50 モフモフが仲間になった!
「せ、精霊!?」
手で捕まえられそうなくらいの大きさの、精霊が浮かんでいた。男の子の精霊で大人しそうな感じだった。
『はい。黄色の三の塔に住んでいた精霊です。四の塔の三階にいる魔物のボスが、三の塔の精霊たちをさらって赤黒い霧で魔物にしてしまいました』
『二階にいた魔物を倒してくれて、ありがとう。その防具は勇者へ渡してくれないかな?』
「あ、ああ!」
俺は三の塔の精霊から受け取った防具を持ってアッシュのもとへ。
『おめでとうございます! 勇者アッシュは、この塔のボスを見事倒した!』
サッとアッシュへ防具を手渡した。テンプレセリフと、行動も操作されている気がする……。
『勇者の証、琥珀が埋め込まれた足の防具を授けましょう!』
俺はアッシュへ防具を渡した。
「ありがとう」
パチパチパチパチ! 皆が拍手をした。
『はい。これは君にあげる』
小さい精霊は俺の手のひらに琥珀を渡してくれた。
「わあ! 俺に? ありがとう!」
それは……茶色の透明な、琥珀だった。
『三階に捕らわれている、この四の塔の仲間がいます。どうか助けてくださいませんか?』
黄の三の塔の精霊は俺達に、この塔の仲間を助けてくれないかとお願いしてきた。
「もちろんです」
アッシュが即答した。迷いはない。さすが勇者だ。
『お願いします! 僕もお手伝いします!』
黄の塔の精霊はそう言い、クルクルと回転した。だんだん姿が変わっていく。
「え」
大型のわんこ、茶色の毛の犬になった! モフモフだ……。あれ……? 本当に犬なのかはわからないけど、長い茶色の毛がモフモフ!
『どうかよろしく。できれば名前をつけてくださいませんか?』
アッシュとレミさんは言葉を失くして驚いていた。
「よろしく! 名前? う――んと、茶色いし、琥珀をもらったし。アンバー! アンバーでどう?」
俺は単純に、琥珀からアンバーと名をつけた。わかりやすい名前の方がいい。
『アンバー……! 素敵ですね! ありがとう御座います!』
アンバーは仲間になった。モフモフが増えた!
「アンバー、その……」
俺はアンバーの毛並みを見て、どうしてもやりたいことがあった。嫌がられるだろうか。
『なんでしょうか?』
真っ直ぐに俺を見ているアンバーに勇気を出して答えた。
「撫でていいですか!」
俺は頭を下げてアンバーのお願いしてみた。皆はシーンと静かになって動きをとめた。
アンバーは少し戸惑った感じだったけれど、茶色の犬の姿で俺にすり寄ってきた。
『ええ。どうぞ。好きなだけ触ってください』
「わあ……」
茶色の犬の毛の手触りは、サンよりは柔らかくないけれどフワフワして気持ちが良かった。俺は夢中になってアンバーを撫でた。
「モフモフだ……」
両手で収まらないくらいの大きさなのでモフモフに埋もれている。ついでに顔をうずめてみた。
「ふわあ……」
癒される! 抱きついたままこのまま眠ってしまいそうだ……。
「あの……レン様? もうそろそろ……」
「あっ!」
レミさんが遠慮がちに、俺へ話しかけてきた。あまりの気持ち良さに眠ってしまいそうだった。
「ごめん、ごめん! 気持ち良くて眠ってしまいそうだった!」
『レン。今、寝てダメ!』
ルビーに怒られた。俺はアンバーから渋々離れた。またあとで触らせてもらおう。
「四の塔 三階のボスへ進むけれど、大丈夫かい?」
アッシュは俺達に話しかけた。持ち物のチェックをした。
「あ、向かう前にこれ飲んで」
俺の特製 能力向上茶だ。布に乾燥したハーブや木の実、その他のモノをブレンドして水出しのお茶にしてきた。
「はい、どうぞ!」
コップに人数分のお茶を水筒から注いだ。今度は紅茶の葉を一緒に入れてあるから、知っている味だろう。
「ありがとう。紅茶の香りがするね」
アッシュは喉が渇いていたようで、冷たい紅茶を飲み干した。
「いただきます。あら、これは爽やかです」
『ルビーとサンにも!』
「はい、どうぞ。アンバーも……飲む?」
『いえ、僕はいいです』
ワンちゃんだから飲まない方がいいかなと思ったけど聞いてみたら、アンバーは断った。
「ん!?」
「あら!?」
先に飲んだ二人が声を上げた。
「これ……すごいね。力が出てくる」
アッシュは手のひらを見て呟いた。レミさんも腕の辺りを見て「本当ですね」と言った。
『ルビーも!』『キュキュ!』
良かった。効果はちゃんと出ているようだ。俺も飲んでみると、体の底から力が湧いてきた。
アッシュは先ほど受け取った、勇者の防具を身につけた。これで剣と盾と足の、武器防具がそろった。まだ完ぺきじゃないけれどカッコイイ。
「その防具は重くないの?」
ちょっと気になってアッシュに聞いてみた。
「重くないよ。軽いぐらい」
金属っぽいけれど、違うみたい。何の素材だろう? 【魔道具士】としては知りたい。
「クスッ。熱心だね。あとでじっくり見たら?」
俺がジッ――とみていたらアッシュに笑われてしまった。
「う、うん」
いつも自動的にステータス画面みたいのが出るけど、これは見えない。レベルが高いのか、それとも人間が作ったものじゃないとか? う――ん、わからない。
「そろそろ行くよ」
「はい!」
俺達は武器を取り、階段を上がっていった。




