28 アイテムボックスを見つけた
三人で次の塔へ向かっている途中、森の中を歩いていた。
「あれ? 薬草がたくさんある。補充したいからちょっと採っていいかな?」
俺はレミさんとルビーに声をかけた。二人は立ち止まってうなずいた。
「どうぞ! あっ、この木の実を食べていいかな!」
ルビーが木になっている木の実を採って食べようとした。
「それはダメだよ。毒がある」
植物図鑑を読んで覚えていたので、ルビーが採る前に毒のある実とわかった。
「毒? 食べられない?」
首をかしげたルビーはよほど食べたかったのか、目の前にある木の実をジッと見ていた。俺は周辺を探して、違う食べられる木の実を見つけた。
「ルビー。こっちの実なら、食べられるよ」
何個か見つけた赤い木の実を採って、ルビーの近くへ行って木の実を割って渡した。
「ありがとう!」
すぐにルビーは、ぱくぱくと赤い木の実を食べた。転移前の世界でザクロに似た実、だった。
「酸っぱいですけど、レミさんもどうぞ」
「ありがとう御座います」
「ルビー。皮は食べちゃだめだよ。皮には毒があるから」
「は――い」
中の粒を口に入れてみる。酸っぱいけれど栄養がある……と植物図鑑に書いてあった。この世界は自然が豊かで私有地以外、よほど乱獲しなければ自由に採ってもいいとアッシュに教えてもらった。
「酸っぱいけれど、疲れた体にはいい」
「本当ですね」
レミさんも気に入ったようだ。ルビーは小さい指で実を摘まんで、一生懸命に食していた。
食べ終わるころにルビーの指が、木の実の果汁で真っ赤になっていた。
「手を洗いに行こうか」
「そうですね……」
川の流れる音がしていたから近くに流れているだろう。三人で川の流れる音がする方へ進んだ。
人が整備したらしい道を進んで行くと、川が見えてきた。ゆるやかに流れる川はきれいな水が流れていた。時々、ゲームの世界というのを忘れてしまうくらい豊かな自然のある世界だ。
「ルビー様、手を洗いましょう」
レミさんがルビーを川べりに連れていって、手を一緒に洗っていた。
「ん? あれ?」
視界の端に青い色のものが見えた。何だろうと振り向くと、大きな岩の上に何かがあった。気になって近寄って見ると青い箱。
これは!? まさか宝物が入っているアイテムボックスではないか!? それにしても、こんな森の中の場所に……。
俺は青い箱を開けてみることにした。
カラの箱ならまだいいけど、トラップだったり魔物が飛び出したりしないだろうな……? 俺はおそるおそる青い箱を開けた!
「ええっ!?」
カギはかかってなくて、トラップもなし。魔物も飛び出してこなかった。
中には一冊の、青い本が入っていた。
「本……? 何の本だろう……?」
何か良い武器防具やGでも良かったな――、と考えた。
箱から出して手に取って見ると、青色の表紙に金彩が美しい装丁の本だった。
「きれいな表紙の本だな。タイトルは……」
こちらの文字は知らないはずだけど、自然にわかる。
「ええっと、魔道具の……書!? 【魔道具の書・基本編】だって!?」
これは……貴重な本を手に入れてしまったかも! ……誰かの落し物や、置いていたものじゃないよね?
『レンは、【魔道具の書・基本編】を手に入れた――!』
テンプレセリフを言ったと思ったら、変な音楽が聞こえた。これはマジで手に入れたようだ。
そういえば【魔道具屋】というのがあるのだから、【魔道具】というのもあるのだろうな……。
え? もしかして【魔道具】を作れるの? 俺は青い本をめくってみた。
「難しいのかな……。俺にも作れるのか?」
パラパラとページが勝手にめくられていく。えっ!? するすると頭に魔道具の作り方が記憶されていった。
「おお! すごい……!」
全ページがめくり終わったときに【魔道具の書・基本編】は、スウ……と消えていった……。
「消えた……?」
このアイテムは読み終えると消えてしまうのか。
「レン様――! どうされました――?」
向こうでレミさんとルビーが俺に手を振っていた。俺は二人に駆け寄って「アイテムボックスを見つけたけど、消えちゃった」と知らせた。
「……」
二人は顔を見合わせてから俺を見た。
「 「それって、レアアイテムじゃない!?」」
二人の声が被っていた。
俺はどういうものだったか二人に話して見ると、それはSSS級のレアアイテムだったらしい。
この世界中で数冊しかないという、超レアSSS級の本は自動的に見つけた者の記憶に刻まれて、そして跡形もなく消えるらしい。
「【魔道具士】というレア職業がありまして、これも……限られた者しかなれません」
レミさんが珍しいものを見るように、話をしてくれた。
「レンさんはこの地域、いえ。この世界でも稀な【薬草 配合師《やくそう はいごうし》】と【魔道具士】二つのレア職の持ち主となりました……! どういうことです――!?」
驚いてレミさんは叫んだ。
「俺に言われても……」
真っ先に思ったのが、これで仕事をして生活できるか? だった。
『レンは、面白いやつだピ!』
ルビーは俺を、面白いおもちゃを見つけたようないたずらっ子の目を向けていた。おもちゃにしないで欲しい。
「【魔道具士】は【薬草 配合師《やくそう はいごうし》】のような試験はあるの?」
俺は【薬草 配合師《やくそう はいごうし》】の試験を思い出した。【魔道具士】もあるのか、気になった。
「いえ、ありません。【道具屋】のように、道具に詳しい者・道具を作れる者・道具を鑑定できる者等がなります。【魔道具屋】も同じですが、詳しく・作れ・鑑定できるものは見たことも効いたことがないですが、レン様はどうでしょうね……」
俺をジッと見る二人の視線をなんとなく、そらした。




