59 五・六の塔の精霊
『うぅ……気持ち悪いですわ』
無数の赤黒い生き物が壁に張り付いていた。エメラやルビーとレミさんは気持ち悪がっていた。階段を上っていくとき俺達が近くに来ると、その赤黒い生き物たちは一斉に逃げていった。ポーション②のおかげだ。
他の塔と作りは同じみたいだけど、この七の塔は大きいので階段が長くて上るのが大変だった。
『疲れる~ピィ……』
ルビーは手を、だらん……と下げて疲れた顔をして言った。
「小鳥になったらいいよ」
俺がルビーに言うと『そうする……』と言って小鳥の姿になった。サンはルビーの頭の上からレミさんの手へピョンとジャンプして移った。
『ルビーはいいわよね、変身できて』
エメラはルビーにうらやましそうに言った。ルビーは羽ばたいて、サンのお腹の中へ入っていった。たしかにうらやましい。
途中で魔物は襲ってこなかった。長い階段を上って行くと、やっと二階にたどり着いた。
「うわっ……!」
一階同様、魔物が無数に倒れていた。一階フロアに倒れていた魔物より多い。
「あれ? どうして倒れた魔物が消えないのだろう?」
違和感だったのがそれ、だと気が付いて皆に話しかけた。アンバーが近寄ってくると俺に頭をこすりつけた。
『この七の塔は、特に赤黒い魔のモノの影響が強いみたいです。ポーションを飲んだおかげで私達は平気ですが、普通の人がこの塔に入ったら数秒で魔物化するでしょう』
アンバーから恐ろしい話を聞いた。エメラも魔物化しそうだったからな……。赤黒い魔のモノ、恐ろしい。
無数の倒された魔物を避けながら、二階フロアを進んでいた。
『まあ! 青の塔の主と藍の塔の主ではなくて?』
エメラがフロアの角に隠れていた、五の塔と六の塔の精霊を見つけた。サンの中で休んでいたルビーは声を聞きつけて中から出てきた。人間の女の子に戻った。
『わああ! 他の塔の主たち! 無事だった!?』
七の塔の精霊を抜かして、他の精霊たちが駆け寄り、集まった。これで六名の精霊がここにいる。
『魔物が倒れているのに、どうして隠れていたの?』
アンバーが隠れていた精霊に聞いた。
青と藍の塔の精霊は、お互いの顔を見てから俺達の方へ向いて話してくれた。
『勇者が来て……。魔物をあっという間に倒してくれたけれど、鬼気迫る感じで怖いくらいだったの……』
青色の髪の毛と、サファイアみたいなきれいな瞳の女の子の精霊が教えてくれた。
『問答無用で切り倒していって、僕達をチラッとだけ見て三階へ向かって行った……』
こちらは藍色の髪の毛とラピスラズリのような深い色の瞳の男の子が、三階へ続く階段を見た。
勇者……。やはりアッシュは一階・二階の魔物を一人で倒していた。絶対に無茶をしている。アッシュを追わないと!
「皆、アッシュの手助けしてくれ! お願いだ!」
レミさんと全精霊へ頭を下げた。
「危険を承知で、たのむ!」
本来ならば、戦闘に進んで加わらないだろう精霊にお願いするのは心苦しかった。だけどみんなの力が必要と思った。
『それはもちろんです! このすべての塔、この世界を救うことになります!』
青色の髪の精霊は、迷いなく皆に言った。他の精霊も青の精霊に頷いた。
『あ、そうだ!』
青の精霊は何か思いついたように言って、パチンと指を鳴らした。
「うわ!」
また空中から落ちてきたのは、勇者の防具。落とさないように慌てて両腕で抱えた。
『青の塔 サファイアの加護の胴衣と、藍の塔 ラピスラズリの加護の兜になります!』
青と藍の塔の精霊は微笑んで、俺に託してくれた。
『それと僕達、青と藍の精霊に名前をつけてください!』
両腕に落ちてしまいそうな大きさの防具を持ったまま、俺は精霊に名前をつける。少し考えて……。
「青色の精霊はファイ! 藍色の精霊はラピ! いいかな?」
精霊はみんな、宝石の名前からつけている。サファイアのファイ、ラピスラズリのラピ。
『ありがとう御座います……』と青色の精霊 ファイ。はにかんだ笑顔が可愛い。
『サンキュー!』
男の子の精霊 ラピは、活発そうだ。二人は仲が良いのか、手を繋いでいた。
『あ、そうそう。これをあげるよ』
そう言ってラピとファイがくれたのは、ラピスラズリとサファイアの宝石だった。
「ありがとう!」
きれいな宝石だ。手に持てなかったのでレミさんが代わりに受け取ってくれた。 精霊たちが無事にそろったので、賑やかになった。
三階フロアへ行く前にHP回復ポーションを皆に飲んでもらった。戦闘はしていないけれど、塔の中は広いので移動だけで疲れた。
『美味しい~! 回復した~!』
ルビーがHP回復ポーションを、ゴクゴクと飲んだ。ジュースじゃないぞ。
「レン様、アッシュ様へその防具を届けに行きましょう!」
「うん!」
三階フロア。
他の塔の階段の二倍はある距離を上ってやっと着いた。
「アッシュ――!!」
三階入り口近くで、アッシュは倒れていた。俺は持っていた勇者の防具を床に置いて、アッシュの元へ走った。
「アッシュ!」
頭だけ抱き起して見ると顔が紫色になっていて、どうみても毒にやられていた。
「なんてひどい……!」
レミさんはアッシュの顔色を見て言った。
早く毒消しを飲ませてやらないと、手遅れになってしまう……! カバンの中から毒消し&HP回復ポーションを取り出した。
「アッシュ! 飲んで!」
気を失っているアッシュは、毒消し&HP回復ポーションを飲めなかった。




