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メイド・ルーシェの新帝国勃興記 ~Neu Reich erheben aufzeichnen~  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第三章:「課題山積」

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・3-25 第44話:「外交政策:3」

・3-25 第44話:「外交政策:3」


 バ・メール王国の復興を目指す亡命政権を成立させ、共和国による支配を揺るがすべく圧力をかけていく。

 亡命貴族のひとり、サイモン・バルドゥ伯爵を中心としてその構想を進めつつ、エドゥアルドはフルゴル王国への対処を進めるために同国のアルベルト・ヒラソル王子と会見した。

 アルベルトは二十九歳。

 現在、アルエット共和国の傀儡かいらいとなっているフルゴル王国の国王、リカルド四世とは同じ年の、異母兄弟であった。

 同国が共和国に掌握されてしまったのは、この、同年齢の異母兄弟が王位継承をめぐって激しく対立し、内紛状態に陥っていたからだ。

 二人の正確な生年月日は分かっていない。というのは、嫡子継承が優先されるという王位継承法が定められていたため、どちらが嫡子となるのかを巡り、互いの生年月日がどんどん改竄かいざんされ、早くなっていった、という経緯を持っているからだ。

 どちらもタウゼント帝国の建国歴千百六年の一月一日に生まれたと主張しているが、その実態はもはや誰にも分からない。

 余計な詮索せんさくをすると身の危険を生じさせる類の話題だった。

 異母兄弟のリカルドとアルベルトの争いは一進一退の状態だったが、その隙を突き、ムナール将軍が侵攻して来た。

 これは勝利を確実なものとするためにリカルドが介入を要請したことがきっかけであり、拮抗していたパワーバランスは一気に崩壊し、内乱はリカルド王子が勝利しリカルド四世として即位して、アルベルト王子は母親がズィンゲンガルテン公爵家出身だという血縁を頼って帝国に亡命してきた、という経緯を持つ。

 ただ、フルゴル王国は完全に共和国の支配下に置かれ、傀儡かいらい国家となり果てていた。

 今も共和国軍の一部が駐留し続けていたし、自国で保有できる軍備は制限されている、というよりも実質的に共和国軍に組み込まれており、五十万という大兵力の一翼を担わされている。

 国政も、リカルド四世が行えるのは書類へのサインを強制されることだけであり、具体的なことはすべて共和国から派遣されて来た官僚たちが執り行っていた。

 意見することはできるが、ほとんど無視されるというのが現状のようだ。


「[弟]は、実に愚か者です」


 母がズィンゲンガルテン公爵家出身だという縁を頼り、同公国に亡命して以来ずっとかくまわれながら鬱屈うっくつとした日々を送って来たアルベルト王子は、彼が主張するところの[弟]であるリカルド四世の話題が出るとそう吐き捨てるように言ったものだった。


「アルベルト殿。余としては、縁戚でもある貴殿の窮状きゅうじょうを見過ごすことはできないと考えている。共和国の勢力を削ぐという目的のためにも、ぜひ、お力をお借りしたい」

「願ってもない申し出でございます、陛下」


 謁見えっけんの間という仰々しい空間ではなく、エドゥアルドが使っているツフリーデン宮殿の執務室で親しく会見した席で代皇帝がそう申し出ると、茶色の巻き毛に暗い茶の瞳を持ち、背筋の伸びた精悍せいかんな印象のアルベルト王子は我が意を得たり、といった様子で嬉しそうにうなずいてみせた。


「祖国を[弟]に追われて以来、不本意な毎日を送って参りましたが、陛下のお力をお借りできればいかようにでも、勢力を盛り返して見せましょう」

「心強いお言葉です。ところで、王子はいったいどのようなご支援をお望みでしょうか? なにか、お考えはございますか? 」

「まずは、はしたない話ではありますが金が要ります。そしてさらに、小銃を五千丁ほど、その弾薬と共にご支援いただきたい」


 王子と代皇帝、という立場ではあるものの、アルベルトは少しも物怖じした様子もなくそう要請して来た。

 彼としては自分が本当の王位継承者で国王であり、エドゥアルドとは実質的に同格である、という思いがあるのだろう。

 小癪こしゃくな、などと思ったりはしなかった。

 実際自分は若輩者であるし、このくらい気骨があった方が頼りになると、そう思ったからだ。


「必要なだけご用意いたしましょう。ですが、その用途については、できれば教えておいていただきたい。その方が家臣とも話をしやすくなります」

「もちろんお話いたします。……実は、フルゴル王国は完全に[弟]のものとなったわけではないのです。我が意のかかった者がまだ数多く残っております。また、アルエット共和国の傀儡かいらいとなり下がり、派遣されて来た役人たちに大きな顔をされていることをこころよく思っておらぬ者も増えてきている、という報告を受けております。金は、そういった者たちを味方につけるためと、軍資金として利用させていただこうと考えております。加えて、武装は我が旧臣たちに供給し、遊撃軍と成して、[弟]と共和国軍に対しゲリラ戦を仕掛けるために用います」

「ゲリラ戦? 」


 耳慣れない言葉にエドゥアルドが怪訝けげんそうな表情を見せると、アルベルト王子はニヤリと不敵に微笑んだ。


「少数部隊による不正規戦を、我が国ではそう呼ぶのです。……我々は、正面から決戦を挑もうとは考えておりません。五千丁の小銃があっても、相手が共和国の傀儡かいらいであっても、この数では勝てません。ですから、こちらは動きやすく捕捉されにくい少数部隊に分かれ、そして、敵の脆弱な部分を狙って行くのです」


 その口調は、なんだか自慢げだ。


「我々は、敵の補給線や連絡線、物資の集積所などを狙います。警備の手薄なところを見つけては攻撃を仕掛け、そして、捕捉されぬうちに引き上げる。こうしたゲリラ戦をくり返すことで、徐々に、真綿で首を絞めるように敵を苦しめ、衰弱させ、そして最後に打ち倒すのです」


(これは、なかなか厄介そうだな……)


 エドゥアルドはすでに何度か実戦経験を持っていたが、アルベルト王子の言う戦い方は初めて耳にするものだった。


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