55 ルビーとエメラ と作戦会議
『レン様、レン様。夕方になりましたよ』
俺の体を揺らして起こす、聞きなれない声。あれ、俺は……?
「んんっ?」
まぶたを開けると、緑の髪の毛とエメラルドのような瞳の女の子が俺の顔を見ていた。え――と……。
「エメラ……だ」
『はい』
右側も温かかったのでそちらを見ると、赤い髪をした女の子が俺の腕を枕にして寝ていた。
「ルビー」
『むにゃ……。どうしたピ……?』
「どうして一緒に寝ているんだ!?」
俺はガバッ! と上半身を起こした。ルビーの頭がコロンと俺の腕から落ちた。
『急に起きないでピィ……』
ルビーは、ふわぁあ……! と両手をあげて欠伸をした。
『私達がレン様のお布団に、潜り込みましたの』
フフフ! とエメラは笑った。……まったく! 驚いた。
『朝じゃないけど、おはよ、レン……』
ルビーは俺に抱きついてきた。まだルビーは寝ぼけているようだ。
それを見たエメラも俺の肩に両手を置いて、身を寄せてきた。
『ずるいですわ、私も!』
嬉しいけれど、身動き取れない。なんだろう、この状態。
「そろそろ起きないと……」
なかなか二人とも離れないので、二人を交互に見て言った。ルビーとエメラは仲が良いのか、悪いのかわからなくなってきた。
『そうですわ! 私はレン様を、起こして差し上げていたところでしたの』
「そうか。ありがと……う?」
起こしてくれたという、エメラの顔から下を見てみると薄いシャツを寝間着代わりにしていた。
「わあ! 早く着替えて!」
目の毒なくらい、エメラの首元と両足が見えていた。俺はエメラから目を逸らして、ルビーの方に視線を向けた。
「ルビー!?」
ルビーはルビーで大の字になって、ワンピースのスカートの裾がめくれあがって脚が見えていた。しかも二度寝していた。
「風邪を引くぞ……って、そろそろ起きよう。ルビー?」
俺はルビーのめくれたワンピースの裾を直して、ルビーを起こした。
『お城のお布団、ふわふわで気持ちいい……』
丸まってさらに寝ようとした。今から眠ると夜に眠れなくなる。
『ルビーったら……』
エメラはルビーを見て呆れていた。
「もうすぐご飯になるよ」
俺はルビーの耳元で囁いてみた。ルビーはすぐに起き上がってベッドから起きた。
『着替える!』
俺もベッドから降りて着替えることにした。
「やあ! ゆっくり休めたかい?」
着替えて、俺達三人は食事をする部屋へメイドさんに連れられてきた。アッシュ、レミさんはすでに席へ座っていた。
「アッシュ! レミさん!」
俺は急いで椅子へ座った。
「アンバーさんから、食事は要らないと連絡がありました」
レミさんがアンバーからの連絡を聞いていたらしい。
「食事を要らないって……大丈夫?」
エメラに尋ねてみた。
『私達精霊は、本来人間の食事は必要ないのです。こうしていただいているのは、皆さまと楽しむためです』
『えー? 私はお腹が空くからだけど』
エメラが何か話すとルビーが反論するし、逆もある。困った子達だ。
「食事をしてから、話し合おう」
アッシュが髭の男の人に視線を向けると、しばらくしてからお料理が運ばれてきた。豪華な食事に俺は目を輝かせた。分厚いお肉、きれいに盛り付けられた数々の料理。デザートまで完ぺきだった。
アッシュは気品のある所作で口へ運んでいた。町の食事処で初めて会ったことを思い出した。
「さて。エメラさん……だったかな。詳しいことを話して欲しい」
食事が終わって皆、別室へ移った。人払いもされて、緊張感が漂っていた。皆、着席してエメラに注目した。
『はい。私の住まう緑の四の塔が襲われたときに、塔を守っていた枝やツルが赤黒い霧によって魔のモノとなりました』
エメラは顔をしかめながら皆に話し始めた。自分の身も魔のモノになりかけていたので、本当ならば話したくないだろう。それでも話をしてくれるのは、同じ塔の仲間のためだろう。
『そして私も魔のモノになりかけましたが救っていただいて、こうして無事に皆様とお話しすることが出来ました。感謝いたします』
エメラは皆に深々と頭を下げた。
『ルビーは小鳥だから、飛んで逃げられたんだピ。でも森まで追ってきて、隠れていたの……』
ルビーも立ち上がって話してくれた。自分の両腕を抱えて少し震えていた。
ルビーを助けた日、森の様子がおかしかった。ルビーの話を考えるとあの時、ボス級の魔のモノがいた。遭遇しなくて良かったと心から思った。
アッシュの勇者レベルも低かったと思うし、俺とアッシュだけだったらと……考えるだけで身震いした。
『一の塔から七の塔まで襲ったのは、毒……赤黒いモノを吐き出す魔のモノです』
「毒……!?」
エメラが話してくれた内容に皆が驚いた。
『残念ながら姿は見えませんでした。奇襲されてあっという間でしたの……』
「エメラさん、ありがとう。十分です。敵の攻撃を知っていれば、こちらが有利になります」
アッシュがエメラに言うと、レミさんが頷いた。
「全部の塔を魔のモノから取り戻して、精霊を助けたい。みんな、力を貸してくれる?」
アッシュが一人一人の顔を見て尋ねた。
「もちろんですわ」とレミさんが頷いた。
『仲間を助けたいピ――!』
ルビーが立ったまま、力を込めて言った。
『私も、仲間を助けたい。五、六、七の塔の精霊は、助けを待っているはずです。どうか……お願いいたします!』
エメラは再び頭を下げた。胸に手を当てて表情が暗い。きっと心配なのだろう。
「俺も、もちろん一緒に行くよ! 解毒ポーション、たくさん作らないと!」
皆の意見が一致した。




