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メイド・ルーシェの新帝国勃興記 ~Neu Reich erheben aufzeichnen~  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第三章:「課題山積」

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・3-19 第38話:「帝国軍200万:2」

・3-19 第38話:「帝国軍200万:2」


 二百万もの[国民軍]を編制するという大事業は、まずは手をつけられるところから暫定的に進めて行くことになった。

 すでに徴兵制を行っているノルトハーフェン公国と、代皇帝となったことでエドゥアルドの施政下に置かれた、帝国の直轄領。

 おおよそ、タウゼント帝国の三分の一をやや超える程度が、現状で手の届く範囲となる。

 実際の徴兵の実施は来年から行うこととされ、今年の残りの期間はそのための準備に費やすこととされた。

 それまでの間は、とりあえず当座の対応として、帝国陸軍の諸部隊の編制をノルトハーフェン公国軍のものを改良したものに改編する、という処置にとどめることとなる。

 これは、少々危険な賭けであった。

 再編制中にアルエット共和国軍が動き出したら、不完全な状態で戦わなければならなくなってしまうからだ。

 ———この点に関しては、エドゥアルドはある人物を頼ることにした。

 ノルトハーフェン公国の東の隣国を治める青年、盟友であり、義兄弟の誓いを交わしたオストヴィーゼ公爵・ユリウス。

 その父親であり、前オストヴィーゼ公爵である、クラウス・フォン・オストヴィーゼ。

 梟雄きょうゆうとして名高く、ノルトハーフェン公国だけを統治していた時代から協力関係にある老獪なご隠居に、アルエット共和国への工作を依頼したのだ。

 バ・メール王国を制圧した後、ムナール将軍が即座に帝国に侵攻して来なかったのは、そのための準備が整っていなかったというのもあったが、国家の英雄として信望を集める将軍が強力な軍事力を伴って中央政府の手が及ばない場所に向かうことを危惧する、共和国の政治家たちの思惑もあってのことだった。

 その点を、利用する。

 共和国の政治家たちの危機感を煽るような噂をクラウスに流してもらい、こちらの戦力の再編が完了するまでムナール将軍を足止めしようという作戦だ。


(後が、少しだけ怖いな……)


 クラウスは「代皇帝陛下のお頼みですからな」と二つ返事で引き受けてくれたものの、抜け目のないあのご隠居のことだ。

 お代として、なにを吹っかけられるかわかったものではない。

 しかし、仕事は確実だろう。

 彼が[梟雄]と呼ばれているのは、その頭の回転の速さ、勘の鋭さだけではなく、卓越した情報収集能力。

 彼が現役の公爵時代から築き上げてきた、諜報網のおかげだった。

 情報を収集する能力に長けているのと同時に、流言などを広めることにも便利に使うことができる。

 その力は、エドゥアルドも何度も借りさせてもらっているし、助けられてきた。

 今回もきっと、クラウスはやり遂げてくれるだろう。

 ———共和国の、ムナール将軍の行動を足止めしつつ、軍の再編制を進め、徴兵制を開始する準備も行っていく。

 それと同時に、エドゥアルドとアントンは、帝国軍の後方支援組織の再建にも着手していった。

 参謀総長が提案した計画には、徴兵制度の導入と、もう一つの骨子があった。

 それは、帝国軍の後方支援を兵員自身の手によって行わせる、ということだ。

 これは今までに経験した戦役の戦訓を反映した措置だ。

 補給品の調達や輸送は、もっぱら民間の業者に委ねられていた。

 軍が募集をし、契約し、代金を支払うことと引きかえに、必要な物資や、それを運搬するための馬車、馬匹ばひつ、人夫を用立ててもらう。

 もちろん軍自身が自前で補給を行っている部分もあったが、多くを、こうした雇いの労働者たちに頼って来た。

 しかし、この方法では満足いくだけの物資を確保できない場合が多かった。

 民間というのは通常、自己の利益を優先する。我が身を削って採算を度外視していては、生きていくことができないからだ。

 このために、これだけのものを用意して欲しい、と依頼して契約金を支払ったとしても、その通りの物品が届かないというケースが続発した。

 調達にかかる原価を抑えるために粗悪品を用意したり、輸送の途中で横領されたりする、という事例が、決して珍しくはない頻度で見受けられたのだ。

 加えて、実際の戦闘中の、前線の部隊への補給にも支障が生じていた。

 帝国の内乱の雌雄を決した戦いであるグラオベーアヒューゲルの決戦において、弾雨の飛び交う戦場に近づくことを民間から雇った人夫たちが恐れ、補給や、負傷兵の収容のための馬車が動かない、という状況に陥ったのだ。

 幸いエドゥアルドたちはこの戦いには勝利することができたが、今後も同様なことが起こり、そのことが原因で満足のいく戦果をあげられない、もしくは、敗北してしまうことも考えられた。

 加えて、代皇帝と参謀総長はこれまでにない大規模な軍を組織できる体制を構築しようとしているのだ。

 これまで度々機能不全を起こして来た従来のシステムではそもそものキャパシティが足りず、十分な補給を実施できなくなるのは容易に予想できることだった。

 だから、民間ではなく、軍に属する兵員を輜重しちょうの中心に据える。

 もちろん、使えるところ、より効率の良い場面では民間の力を借りるが、兵站システム全体の管理や維持、そして前線への輸送については強力に軍が関与し、戦場で戦う将兵に必要な物品が確実に届くように便宜を図り、今まで存在したこともないような大規模な軍隊を長期間にわたって十全に活動させ続けることのできる後方支援の体制を整える。

 それは、帝国全土におよぶ、広範な組織づくりを必要とする改革だった。


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