46 この国の伝説
『昔から子供達が親から教えられる、この国の伝説があります』
レミさんが姿勢を伸ばした。真剣な顔をして話を始めた。
『いつか魔のモノが復活し、この国を覆いつくすとき。獣は魔物になり、人を襲う。人々は恐怖するだろう。
希望を忘れてはならぬ。光が現れ、魔を滅ぼす旅に出るだろう。
困難な旅になる。だが光を助ける、小さき者が現れるだろう。その者は加護を探し、力となる。
七色の光、七色の精霊。
光と、小さき者の困難な旅を、皆で力を合わせて魔を倒せ』
俺は鳥肌が立った。 七色の光、七色の精霊。
これは俺がギルドで鑑定したら【冒険者鑑定の証明書】に浮かび上がったものだ。
伝説の一節が【冒険者鑑定の証明書】に浮かび上がったら、それは驚く。
「子供が眠る前に絵本で読み聞かせしたり、聞いたりするこの国の伝説です」
レミさんは胸の前で手を握り、俺を見ていた。ロイさんも姿勢を正し、笑顔を消して俺を見た。
「レン様がギルドで鑑定をした後に、ギルマスから連絡がありました。私は王命を受けて、レン様の案内役兼護衛になりました」
カツッ! レミさんは姿勢をさらに正して、俺にすがるような眼で見て言った。
【どうか勇者様と共に、この世界を救ってください】
レミさんとロイさんが強制テンプレセリフを言った。
ダラダラ……、ダラダラと俺は汗をかいていた。【魔のモノ】……って、魔王? やっぱりいるのか?
光って、勇者 アッシュのことだろう。小さき者って、俺!?
「レミさん。小さき者って俺じゃない、勘違いじゃ……「いいえ、間違いはありません!」」
俺が否定しようとしたら、すぐに肯定された。早い。
「黒き髪に黒き瞳……。間違いはありません。その禁書と別の王家に伝わる、古文書に書かれています」
レミさんは曇り無き瞳を見せて言った。ロイさんを見ると、力強く頷いた。
「マジか……」
どうやら俺だけ知らなかったようだ。でも、偶然アッシュと出会って……。偶然じゃなかったってこと?
「あ、そうそう! お姫様の『魔石病』を治す方法なのだけど」
レミさんが待ち焦がれたものだと思う。本のページをめくった。
「……どうやら七つの塔が、関係しているようなんだ」
「えっ?」
本に書いていることを言うとレミさんは驚いていた。
「勇者も七つの塔に行かなければならない……とも書いてある」
勇者は、塔のボス攻略かな?
とにかく全部の塔に行けばいいのか。そして……。
レミさんの所へ図書館の係の人が来て、何か伝えていた。
「レン様、読み終わりましたでしょうか? そろそろお時間になります」
「は、はい」
一応全部、最後まで何とか読み終えた。しかたなく本をていねいにとじた。
俺は本が乗っている台から離れると、ロイさんが近づいてきてカバンから道具を取り出した。
「また、箱と鍵を閉めるから離れていて」
「はい」
今度はロイさんが台の前に立って、箱を開けたときのように道具を空に浮かせた。
「すごい……」
またロイさんの体にオーラが見えた。
そして箱が空中へ浮かんで本を覆った。ロイさんの指が動いて道具が動き、カギがかけられたようだ。
「毎回、カギの場所は変えてある。二度と同じ場所にはカギはつけない」と、ロイさんは教えてくれた。
「すごいです!」
俺はすごいしか言えなくなっていた。本当にロイさんは【魔道具士】として一流だ。
俺もロイさんみたいな、一流の【魔道具士】になりたい。ロイさんは最後のカギを、カチャ……ン! と閉めた。
「レン君は一か所、カギを開いたよね?」
ロイさんは上げていた腕をだらん、と下げて俺に話しかけた。
「え、あ、はい」
スペードのキーヘッドのついたやつのカギ穴を見つけた。
「それを見つけたってことは、【魔道具士】レベルが30超えていることになる」
レベルが30超え!? いつの間に!?
「何か作っていただろう? 作っていけばレベルが上がるけれど、早すぎるな……」
ロイさんは「ふうむ」と言って何かを考えていた。レベルの上がるのが早すぎ?
「楽しくなって色々作っていましたからですね、きっと!」
そろそろごまかしが、きかなくなってきた。
「やっぱり……」
ロイさんが俺に近づいて呟いた。
「な、何でしょうか?」
俺はロイさんから離れた。けどまた近寄ってきた。
「やっぱり、弟子にならない? 好待遇・高給取りの良いアットホームな職場だよ!」
ニコニコと笑ってスカウトしてきた。アットホームな職場……か。
「今は、やめときます」
きっぱりと言った。今は姫様のことが心配だ。
「これから七つの塔へ、行かないといけないので!」
「そっか。残念……。でも旅が終わったら考えてくれるかい?」
ロイさんは旅が終わった後のことを言った。
そういえば俺は、この旅が終わったらどうなるのだろう?
「……考えておきます」とだけ、ロイさんに伝えた。
「もうここから出なくてはいけない時間です。急ぎましょう」
レミさんに促されて『閲覧禁止・許可の無い者の立ち入り禁止』の場所から出た。
もっと見たかったけれど時間切れになってしまった。他に興味のありそうな本がたくさんあった。
「それでは参りましょうか」
また俺はレミさんの後についていった。




