21 一の塔 三階
薬草茶を飲んで、俺とレミさんは元気を取り戻した。
「ん~! 元気が出ましたわ!」
「良かったです」
レミさんは伸びをした。薬草茶の効果があってよかった。
「レン様は、薬草に詳しいのですね」
片付けをしているとレミさんが話しかけてきた。
「……前から草花やハーブなど好きだったので、自然と覚えました」
記憶が曖昧なのだけど、草花は好きだったしキャンプも好きだったみたいだ。
そうなのですね! とレミさんは返事をして、きれいにしたカップを返してきた。
「ごちそう様でした。こんなおいしい薬草茶は、初めてですわ!」
レミさんの様子から、よっぽどこの世界の薬や薬草茶など苦いのかと思った。
二人とも元気になったので、三階の階段を登ることにした。
「最近の理想の男性のタイプとして、魔物を倒せる・女性に優しい・すぐに火を起こせる……となっています」
俺の後ろから階段を登ってくるレミさんが、話しかけてきた。
「そうなんですか?」
何だか具体的というか……。
「勇者 アッシュ様の影響と思います」
「えっ?」
勇者 アッシュ様って、あの勇者だよな?
「最近、評判なのですよ! あちこちの村や町を、魔物から救ってくれたと聞きました」
レミさんはちょっと頬を染めていた。
「アッシュがそのまま、理想の男性のタイプってことか」
なるほど。納得だ。
「レン様も『当てはまる』と思います!」
にっこりとレミさんは微笑んだ。え、俺も? あ――! 子供の姿じゃなきゃ、モテたのかな!?
「お顔も整っていますし、黒髪黒目が神秘的だと関係者から……あっ! いえ、聞かなかったことにしてくださいね!」
レミさんはしまった! と慌てて口を閉じた。関係者……ってどこの関係者だろう? 気になる……。
でも褒められた? なら、悪い気はしないな。子供相手だからレミさんは、言えるのだろうなと思った。
「よくわからないけど……、ありがとう!」
後ろを振り返ってレミさんにお礼を言った。褒められて嬉しいし。
「んんっ! 真っ直ぐな曇り無き笑顔で……! まぶしい……!」
後ろでレミさんが変なポーズをしていた。
三階へ続く階段は、二階まで登った階段より長く続いていた。だけど魔物は出てこなかったので早く先に進めた。
「ずいぶん上まで登ったけれど、もうすぐかしら?」
レミさんが階段の壁側にぽっかりと開いている、顔が入るくらいの大きさの四角状の窓を見て言った。外をそこから見ると、かなり高いところまで登ったようだ。グルグルと階段を登っていると目がまわりそうだった。疲れてくると、壁や足元の階段に手をついて登っていった。
「あれ――? ここが三階!?」
また階段を登り切って、踊り場で立ち止まった。アーチ状の扉のない入り口があったけれど、今度は一階のような広場だった。
「階段と二階には魔物がいたのに、おかしいですね」
レミさんはキョロキョロと辺りを警戒した。……確かに違和感がある。
ゲームだと、この辺でボスが出るところ……。とか考えていた。たっ、たっ、たっ、たっ! と三階の丸い大きな部屋を走って入っていった。レミさんも警戒しながら中へ入ってきた。
「……、……!」
ん? 何か聞こえた?
「……! ……!」
「……何か、聞こえていませんか?」
レミさんは耳をすませて俺に話しかけてきた。
「聞こえる。どこからだろう?」
歩きながら、その聞こえてくる音を探した。
「どこからでしょう?」
レミさんにも聞こえているので、聞き違いではないだろう。俺は入り口から真っ直ぐにある窓へ向かった。
「ずいぶん大きな窓だな」
フロアを歩いて近づくと、外の風が頬を撫でた。空気が新鮮で、気持ちがよかった。
窓と言ってもガラス窓ではなく、ぽっかりと大きく壁を四角にくりぬいたものだった。左右に木の扉がついているから、窓を閉められるようだ。
『助けてくれ……』
「へっ!?」
聞こえたのは人の声! どこから聞こえた!? 俺は声の主を探した。
『窓の外にいる……』
窓の外?? 俺は窓から顔を出して外を見た。
『レンか……! 悪いけど、助けてくれ……』
「アッシュ――――!?」
窓のふちに指で掴まってぶら下がり、助けを呼んでいたのは勇者だった!
「わああああああ――! レミさん来て――!」
俺はレミさんを大声で呼んだ!
「どうしました!?」
走ってレミさんは俺の側まで来てくれた。そして窓のふちに人の手があるのを見つけて、きゃ――っ! と悲鳴をあげた。
「は、は、早く助けましょう!」
「うん!」
俺はレミさんに、アッシュの片手を持つように言った。
「アッシュ! 今、助けるからね!」
『たのみます……』
アッシュの腕を窓から身を乗り出して掴んだ。地上からかなり高さがあったので怖かったけれど、この高さから落ちたら無事では済まない。俺達は慎重に、アッシュの腕を引っ張った!
「くっ……!」
掴んだ手は絶対に離せない! 不安定な体制。気をつけないと、俺達三人とも地面へ真っ逆さまだ。
ドサリ!
アッシュをフロアの床へ引き上げた! 俺とレミさんも床へ転がった。俺達は、ハーッ! ハーッ! と荒い息をして、地面に落ちていたかもしれないという恐怖に震えた。
「アッシュ、大丈夫!?」
ぐったりとしたアッシュを揺すって声をかけた。
「ありがとう……。助かった」
アッシュは、カクンと床に額をつけた。
「わああ! ポーションを飲んで――!」




