26 女の子が!?
「ん……? 朝か」
窓の外から鳥の鳴き声が聞こえる。ちゅん、ちゅん! と鳴く、すずめの鳴き声ではなかったけれど。
まだ眠くてすぐに起きず、ゴロンと寝返りをうった。
トン……。手に何かが当たった感触がした。
「え?」
まぶたを開けて見ると、寝ている自分の横に誰かが横たわっていた。
「わあ!」
慌てて起き上がってよく見ると、横たわっているのは女の子だった。白い袖なしのワンピースを着ている。
「だ、……誰?」
レミさんではない。いやレミさんでも驚くけれど、いったい誰だろう? 部屋の扉の鍵は閉めていたし、どうやって部屋へ入ってきたのか……。
ガタッ! ガタガタ! と隣の部屋から物音がして、俺の部屋へは知ってくる物音がした。
トントントントン!
「レン様! どうしました!?」
レミさんだ。俺の驚いた声が聞こえて、こちらへ来てくれたのだろう。
「あ! 今、扉を開けます!」
ベッドから降りて、扉の鍵を開けてレミさんを部屋へ入ってもらった。
まだ朝が早いので他の宿泊客に迷惑がかからないように「静かに」と言った。
「どうぞ」
目が覚めたばかりなので少し髪の毛がぼさぼさだと思う。レミさんは起きたばかりだと思うけど、変わらず綺麗だった。
「どうしまし……、えっ!? 女の子!?」
「あっ!? 誤解しないでください! 朝起きたら、隣に寝ていたんです!」
ベッドに見知らぬ女の子が寝ていたので、レミさんは驚いていた。俺も驚いている。俺達は小声で話し合っている。
レミさんは剣を持って俺の所へ来てくれた。二人で女の子をベッドのそばに立って見下ろしていた。
「ん……? うるさいデス……」
俺達の声に気が付いたのか、むくりと、起き上がってまぶたをこすった。すぐそばに俺達が立って見ているのに気が付いたようだ。
「なに? もう朝なの?」
ぱっちりと開いた大きな瞳は赤色。色が白くて、髪の毛は背中まであって赤色。可愛い子だった。
「あの……部屋を間違えていませんか?」
「……間違えてないけど?」
ちょっと口をとがらせて、不満そうに俺に言った。
「私ヨ、わたし」
そう言って女の子は、腕を伸ばしてあくびをした。ベッドの端に座ったかと思ったら、姿が変化した。
「えっ!? あっ!」
赤の塔の精霊 ルビーの姿だった。元の白い小鳥になった。
「まあ! ルビー様だったのですね!」
俺とレミさんはルビーの意外な姿に驚いた。まさか女の子になるなんて。
「まあ、これは……。女の子の姿は、時々しかならないケドネ!」
独特な女の子の言葉使いは、確かにルビーだった。焦った――。
「あ! レミさん、早く部屋へ戻ったほうがいい! 来てくれてありがとう!」
俺はパジャマ姿のレミさんから目を逸らした。胸の辺りのボタンが外れていた。
「は、はい。失礼しますね!」
起きてすぐに、乱れたパジャマを直さずに来てくれたのだろう。来てくれたのはありがたいけれど、そろそろ他のお客さんも起きだす頃。
レミさんは自分の部屋へ戻っていった。
「ルビー。寝るときは、女の子の姿にならないでくれ」
俺は小鳥の姿のルビーに話しかけた。するとルビーは首をかしげた。
「なんでじゃ? わりと女の子の姿はラクなのだ」
「眠るときは小鳥の姿でお願いします」
俺は深々と頭を下げた。勘弁してほしい。目が覚めてみたら美少女が隣なんて、心臓が持たない。
「そうか。仕方がないのう」
お? わかってくれたかな。
「あ、そうだ。前に森で採った、木の実を食べますか?」
俺は小鳥が好んで食べる木の実を、マジックバッグから取り出した。テーブルの上に小皿を置いてその中へ木の実を入れた。
「おお! 美味しそうだな!」
「好きなだけ、どうぞ!」
ルビーは喜んでテーブルの上に飛び乗って、小皿の中にある木の実を食べた。木の実を、ついばむ姿は可愛い。
「美味しいかい?」
俺はニコニコしながら、小鳥のルビーが美味しそうに木の実をついばむ姿を見ていた。
「ええ! とっても!」
可愛いなあ……。小さい頃、インコを飼っていたのを思い出した。
ほぼ食べ終わると、ルビーは飛んできて俺の肩へとまった。頭を俺の頬に、スリスリと擦り付けていた。人差し指でルビーの頭を撫でた。
「ピ! ピピ!」
「ああ。支度をしないと」
ルビーをテーブルへ下ろして自分の着替えをした。
コンコン! とレミさんの部屋の扉を叩いた。もう支度は終わっただろうか?
「レミさん、俺です。下へ行けますか?」
「はい。今、行きますね――」
足音が聞こえてきて扉が開いた。
「改めて。お早う御座います。お待たせしました」
さっきは髪の毛を束ねてなかったので、きれいなお姉さんという感じだった。今はキリリ! と凛々しい。
「お早う御座います! 待っていませんよ。行きましょう」
夕食を食べた、食堂へ向かった。
「そういえば、あの子は……どうしました?」
こそっとレミさんは、ルビーのことを聞いてきた。そうだよね、気になるはずだ。
「えっと、小鳥……に」
レミさんはそうですかと言って椅子に座りなおした。ホッとしたようだ。
朝ご飯はトーストの、ワンプレートだった。選べるようになっていて俺はフレンチトーストの他にサラダ、カリカリ焼いた厚切りベーコンと目玉焼きにした。レミさんはチーズサンドにサラダ、ポタージュスープとスクランブルエッグにしたようだ。
ホテルの朝ご飯みたいで自分で選べて楽しかった。
やけに昨日よりも静かだなと思ったら、昨日騒いでいたパーティーはもう宿屋から出発したと聞いた。
そういえば、勇者みたいな活躍をしたくてこの辺に来たと言っていたな。あのリーダーの男性。
フラグじゃないといいけれど……。




