29 青い金彩が美しい装丁の本 【魔道具士《まどうぐし》】
「聞いていい? 魔道具って、なに?」
【魔道具屋】に行ったことはあるけど、魔道具そのものを俺は知らなかった。
「【魔道具】はそうですね……。レン様がギルドで冒険者登録をしたとき、手首に【冒険者の証】をもらえましたよね?」
レミさんは俺の手首を見た。確かにギルドで冒険者登録をしたときに、手首に巻き付いてきた。
「それが【魔道具】です」
「え! これが魔道具だったのか。なるほど……」
俺は手首にある【冒険者の証】をじっくりと見た。不思議な素材で作られたもの。これはまだ作れないだろうな……と見ていたら、ブオン! とステータス画面みたいのが出てきた。
ん――? 【冒険者の証】は 【魔道具士《まどうぐし》】レベル50が必要……。
「レベル50!!!!」
レミさんが俺の大声に反応して、剣を握った。
「レン様、どうしました!?」
レミさんとルビーは俺のことを見ている。大きな声を出してしまった。
「なんでも、ないよ……ハハハハ!」
下手な誤魔化し方だった。俺は川の水で手を洗った。
俺は、勇者 アッシュの活躍を影で見たかっただけなのに、どんどん俺のスキルが増えていく! モブなのに!
これがゲームの強制力!?
とにかく! 俺はモブで! こっそり、かっこいい勇者アッシュの活躍を見守るんだ!
『それは、無理ですね』
えっ!? 俺の耳の近くで、誰かがささやいた。だ、誰!? キョロキョロと辺りを見回したけれど、レミさんとルビーだけ。他に誰もいなかった。レミさんとルビーは、ささやけるような位置ではなく俺の前にいて少し離れている。
こわっ!
「どうしました? レン様」
レミさんの声でも、ルビーの声でもなかった。俺は寒気がして早くここから離れたくなった。
「もうそろそろ、行こうか!」
わざと明るい声を出して、元気よく二人に話しかけた。
「そうですね。ルビー様、川から出ましょうか」
ルビーは裸足になって足首まで川の中へ入っていた。気持ち良さそうだった。
「もう少し入ってたかった……」
ルビーは口をとがらせていた。しかたなく川から出て、岩に座ってレミさんに足を拭いてもらっていた。
「レン様、準備が出来ました。行きましょう」
「うん」
みんな荷物を持って川から出発した。休憩できたので疲れもとれた。あとは進むのみ。
迷わないように、冒険者が歩いてきただろう道を進んで行く。たくさんの人が歩いて踏み固めた道だろう。アスファルトではない土の感触を新鮮な気分で歩く。
「ルビー。疲れたら元の姿に戻って、俺の肩に乗っていいぞ」
『そうする……ピィ』
あっという間に、小鳥の姿になった。パタパタ飛んで、俺の肩へとまった。
「眠くなったら、ポケットの中に入ってもいいよ」
『ぴ! ありがと』
小鳥のルビーは俺に頬ずりした。……小鳥、可愛い。
「このまま真っすぐ行って森を抜ければ、次の宿屋に着きます」
レミさんがそう言って歩いている前を指さした。目的地を言ってくれると先に進める。
歩きながら俺はさっきの、魔道具士のことを考えた。すると頭の中に、本の中身が映像となって表れた。
「……!」
まるで本のページを写真で撮ったように、頭の中でそれが見えている。驚いたけど、今度は声を出さないようにできた。
でも基本的なことがわからなければ、作り方がわかっていても作れない。くぎを打つのにトンカチを知らなければ、くぎが打てない。
俺は 【魔道具屋】があったら、聞いてみようと思った。
「次の宿屋って、町の中にある?」
レミさんに聞いてみた。歩きながらレミさんは振り返って俺に教えてくれた。後ろで束ねたレミさんの髪の毛がサラリと揺れた。
「次の宿屋は、町の中にあります」
ニコッと微笑んで、俺の肩にとまっているルビーの頭を撫でた。
『ピ……』
そろそろ眠くなる時間かな? 鳥だし……。
「ルビー。俺のポケットに入って寝て。落ちたら大変だし」
『ピッ!』
ポケットを大きく広げてやると、ルビーはその中へ入っていった。
「おやすみ。着いたらまたベッドの上へ寝かせるよ」
『ピィ……』
ポケットがルビーの体温であたたかい……。俺とレミさんは、次の目的地へ進んだ。




