58 七の塔へ
「今すぐアッシュの所へ行こう!」
俺は着替えて準備をしようとした。なぜアッシュは一人で七の塔へ行ってしまったのか。
「それでは準備してまいります。準備ができましたら『移動の間』へ集合しましょう」
レミさんは俺達に言った。礼をして部屋から急いで出ていった。
『アッシュは先に、七の塔へ行ったの?』
ルビーは俺に話しかけてきた。振り返るとルビーとエメラは、動きやすい服をメイドさんに着せてもらっていた。
「そうみたい。だから急いでアッシュの後を追う。ルビー、エメラ、サン。準備して」
着替えながらルビーとエメラに言った。二人はそれぞれカバンを持ったり、サンの毛並みを整えたりした。
『うん』『キュ!』
ルビー、サンは返事をした。エメラは首をかしげて、何か考えているようだ。
『おかしいですわ……。絶対にレン様の助けが必要なのに、なぜお一人で行かれたのか不可解ですわ』
頬を人差し指で触っている。
「俺の助けが必要?」
「仲間は必要なはずですわ」
エメラは頬を指で、トン、トンと触れながら俺に言った。俺にもわからない。
「わからないから、会ってアッシュから聞きだす!」
『わかったピ!』
『キュキュ!』
ルビーとサンは元気よく返事をした。サンはお城に来てから、ルビーの頭に乗ったり、お城の中をふらふらしたり寝ていたりと自由に動いていた。
『……ですね。本人に聞くのが一番ですわ』
俺は前に作っていた色々なポーションをカバンに入れた。きっと厳しい戦いになると思う。
「俺の準備ができたから、行こうか!」
皆はそれぞれ頷いた。
【移動の間】
俺とルビー(サン)・エメラ、レミさん、アンバー。人間二人に、精霊四人がそろった。
赤の一の塔・ルビー、橙の二塔・サン、黄の三の塔・アンバー、緑の四の塔・エメラ。
魔物と魔のモノのボスが支配していた一から四の塔までを攻略し、そこの精霊を救出できた。あとは五・六の塔と七の塔の魔物と魔のモノのボスを倒さなければこの国の魔物はなくならない。
「行きますよ」
「うん!」
レミさんが【水晶転送装置】を高く掲げた! 周りの景色が歪んでいく……。
周りの景色の歪みがもとに戻ったとき、目の前に大きな塔が建っていた。今まで訪れた塔より一番大きかった。
「ここが、七の塔。……大きい」
『五、六、七の塔の精霊が助けを求めているピ! お友達を助けてあげたいピ』
ルビーは俺を縋るような瞳で見た。俺は……、主人公ではないけれど精霊たちを助けたい。
「うん! 精霊たちを助けてあげよう! あと、アッシュを探そう!」
『ありがとう!』『ありがとう御座います』『キュキュ!』
「アッシュ様はもう、中へ入られたのでしょうか?」
レミさんは塔を見上げて言った。
「たぶん、中にいる。急いで中へ入ろう」
「はい」
俺は今まで訪れた塔でやった、やり方を試してみた。手を前に出して壁へ近づいていく。
『おお! さすがレン様ですね』
今まで黙っていたアンバーが、口を開いた。人間の姿から大きな犬のような姿になっていて、昨日はどこにいたのか誰もわからなかった。
「入るよ。みんな、ついてきて」
グッと壁を押すように進むと、手から中へ吸い込まれるように入っていった。
「精霊様、遅れないようについて来てください」
レミさんは精霊たちに、遅れないよう話しかけた。
「えっ!?」
一階フロアに入って一番先に見えたのは、大勢の魔物たちが床に倒れている光景だった。折り重なるように魔物が倒れて、異常なものだ。
『これは……どうしたのでしょうか』
『こんなにたくさんの魔物が……』『キュ……』
『勇者さん……ではないでしょうか?』
アンバーが鼻を魔物に近づけて言った。
『みんな、一撃でやられているようです。こんな戦い方をするのは勇者さんしかおりません』
アンバーは二階へ続く階段を見て、俺に伝えてきた。
『早く勇者さんの元へ行った方が、良いと思います』
「うん」
なにか嫌な予感がする。
「うわっ!」
壁に赤黒い何かがうごめいていた。よく見ると無数の赤黒い色をした生き物だった。
「こんなに壁にたくさん……。壁の色だと思っていました……」
レミさんが目を背けて言った。
「これ、みんな毒の生き物だろう――! また『赤黒い生き物が襲ってこない、ポーション②!』を飲んで!」
俺はカバンから、例のポーション②を取り出して皆へ配った。
赤黒い枝やツルが襲ってこない、ポーションの第二弾だ。飲むと毒のモノを寄せ付けない。
「はい! 触りたくないので飲みます!」とレミさんが手をあげた。さっそく飲み干した。
『私も――』『飲みますわ!』『キュキュ!』
ルビー・エメラ・サンが一気に飲んだ。みんな触りたくないよね。緑のシールドをまとった。
『はい。アンバーも飲みなよ』
アンバーに渡すと、他の者を見て大丈夫そうなのなので安心したのか飲み干した。俺も飲んで毒の魔物除けの緑のシールドをまとった。
「じゃあ二階へ行くよ。気をつけてね」
俺達は倒れている魔物を避けて、二階へ続く階段を上がっていった。




