48 四の塔 一階
俺達は、『三、五、六の塔が魔物に襲われて、四の塔と七の塔に他の塔の精霊たちが閉じ込められた』という情報を聞いて四の塔へやってきた。
「まずは四の塔。ぼくについてきて」
四の塔に着いてからアッシュが、塔の壁の一部分に手で触れた。
アッシュはスッと、迷いもなく塔の中へ入っていった。俺達はアッシュのあとについていった。
「うわ……」
一の塔、二の塔に行ったことがあるから、この四の塔の内部の荒れた様子に驚いた。
円形の壁という壁に赤黒い枝やツルが覆っていた。しかもウネウネと少し動いているようだ。
「気味が悪いですね……」
レミさんはルビーの後ろに立って警戒していた。ルビーは橙の精霊サンをギュッと抱っこしていた。
「本来はこんな感じじゃない。塔全体が魔物に囚われている。気をつけて行こう」
「うん。あ、ちょっと待ってくれる?」
俺はカバンの中から【魔力のツボ】を取り出し、その場に座って薬草や材料をならべた。
「何をするの?」
アッシュは俺が何をするか興味津々だった。
「作ってみたいものがあるんだ」
魔力のツボに材料を入れた。ルビーも近寄ってきてのぞいていた。
「これがこうだから、これを入れて……。それで、これで……よし!」
フタを閉めて、俺は念じた!
ボン! 魔力のツボから、四つのポーションが飛び出してきた。
「できた! これを一気に飲んでください!」
底が丸いビーカーみたいな入れ物に、深緑色の液体が入っていた。
「……これを?」
アッシュが、俺の作ったポーションの色を見て言った。皆が飲むのを躊躇しているようだ。
「あっ、レンさんの作った飲み薬やお茶は美味しいですから! 多分、大丈夫だと思います!」
レミさんが気を使って言ってくれた。
『まずそう――』
『キュキュ!』
子供は正直だ。本当の年齢はわからないけれど……。色まで気がまわらなかった。今度は色にも気をつかうようにする……。
「俺が飲んでみるよ!」
「あっ!?」
俺はビンを持って、ごくごくごくごく……と一気に飲んだ。
「くっ!」
「大丈夫ですか!?」
俺が眉を寄せるとレミさんが心配そうに水を持ってきた。
「あっ!? レン様の体に……」
淡い緑色の透明な膜が体全体を覆っていた。
「うまい! まずくない。薬草茶のようだよ。これであの赤黒い枝や、ツルが襲ってこないはず」
「えっ? そんな効果のポーションは聞いてことはありませんが、そんな効果があるのですか?」
レミさんや他の人達も驚いていた。そうか……。そんな効果のポーションはなかったのか。
「せっかくレンが作ってくれたのだから、飲むよ」
アッシュがポーションのビンを持って皆が見守る中、一気に飲んだ。グビグビグビ……。
「大丈夫でしょうか? アッシュ様」
皆、そんなにまずいと思っているのかな? ちょっとショック。
「あれ? まずくない」
飲み終わってビンを床に置いた。皆、不思議そうな顔をした。
「この国に緑色の飲み物ってあまりなくて、苦い薬やまずいポーションしかなかったりするんだ」とアッシュは俺に教えてくれた。
「そうなんだ」
そう言えばレミさんも……。
「飲みますね」
レミさんも飲む気になったようなので俺はポーションを渡した。レミさんは、おそるおそる飲み干した。
「あら。美味しい」
『ルビーとサンは、精霊だからいらないよ』
プイとルビーは横を向いた。そんなに飲みたくないのかな……?
「え――。精霊でもあの魔物が襲って来るよ」
ウネウネと動く、赤黒い枝やツルを指さして言った。ルビーはそれを見てポーションを掴んで一気に飲んだ。
プワッ……。ルビーの体全体に淡い緑色の透明な膜が張った。
「ホントだ――。甘い」
俺はサンにも飲ませた。意外とサンは抵抗せずに飲んだ。
『キュキュキュ!』
皆、『赤黒い枝やツルが襲ってこない、ポーションを飲んだ!』
「では行こうか」
アッシュは、自分の体全体にまとった淡い緑色の透明な膜を確かめてから歩いた。
この四の塔も円形のフロアになっていて、壁際に沿って階段が作られていた。
「壁に貼りついている、赤黒い枝やツルは触らないようにね、ルビー」
『触りたくない……』
気持ち悪がってルビーは、それらを避けた。
「レン。飲んだポーションすごい効果だね。赤黒い枝やツルがぼくたちを避けている。階段を一段上がるたび、切っていかなくて済むよ」
「本当ですわ……。避けていますね」
『すごい』『キュ!』
「良かった。この場で思いついて作ったポーションだけどね」
効果があってよかった。
二階へ上がっていくと、先に行った一の塔と二の塔と雰囲気が違った。
「植物が……」
赤黒い枝やツルの植物の手足を持つ魔物がたくさんいた。三階への階段は奥にある。魔物を倒して行かないと三階へは行けない感じだ。
「みんな、いいかい?」
「うん」
アッシュは一の塔で手に入れた『勇者の宝剣』を構えた。きらりと光る、勇者の宝剣……。勇者、かっこいい。こんな近くで勇者の戦いを見られるなんて!
俺は弓と弓矢を準備して、ルビーと後方で待機した。
「行くよ!」
「はいっ!」
アッシュとレミさんが先に魔物へ突入していった。俺とルビーは後方で、魔法と弓矢で補助しながら攻撃を始めた。




