19 一の塔 一階(広場)☆レミさんから使命を知る
「あの……。ここで何をするのですか?」
「え……」
二人はお互いに顔を見た。
「……聞いていないのですか?」
レミさんは怪訝そうな顔をして俺に聞いてきた。
「『行けばわかる』と、ギルマスに言われて……」
聞こうとしたけどそう言われた。
「ギルマスさんってば……」
レミさんは頭を抱えていた。あ――。皆、苦労しているんだな。
「とにかく、中へ入ってみよう」
中に入ればわかると言われたし、入ってみようとした。塔を目の前にしてあることに気が付いた。
「扉がない!?」
反対側に扉があるのかと思って、俺は塔の壁伝いに走った。ぐるりと塔を一周すると何もなかった。
え? どうやって、入るの?
「扉がないのだけど!」
白い壁をポン、ポン! と叩いた。ポン! と叩いたとき、手がするりと壁に中へ入った。
「へ?」
「レン様!」
レミさんが俺の手首を掴んだ。そのまま俺とレミさんは、壁の中へ勢いよくすり抜けて入ってしまった。
ドサッ! バサッ!
受け身をとれないまま、地面に倒れてしまった。……いや、地面じゃない。石が敷き詰めている平らな床だった。
「いたた……。塔の中へ、入ったみたいだな。レミさん、大丈夫?」
「はい」
二人ともケガはないようだ。起き上がってみると、ここは何もない広場のようで壁に沿って階段があった。外から見てもかなり高い塔だったので、登っていくのが大変そうだ。
「レン様」
「ん?」
レミさんは踵をピシッとつけて左腕を後ろにして、右手を胸の前に持ってきてお辞儀をした。
これって、騎士の礼なのじゃ、ないか? どこかで見た。
「改めて、ご挨拶致します。私は王命を受けて、レン様の案内&護衛をするために参りました」
背筋を伸ばして俺に話してくれた。……ん? 王命?
「王命って、王様の命令……だよね?」
なんで!? 王様が俺に案内&護衛をつけるの!? てか、王様ってどこにいるの!? 会ったことないし!
俺は混乱した。
『そうです。レン様は【勇者様】の影ながら応援をする役割を果たして欲しいのです!』
レミさんはビシッとセリフを言い、背筋をさらに伸ばした。――俺の知っているゲームに、そんなキャラがいたかな?
「ん、まあ。なんとなく、わかった」
アッシュが勇者とわかったときに、なにか関係があると思った。それに……。
「勇者のサポートができるなんて嬉しい」
俺はそう言って、ズボンの汚れを手で払った。
「ありがとうございます!」
「とりあえず、上へ行けばいいの?」
一階は何もない広場なので、上へ行く階段しかなかった。
「はい! 階段辺りから魔物が出ますけど!」
レミさんはなぜか、上機嫌で言った。……魔物が出るのに、なんでそんなに楽しそうなのだろう?
「あ! レン様。弓での攻撃は不利になりますので、剣か短剣で身を守ってください! 敵は私が倒しますからご安心ください」
「……ワカリマシタ」
狭い階段を登っていかなければならないので、弓矢で攻撃は無理だ。念のため短剣を武器屋で買っていてよかった。
「レミさん。もし俺がケガをしたりやられたりしたら、このポーションを飲ませて欲しい。持っていて」
俺は塔の前の森で作ったポーションを、レミさんへ渡した。もしも俺がやられた場合、ポーションを取り出せなかったら困るので渡しておいた方がいいだろう。
「わかりました」
石でできた階段を登っていく。コツコツと足音がするので、こちらのいる場所がわかってしまう。たぶん後ろからは魔物はやって来ないからいいけど、上から飛びかかってこられたら戦いにくいから厄介だ。
「レン様! 大ネズミの魔物が襲ってきます!」
キキッ! ズサッ!
「!」
レミさんは素早く剣を抜いて、大ネズミを倒した。俺は遅れて持っていた短剣を鞘から抜いた。
「前から二匹、来ます!」
キーッ!
「うわっ!」
一匹はレミさんが仕留めて、もう一匹は俺に向かってジャンプしてきた。短剣を持って前に向けたら、偶然当たって大ネズミを倒せた。大ネズミは石の階段へ転げ落ちていった。
わぁ……。危なかった。もっと冷静に攻撃しないと、こっちがやられる。
大ネズミが消えて、コロン、コロン……と石が残った。
「あれ?」
いつもの赤黒い石ではなくて、真っ赤な光る石だった。輝き方が違う。これって、宝石? 落ちている石をレミさんがおもむろにしゃがんで拾った。
「ここ一の塔は、ルビーの宝石が落ちます。姫様のお病気のお薬になるのですよ」
えっ? 姫様? レミさんは続けて話しをした。
『ここ数年。魔の瘴気が強くなって魔物が増えてきたのですが、この国の姫様が【呪い】を受けてしまって。薬になるのが、この塔に住む魔物が落とす宝石なのです。レン様の手助けと姫様のお薬を手に入れられると聞き、志願しました』
テンプレセリフだ。俺は話の腰を折らないように聞いた。
『もちろん、この国の平和は大事です。姫様のお体も大事なのです。わかっていただけます?』
『は、はい』
これはクエストなのだと、今頃知った。
『良かったですわ! もちろん、レン様の案内役兼護衛もキチンといたします!』
にっこりと俺に笑いかけた。……レミさんは、こんなキャラだったかな? ゲームの強制力なのか。
でもレミさんは、お姫様のことを大事に思っていることはわかった。呪われてしまっていることも知った。
俺たちは再び、警戒しながら二階への階段を登っていった。




