし、紙でCDプレーヤーを作ることもできない。「自分の手で作れて、電気も使っていないのに音が鳴り出す」というのが、この付録の一番の魅力だと思う。
昭和57年、東北新幹線と上越新幹線が開業した。当時、車内放送の前に流れるチャイムは、駅ごとに地元の民謡などをアレンジした「ふるさとチャイム」だった。昭和60年に上野駅が開業した際には、全駅のメロディを収録したソノシート付きの記念入場券が発売され、私も手に入れた(購入したのは母方の祖父だ)。
平成12年、20世紀も終わりになって、この記念入場券が家から発掘された。しかし、すでにレコードを再生できる機器はなく、知人に頼んでMD化してもらった。そのMDも、今となっては再生機器を探すのが難しいのだから皮肉なものだ。
その後、平成13年にJR東日本の車内販売会社NREが手がけていた「トレインショップ」で、「懐かしの東北・上越新幹線チャイム」としてCD化されたものを見つけ、購入した。こうして今でも聴くことはできている。20年の間に、音楽メディアの主役はすっかり入れ替わっていた。ちなみに上野駅のチャイムは「花」――「春のうららの隅田川」で始まる曲だった。
私の世代では当たり前だったレコードだが、少し下の世代にとっては触ったことすらないものらしい。大学院の頃、図書館で戦前の唱歌のレコードを聴いていたことがある。音楽資料なので貸し出しはできない。
あるとき、年下の友人と曲の話になり、「その曲は○○というレコードに入っているから、図書館で聴いてこい」と言った。友人は図書館に行ったが、帰ってきて「入っていなかった」と言う。話を聞くと、レコードが両面に音楽を記録できることを知らず、片面だけ聴いて帰ってきたらしい。思わず唖然とした。
今でもレコードプレーヤーは生産され、その筋の人たちには愛用されているという。ただ、現在販売されているのは高価なモデルばかりだ。子どもの頃の思い出として、今あれば欲しいのは、ポータブルレコードプレーヤーや手回しレコードプレーヤーである。




