寝言を食べる抱き枕
なろうラジオ大賞6の参加作品です。
我が家には黒柴の抱き枕がある。
私が買ったものだが、今は旦那が愛用している。
買った当初は私専用の抱き枕だった。
新婚時代、私は週5の8時間勤務、旦那は常に残業三昧な生活だった。
お互い早番と遅番があり、同じ家に住んでいるのに会話しないすれ違い生活を送っていた。
寝室は旦那も私も同じ。
寝る時間はシフトでお互いバラバラ。
旦那は1度寝ると起きない。
そして、寝言が多かった。何を言ってるかわからないが、仕事関係のことだろうか。
寒い夜に私1人。
旦那の代わりに抱く抱き枕。
夏が来て、暑苦しくて抱き枕を抱けなくなった。
寒い冬は1人は寂しいと思うことがあるのに、暑い夏はそう思わないのは私だけだろうか?
夏、抱き枕はベッドから落ちたり、寝てる時に私の下敷きになったりした。
それを見ていた旦那が今日から一緒に寝ましょうねと私のベッドから優しく抱き枕を回収していった。
旦那は抱き枕を抱かず、隣に置いた。
旦那は寝返りをしない。
仰向けで寝て、仰向けで起きる。
ベッドから落ちることなく、寝ている時に下敷きにされることもなくなった抱き枕。
その後、季節は変わり、肌寒くなった。
旦那は抱き枕をたまに抱いて寝る。
そして、多かった旦那の寝言がいつの間にかなくなった。
私が気がつかないだけなのだろうか。
抱き枕が寝言を食べているようにも思う。
抱き枕と寝る旦那は幸せそうだ。
旦那は抱き枕と夢を見ているのだろうか。