表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

給食とクジラ

前回に続き、食の話である。今回は、給食の話だ。


私は昭和末期を小学生として過ごし、昭和の終わりとともに小学校を卒業した。今の給食事情はよく知らないが、少なくとも当時の給食とは、かなり様子が違うらしい。

まず、牛乳は瓶だった。瓶には紙製のキャップが付いており、その上からオーバーシュリンク包装がされていた。今は紙パックが主流で、わずかに残っている牛乳瓶も蓋はポリキャップだという。

当時の牛乳瓶は、二十本ほどが金属の籠にまとめて入れられていた。それを教室まで運ぶため、給食当番の中で一番体格のいい人が、自然と牛乳係になったものだ。低学年の頃は、外した牛乳キャップを昼休みにメンコ代わりにして遊ぶのが定番だった。今となっては、あれを取り合って何がそんなに楽しかったのか、自分でもよく分からない。

給食のお盆やお椀、皿はアルミ(アルマイト)製で、スプーンは先割れスプーンだった。机の上でカンカンと鳴らして遊んでいた。今は違うのだろうか。

当時の給食は、ほとんどがパンだった。最近は米飯が増えていると聞くが、私の小学生時代、米飯は半月か一か月に一度あるかどうかだった。パンが嫌いな私にとって、これは正直拷問だった。中学校に進学して給食がなくなったとき、本当に嬉しかった。あの給食のパンを毎日食べさせられたせいで、パン嫌いになったのではないかと、今でも思っている。当時は給食は食べ終わるまで残された。食が細い子が昼休みが終わっても給食を食べさせられていたのを覚えている。

たまに出るご飯も味が無かった。考えてみれば当然で、当時、家では麦を混ぜた麦ご飯を食べていたのに、給食では白米だった。給食がヤミ米を使うはずないので、いつ収穫されたか分からない、品質関係なく混ぜた政府管理米を使っていたのだから、今の米飯給食のような味を期待する方が無理というものだ。

それなら、減反政策を進める一方でパンを強要するのではなく、給食を毎日米飯にすればよかったのではないか。結果的に平成のコメ騒動につながったのだから、なおさらである。

最近の子どもと話していて驚いたのが、パンに付くマーガリンの提供方法だ。昭和末期の給食では、マーガリンは四角い塊が銀紙に包まれて出てきた。夏場だけはビニールの小袋だったと記憶している。そのマーガリンの銀紙を牛乳瓶に貼り付けて下膳した人がいて、校長先生が怒っていたのも思い出である。今は「ディスペンパック」、現在の名称では「パキッテ」というらしい。


当時の給食で、今ではほとんど見られなくなった食材といえば、クジラの肉である。私が小学校に入った頃、給食には普通にクジラが出ていた。すでに商業捕鯨は禁止の流れにあり、「そのうち食べられなくなる」と聞かされていた記憶がある。味の良し悪しよりも、日本の食文化が失われていくことへの反発の方が強く印象に残っている。

「給食にクジラが出ていた」と言うと、今でも半信半疑の反応をされることがある。しかし、2歳年下の妹も同じように給食でクジラを食べたと言っているので、少なくとも小学校3年生までは給食に出ていたはずだ。南極海での商業捕鯨が中止されたのは昭和62年。高学年の頃には、もうクジラは姿を消していた。

次にクジラの肉と出会ったのは、大学を卒業した年、下関を訪れたときだった。小さな刺身が一切れ1000円。懐かしさと、奪われた食文化への複雑な思いから、つい買ってしまった。小学生の頃は給食の食材だったものが、高級品になっている。その現実に、気持ちが追いつかなかった。

次にクジラと出会ったのは平成20年代。職場の飲み会で入った店に、「クジラあります」と貼り紙があった。年配の人も多く、給食でクジラを食べたことのない世代もいたので、「せっかくだから食べてみろ」と注文した。出てきたのはクジラの竜田揚げ。給食ではおなじみのメニューだ。

一口食べて、思わず声が出た。

「違う……」

柔らかくて、普通においしかった。年配の人も、「昔の給食のクジラはゴムみたいに固かった」と言う。そこまでではないにせよ、記憶の中のクジラは、もっと歯応えがあったはずだ。

年配の世代には不味かったという記憶しか残っていない給食のクジラ。高級食材になった今、普通においしく食べられるようになったのは、二十数年の技術の進化なのか、それともクジラの種類や部位が違うのか。それは、今でもよく分からない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ