23 再び。あれ? お前は森でケガをしていた……
『ワタシの背へ乗ってください』
「え? 君は……」
小さかった小鳥は、人が二人くらい乗れる大きさになった。何が何だかわからなくなった。
『申し遅れました! ワタシはこの塔を守っていた精霊デス! 「ルビー」と呼んでください!』
鳥なのに羽を広げてお辞儀をした。 「ルビー」は宝石の名前だ。この塔の魔物を倒すとルビーが拾えた。
『ルビーっていう名前なんだ! よろしく!』
また勝手にテンプレセリフが……。ルビーの羽に俺は触れて、握手した。
『レン様は、ルビーの宝石の精霊と契約できましたね! おめでとうございます!』
レミさんは、パチパチパチパチ! と拍手をした。
「精霊と契約!?」
なんでモブの俺が、精霊と契約するの!? おかしいだろう!?
「普通、勇者と精霊が契約するんじゃないの!?」
俺は、レミさんと精霊のルビーに聞いた。勇者アッシュが宝剣を受け取って、精霊と契約……という流れじゃないのか? 俺はだんだん心配になってきた。
レミさんと精霊ルビーはお互い顔を見合わせて、首をかしげた。
「ワタシは勇者に、宝剣を渡す役目でしたので大丈夫デス、たぶん」
最後に、たぶんって言った。本当に大丈夫かな?
『さあ! 早く、ワタシの背に乗ってください!』
「う、うん」
乗ってどうするのだろう? とにかく急かされたからレミさんとアイコンタクトをして鳥の背に乗った。
「うわ……。ふわふわだ――!」
ルビーの背は手触りが良く、ふわふわだった。羽毛――! 俺は羽毛を、スリスリと触った。
『紐がありますので、持ってくださいね』
ルビーの首に、ぐるりと巻いてある紐があったので何も考えず、両手で掴んだ。
『行きますよ、レン様』
「え」
精霊ルビーは鳥の姿で、俺達を乗せてフロアをトッ、トッ、トッ! と中央へ歩いた。振動は多少あるが激しい揺れではなかったので安心した。
どこかの抜け道でもあって、このまま背に乗って歩いて行くのかなと思った。
『しっかりと、お掴まりください』
止まったかと思ったら、急にルビーは走り出した。
タタタタタタタタ……!
「えっ? えっ?」
「これは!?」
ルビーはフロアの窓をめがけて、走っていることに気が付いた。
「まさかっ!?」
全速力で走って勢いをつけて、窓の枠へ向かっている!
「レミさん、俺に掴まって!」
「はいっ……!」
バッ……!!!! ルビーは窓枠を踏み台にして塔の外へ飛び出した!
「きゃ、ああああ――!」
「うわっ!」
レミさんが落ちないように、俺の胴に腕をまわして力を込めた! 紐を握りしめて俺は、塔の高さに恐怖を感じて目をつむった。
飛び出してから、体が斜めになってそれから羽ばたきの振動が体に伝わってきた。そっとまぶたを開けると、この世界の緑の地形が眼下に見えた。体を起こして、景色を眺めてみた。
「わあ……!」
キラキラと光っているのは、湖だろうか? 緑が多くて、遠くに町が見えた。
「風が、気持ちいい――――!」
塔での緊張感が抜けて、開放感を楽しんだ。レミさんがまだ俺の胴体にしがみついているので、後ろを向いて話しかけてみた。
「レミさん、レミさん。もう大丈夫ですよ」
レミさんは、がっちりと俺にしがみついていた。見ていたら、そっと顔を上げた。
「もう、平気ですか……?」
おそるおそる俺に話しかけた。プルプルと震えていた。
「もう大丈夫みたいです」
多少揺れるけど、安定しているし、規則正しくバサ……ッ、バサ……ッ、と羽を動かしているから大丈夫だろう。
「良かった……。でもかなりの高さね……」
レミさんは、そっと下を見て泣きそうな顔で言った。高い所が苦手じゃなくても怖いだろう。レミさんは俺の背中にまだ、しがみついていた。
しばらく 精霊ルビーは羽ばたいて移動をしていた。俺は、空と地上の景色を楽しんでいた。
「あれ? どこに行くのだろう?」
だいぶ赤の塔から離れたけれど、目的地はどこだろう。え、目的地を言わないと止まらないタクシー的なものじゃないよね?
もそり……と、レミさんが動いて話しかけてきた。まだ怖いらしい。
「たぶん……次の塔へ、向かっていると思います……」
元気がない。降りたら休んでもらおう。
「その前に、どこかの宿屋へ向かうはず……」
レミさんは俺に伝えると、また顔を俺の背中へ伏せた。
そろそろ日が暮れるはず。今日は赤の塔をアッシュが攻略したし、宿屋で休みたい。
「ねえ、ル『そろそろ地上へ降ります。掴まってくだサイ!』」
ルビーへ話しかけようとしたら、さえぎられた。……地上へ降ります?
「は……?」
ガクン! と下へ落ちる感覚がして地上へ急降下した。
垂直まではいかないけれど、ルビーは羽を広げて急降下をしている。背に乗っている俺は紐しか掴まる所がないし、レミさんは俺にしがみつくしかなかった。
「いやああああ――っ!」
「わああああ――!」
絶叫マシンより超絶、恐怖だった。
「や、やっと降りられた……」
俺が先に降りてレミさんを下ろしてあげた。見ると涙目だった。そのあと地面に両手と膝をついてプルプルしている。
ルビーの着地は、なめらかで衝撃がなかったのには驚いた。
「やっと宿屋に着いた」
ルビーは姿を変えて小鳥になった。
『動物は宿屋に泊まれないので、ポケットに隠れています! 潰さないでくださいね……』
そう言って俺のポケットへ隠れた。
レミさんの手を取って起こしてあげて、宿屋へ入った。




