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メイド・ルーシェの新帝国勃興記 ~Neu Reich erheben aufzeichnen~  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第二十章:「道筋」

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・20-23 第394話:「戦争を終わらせるための戦争:2」

・20-23 第394話:「戦争を終わらせるための戦争:2」


 アルエット共和国との戦争に決着をつけるために、タウゼント帝国は現状で投入できる最大限の兵力を投入する。

 その総数は、およそ三十五万名。

 皇帝直轄の帝国陸軍が十五万、ノルトハーフェン公国軍が単独で五万、その他の諸侯の軍勢が十五万。

 補給線を構成する人員や後方支援に当たる者もいるのを考慮すれば、戦争に関わることになる人員は、もっともっと、多くなるだろう。


 ただ、実際にこの三十五万、すべてが戦闘員となるわけではなかった。

 編制上、帝国軍とノルトハーフェン公国軍は、補給団列も正規兵で行うように改良が施されていたから、数の中にはこういった直接敵と交戦しない人員も含まれている。

 それでも、複数方面から共和国に侵攻するのには十分な兵力を確保できる見込みだ。


 これに、同盟国の軍隊も加わることとなっている。

 イーンスラ王国軍、フルゴル王国軍、バ・メール臨時政府の義勇軍。

 それぞれ事情があり、タウゼント帝国軍ほどの動員は不可能ではあるのだが、共和国軍に対して十分に意味のある戦力になるだろう。

 特に海軍力においては、相変わらずイーンスラ王国軍が頼みの綱だった。


 まだ交渉の途中であり、確定情報ではなかったが、帝国軍の参謀本部では。

 イーンスラ王国軍の海軍の相当数と、陸軍は十万程度の規模。

 フルゴル王国軍は、再建途上でもあり、五万程度の規模。

 バ・メール王国臨時政府からは、義勇軍の全軍である二万。

 そういった形での参戦が期待されている。


 イーンスラ王国には、強力な海軍力を持ってアルエット共和国を海上封鎖し、沿岸部を襲撃して牽制けんせいしてもらうのと同時に、有力な陸軍によって戦線のひとつを担当してもらうことになるだろう。

 フルゴル王国については、タウゼント帝国側からの兵力の増強を行い、南側から敵を圧迫してもらう。

 そしてバ・メール王国の臨時政府は、単独で戦線を形成できるだけの力はないので、帝国軍と共同してもらう。

 主に占領下にある彼らの本国を解放するために活躍してもらうことになるはずだった。


 同盟国への増強に回す分を考えると、帝国が独自に、自由に使える兵力は、おおよそ三十万といったところになるだろうか。

 すると、三方向から同時に侵攻する、という作戦が考えられる。

 アントンたち参謀本部の試算によると、現状の補給能力では、ひとつの戦線に十万程度の兵力を展開するのがやっとである、と見積もられているため、一か所にすべては集中できないためだ。


 その最初の目標は、バ・メール王国の解放。

 これは、すぐに定まった。

 臨時政府とはいえ公的に[国家]と認め、同盟を結んでいる相手から長年に渡って要請を受けていることでもあるし、軍事作戦を実施する際の大義、正当性の確保も容易であると見積もられたからだ。


 もし、国際的に不当、と見なされるような行為を行えば。

 力こそがものを言うこの時代においても、諸外国からの非難は免れ得ない。


 エドゥアルドは為政者としてこの点を気にかけていた。

 それは、単純に侵略者としての自身の名を後世に残したくないという個人的な都合もあるのだが、国家運営的な面でも懸念がある。


 タウゼント帝国は、植民地の獲得競争において大きく出遅れている。

 長年ヘルデン大陸の大国として君臨し、その地位に満足して来たこの国は、大陸外への関心に乏しく、諸外国が盛んに海洋探検を行って勢力を拡大することに無関心であった。

 だからめぼしい資源が産出する土地、発展が期待できる将来有望な場所は、あらかた他国に抑えられてしまっている。


 近年、経済封鎖を経験して痛感したことだったが、これから先の時代は、大陸内だけを見ていたのでは不足だった。

 様々な資源を交易によって入手して現在の生活がようやく成り立っている、というのが実情であり、植民地の獲得競争で出遅れている帝国としては、引き続き安定的に貿易が行える環境こそが望ましい。


 そのためには、帝国が、エドゥアルドが主体的に起こす戦争は、道理に基づいた、多くの理解を得られるものでなければならない。

 自己の都合に基づいた一方的な侵略戦争など、絶対に起こすべきではない。


 そうしなければ。

 帝国は警戒され諸外国との自由な交易を行えなくなり、国家の運営に不可欠な資源を獲得するため、大陸の外という不慣れな場所での不利な戦いを強いられることになる。

 必要な品を確保できなくなれば、打って出る以外になくなってしまうからだ。

 そしてその戦いは、産業を発展させ、資源の必要量が増え続ける限り、終わることはない。

 無間地獄、とでもいえばいいのだろうか。

 飢えた狼のように貪欲になり、武力を頼みに欲しいものを他者から奪うような外交は、敵を増やすだけだ。


 エドゥアルドとしては、そんな事態に祖国を導きたくはない。

 だからあくまで正当性のある大義をかかげて、兵を出す。


 そして。

 この解放戦争を、共和国との決着をつけるような決戦を生起させるための呼び水とする。


 こちらがバ・メール王国の解放のために軍を動員し、投入すれば、共和国は自身の勢力圏、既得権益を失わないために軍を動かして来るだろう。

 おそらくは同国が使用できる最大戦力、主力が投入されるはずだ。


 これを、迎撃する。

 それを口実としてタウゼント帝国軍の総力を動員し、一気に敵国に攻め入って、屈服させる。


 大筋としては、現状はこのような段取りを考えている。


 問題は、徴兵制度を施行し始めたのは、共和国の方が先である、という点だった。

 つまり、ひとつの主力軍を叩き潰したとしても、敵にはまだ兵力が残されている。

 戦況の推移次第では長期戦になるばかりか、決着をつけられない可能性さえあった。


 だから、この、戦争を終わらせる戦争には、迅速さが求められる。

 占領下に置いているバ・メール王国の防衛に出て来る共和国軍を素早く粉砕し、敵が予備役を動員して軍を再編する前に、その命脈を絶ち切る。


 作戦の概略は、すでにできあがってはいるものの。

 エドゥアルドもアントンも、この、いかに短期決戦に持ち込むかという点に腐心し、より成算のある策を立てるために心血を注いでいった。


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