17 アッシュと再会する
アッシュが横たわっている隣へ膝をついて様子を見ると、ステータス画面が見えた。
「え」
今までアッシュの、ステータスなんて見えなかったのに。ステータス画面を見ると、アッシュの右腕の部分が赤く縁取られていた。さらに大きな紫色の文字で『毒』と書かれていた!
ステータス画面を見てわかった。大ハチに刺されたようだ。どんどん顔色が悪くなっていく。
「大ハチの毒……! 『すぐに毒消しを飲まないと死に至る』……?」
うわ――っ! 俺はカバンからツボと薬草その他を取り出した。
「急いで毒消しを作らないとヤバい!」
「大ハチの毒……!? 聞いたことあります! 医師を呼んでいては、間に合わないですわ!」
レミさんが焦っているのが見えた。俺は焦る気持ちを抑えて冷静に毒消しを作るようにした。ここで間違ったら一生、後悔する。
「これとあれで……。ツボへ入れて、念じる!」
ツボの中へ薬草とその他の材料を入れて、フタをして強く念じた! ツボがカタカタと鳴って、ポンっ! とフタが開いた!
「出来た! 早くアッシュに飲ませないと!」
ツボの中から小瓶に入った液体の物が出てきた。俺はアッシュの首のうしろ辺りに腕をまわし、頭を起こしてポーションの小瓶のふちを口に近づけた。
「アッシュ、毒消しを飲んで!」
「……っ」
アッシュは意識が朦朧としていて、口を開けてくれない。
「無理やり飲ませるよ、ごめん!」
腕を外して後頭部を脚へ乗せた。頬を両側から親指と指二本で押して口を開けて、ポーションを少量ずつ流し入れた。
「ん!?」
ゴクン! コク、コク……と、喉が動いているのが見えた。アッシュは毒消しを飲んだようだ。
「アッシュ……」
別れてからここで会えたのに、大ハチの毒にやられたなんて! 毒消しのポーションを作って飲ませたけれど……。小瓶の中のポーションがなくなった。全部飲んでくれた。
「う……」
苦しそうな声が聞こえてアッシュは身動きをした。
「アッシュ! 気が付いた? 大丈夫!?」
俺はまぶたを開けたアッシュに、大声で呼びかけた。顔色はさっきより良くなったみたいだ。ステータス画面を見ると、紫の毒の文字は消えていた。体全体を見てみると、刺された腕の辺りが薄いピンク色で縁取られていた。
俺の見えているステータス画面は、異常な部分とか見えるのか?
「あれ? レン、ぼくは……」
アッシュは、すぐ近くへいる俺に気が付いた。腕をあげて俺に触れようとした。
「痛っ!」
刺された腕が痛いみたいで、アッシュは反対側の手で押さえた。
「レン様、この方は腕を刺されています。医師の治療が必要です」
俺は頷いた。
「この冒険者の方とお知り合いでしょうか?」
「うん。とてもお世話になった人なんだ」
アッシュは色々俺に教えてくれた人だ。それなのに大ハチに刺されて腕を負傷してしまった。
「そうですか、レンさんがお世話に……」
レミさんは、パチン! と指を鳴らすと、顔を上げて空中を見た。
『お呼びですか、レミ様』
バサバサ! と羽ばたいてやってきたのは巨大なフクロウ。熊よりも大きい。
「医師の元へ運んでくれる? 大ハチに刺されて腕を負傷しているわ。毒消しは飲んだ」
レミさんが説明すると、大きなフクロウは後ろを向いて人が乗りやすいように背を低くした。
『わかりました』
このフクロウ、人間の言葉を理解して話せるんだ! すごい。
レミさんはメモと筆記具をカバンから取り出して、何かを書いていた。それをフクロウの首輪にぶら下がっている小さなカバンに入れた。
「レン様。私の【使い魔のフクロウ】に、この負傷した冒険者を知り合いの医師まで運んでもらいます」
「お願いします! あと一応、傷薬もフクロウに持っていってもらっていいですか?」
まだ少し毒があるのかアッシュは、起き上がる元気はないようだ。
「わかりました。その旨もメモに書いておきますね」
俺が横たわっているアッシュを背負い、移動してフクロウの背中へ乗せた。レミさんも手伝ってくれて、アッシュをフクロウから落ちないように特殊なベルトで固定した。
「じゃあ、お願いするわ。くれぐれも落とさないように」
『かしこまりました』
バサバサッと羽を広げてフクロウは、アッシュを背に乗せて飛び立っていった。
「アッシュ、大丈夫かな……」
薬草 配合師になって、俺が作ったポーションを初めて飲んだのが、アッシュだなんて……。
「知り合いの医師はベテランの医師です。レン様の毒消しが効いていたみたいですから、大丈夫だと思います」
レミさんに大丈夫と言ってもらったので、少し安心した。
「治療してもらった後に、私に連絡してもらうようにもしました」
「ありがとう」
ホッとして視線を下へ向けた。
地面を見ると赤黒い石がゴロゴロ落ちていた。全部で五つ。俺は赤黒い石を拾った。
「はい、どうぞ。レミさん」
レミさんへ二つ。アッシュに二つ。俺は一つ。
「私はGをいただいているので、私の分は要りません。レン様が受け取ってください」
赤黒い石を受け取らず、俺に渡してきた。レミさんは、ニコッと笑った。
「え、いいの?」
俺は三つの赤黒い石を両手で受け取った。ハジメノ町で敵を倒して受け取ったのは小石ぐらいだったのに、これは握りこぶしくらいの大きさだ。
「はい。受け取ってください」
「ありがとう!」
俺は遠慮せずに赤黒い石をカバンに入れた。
「じゃ、行こうか」
「はい」
アッシュの様子は気になるけれど、俺達は先へ進んだ。




