↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
49/72

第49話 試練

 リーシャとヴェーダは、洞窟の階段を降りて行く。

 洞窟の中では、どこかから入ってくる風の音と、二人の足音だけが響いていた。

 明かりがあったのは、階段のところまでだった。階下に降りた途端に明かりを照らしていた明かりが全くなく、何も見えなかった。おそらく結界が張られた後は誰も入らなくなり、明かりの必要性もなくなったからだろう。


「さすがに暗いわね……」


 ヴェーダが独り言ちた。


「さすがにこの暗さだと危ないですね。ちょっと待っていて下さい」


 リーシャは先程神殿で渡された松明を灯す。

 すると、あたりがぼんやりと明るくなる。この松明は聖魔法による魔法付与(エンチャント)がされており、通常の松明よりも随分明るい。


「とりあえず、進みましょう」


 王女の言葉に、エルフ娘は頷いた。

 階段を降りては進み、降りては進み……入り組んではいなかったが、その深さに途中で心が折れそうになった。

 しかし、洞窟に入ってから一時間程経過した頃である。階下に降りた時に、リーシャとヴェーダは同時に違和感を覚えた。何かがある、という違和感。

 互いに顔を見合わせ、注意深く一歩一歩と進む。

 

「これがその結界ってやつね」

「多分……」


 美しいエルフとハイランドの王女は、同時にごくりと唾を飲む。

 部屋の中央を区切るように、可視できる程の強力な結界が張られていたのだ。

 ヴェーダは足下の石ころを拾って、その結界に向かってひょいと投げると、石ころはバチッと音を立てて粉々に粉砕された。

 金髪のエルフ娘は口笛を吹いて、その呆れを表現した。


「このまま突っ込んでたら私達もこうなってたかもね」

「ですね」


 二人は顔を見合わせ、互いに苦笑を浮かべる。


「かなり難解な結界そうだけど……一人で大丈夫?」


 ヴェーダがリーシャに訊いた。

 エルフ娘が心配するのも尤もだ。この洞窟にある結界は、軽く見積もっても〝帰らずの森〟よりも難易度の高い結界術式である。並みの術師は愚か、ヴェーダでさえも簡単には解除できない代物だろう。


「はい……頑張ります」


 私がやらないといけない事なので、とリーシャは松明をヴェーダに渡した。そして、五芒星の印を胸元に結び、結界の解除を試みる。

 ヴェーダは周囲に何か起こらないかを注意深く見回した。自然と腰のレイピアに手が触れていた。

 リーシャが古代神官語で詠唱を始めてから暫く経った頃、彼女の表情が少し変わった。


「光の神〝ミルフィリア〟よ……汝の力を以て、かの結界を解き放て」


 リーシャがそうつぶやくと同時に、パリンという音が洞窟内に鳴り響く。目の前を見ると、先程可視できていた結界は粉々に砕けて消え去った。


「え、もう解除できたの?」

「はい、ばっちりです。ちょっと苦労しました」


 リーシャは先日のようにVの形を指で示したサインを笑顔で送り、ヴェーダの問いに答えた。

 

「……ほんと、デタラメな力ね」

「え? 何がですか?」

「何でもないわ。さすが光の五大使徒の末裔ってところかしら?」


 エルフ娘は肩を竦めてそう言うが、リーシャは何の事かわからず首を傾げた。

 リーシャ個人としては、思ったより苦労したな、と思っていた。結界の解除は彼女の得意とするところだったのだが、魔力と体力、共に想定より消費していた。

 

「さあ、早く行って終わらせるわよ。この階段をまた登らないといけないのだしね」


 リーシャの体調を慮って、ヴェーダが急かす様に言った。

 王女もその言葉に頷き、前に歩を進めた時だった。

 結界が張られていた奥から、気配を感じた。

 ヴェーダが慌てて松明を奥に向けると、なんと奥から魔物が五体向かってきたのである。ゴーレムと呼ばれる、石で作られた動く人形だ。


「こ、これも試練……なんでしょうか?」

「〝光の精霊(ウィル・オ・ウィスプ)〟の分際でやってくれるじゃない……!」


 リーシャはひきつった笑みを浮かべ、それとは対照的にヴェーダは額に血管を浮かばせて不快感を顕わにしていた。

 彼女達が思っていた程、試練は簡単なものではなかった様だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。