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15話  作者: マグciel
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リゼ王女の目的とエリスの想い

「私が急いでいた理由ですが、実は先日行われた会議で、私のお父様が”リーフハーバーをハウ王国の領地へ編入させるためには武力行使も厭わない”と発言したそうでして、今すぐにどうかするというわけではないと思いますが、数日以内には最後通牒を送るとの報告もありました。」

リゼは自分たちが急いでいる理由を白たちに話し始めた。少し暗いが真剣な表情であり、その場の空気も同じ様に重くなっていた。

「リーフハーバーが要求、つまりハウ王国領になることを拒めば、戦争になるかもしれないということですね。」

「え!?そ、それは速く止めに行かないとだね。」

アルスと白はリゼの話に対し、すぐに止めに行かなければならない事情であると理解し、他の賢者たちも同じような雰囲気だった。

「そうですね。その為に急いでいたのですが、モンスターに襲われ、負傷した兵もおりますし、馬の休憩も必要でしょう。それと、皆様に頼みたいことがあるのです。本来であれば私だけでお父様を止めるつもりだったのですが…もしよろしければ賢者の皆様の力をお貸しいただけないでしょうか?」

リゼは今の自分たちの状況からこのままでは父親を止めることが難しいと判断し、白たちに協力を頼んだ。

「私たちはハウ王国に向かう予定だったし、問題ないよ。皆も大丈夫だよね?」

白が他の賢者たちに視線を送ると、1人を除き皆"大丈夫"という視線で返した。唯一目を合わせず、アルスの腕をつかんだままのリズを睨んでいたエリスに白はなぜ機嫌が悪そうなのか再び聞いてみた。

「エリス、どうしたの?なんかあったらなんでもいつでもお姉ちゃんに言っていいんだよ?」

「ううん、大丈夫。」

リズから目を離し、白の問いに淡々と答えた。そのエリスの様子にヘスティアは何が原因なのか分かっていたが、面白そうだと思い敢えて黙っていた。

「大丈夫ならいいんだけど、そんな機嫌悪そうにしてたら、超かわいいエリスちゃんから、超かわいいブラックエリスちゃんに見えちゃうよ。」

「…どういうことですか?」

「要は超かわいいエリスちゃんがちょっとダークな感じになってさらにかわいくなるけどやっぱり元のエリスちゃんの方がいいような気がするしそれに…」

「それでリゼさん?明日の朝に出発で大丈夫ですか?」

白が何か言いだすと、アルスの頭には?が浮かんでいた。白は詳しく話そうと早口で喋りだしたが、やはり分からないと悟ったアルスは話を切り替えてリゼに話しかけた。

「皆様に協力していただけるのでしたら、そういった時間は皆様に合わせます。」

「アルスはすぐそうやってあしらってくる。素直じゃないな~も~。」

「よくわかんないことの説明を求めた僕がいけなかっと学べたので、白さんの犠牲は無駄じゃないですよ。」

「素直に喜べないんですけど…まぁいいや。とりあえず明日のために休んどこ~。」

白はその場の皆に声をかけて休もうとした時だった。見張りをしていた兵士が、急いで夜営しているリゼのもとに駆けてきた。

「リゼ王女様!先程戦闘した場所付近にゴブリンの群れが!!」

「…仲間の帰りが遅かったから確認しに来たってところでしょうか。」

「このままではこの場所も危険です。リゼ王女、それに皆様も早くお逃げください。」

その報告を聞き、リゼはなぜまたゴブリンたちが現れたのかを冷静に分析した。兵士は慌てており、落ち着かない様子で王女や賢者たちに逃げるように言った。

「兵士さん。ゴブリンの群れって、どのくらいの規模なんですか?」

「最初の時よりも多くて30体もいるが…まさか行く気か?悪いこと言わないから辞めておいた方が…」

兵士とリゼの会話を聞いていたエリスは兵士に対してゴブリンの群れの詳細を聞いた。兵士はそれに対し答えながらも、目の前の少女が行く気であることを察して止めようとした。

「大丈夫よ。エリス様もあの賢者様の一人なのだから。それと、貴方は少しは落ち着きなさいな。」

「こ、これは失礼しました。まさか賢者様だったとは知らず。…ではこちらです。」

リゼが兵士に対してエリスが賢者であることを話すと驚きながらも頭を下げて謝罪した。そして深呼吸をした兵士は、エリスをゴブリンの群れの場所まで案内することにした。

「じゃあ行ってくるね。」

「エリス、僕もついてくよ。」

「大丈夫。私は吸血鬼族ディアグレだよ?夜の戦闘は得意だから任せて。それに今日は満月だし。とりあえずアルスはリゼ王女様を守ってあげてね。」

エリスはその場にいる皆に対してそう言ったが、アルスが自分も行くと言い出した。しかしエリスは心配ないといった様子で自分よりも王女を優先するようにとアルスに返した。

「…うん、わかったよ。」

「エリスちゃん頑張ってね~(エリスちゃん、機嫌よくなったのかなぁ。)」

アルスは納得し、白はエリスに対して手を振って見送った。そうしてエリスは兵士の案内の元ゴブリンの群れがいるという場所へと向かった。エリスが夜営地を離れた後、リゼはアルスの腕から離れると、アルスに耳を貸すように促した。

「アルス様、私はもう大丈夫ですので、エリス様のことを優先してあげてくださいね。」

「?」

アルスはどういうことか分からなかった。リゼはアルスの隣から移動すると、白と話し始めた。

「賢者様たちは今までどのような旅をしてこられたのですか?」

「う~ん、私たちが旅をしたのは割と最近のことだし、大したことはしてないけど…じゃあまずは私が暮らしてた村のことから話そうかな…」

白はリゼに対して旅の話をし始めた。シエルとゼータは横になったソイルの両側で同じ様に横になり、ヘスティアは他の兵士たちと話していた。

「(エリスのことはいつも気にかけてるし、エリス自身1人でもやっていけるくらい強いから、リゼ王女の方を優先して考えてたっていうのはあるけど…何が行けなかったんだろう。)」

1人になったアルスはリゼに言われたこと、エリスの機嫌が悪そうであった事を思い出して考えていた。

 夜営地から離れ、兵士に案内されたエリスはゴブリンの群れがいる場所を観察できる木の陰まで来ていた。

「あそこです。かなりの数がいますが、ここまででいいんですか?」

「大丈夫ですよ。ちょうど憂さ晴ら…魔法を使いたいと思っていたので。それと、このくらい離れてないと、貴方にも被害が及ぶかもしれませんし。」

エリスは兵士に対してにこやかに答えた。その返答を聞いた兵士は若干引いていたが、エリスの言う通りこれ以上近づかないようにした。エリスは木の陰から出ると、蝙蝠こうもりの翼のような羽を生やし飛翔し、ゴブリンの群れの方へ向かった。

「ダークネビュラ」

エリスはゴブリンの群れの上空からゴブリン達の方へ手を向けて魔法陣を展開すると、その魔法陣から黒い光が現れた。そして放たれた黒い光がゴブリンの群れの中央に到達すると、黒い波動を発した。その黒い波動に当たったゴブリンの群れは全員一瞬にしてその場に倒れ、消滅した。

「す、すごいですね。あの数のゴブリンを一気に倒せるなんて…」

「このくらい、他の皆もできますから。」

エリスはそう言いながらゴブリンたちの素材を回収していた。兵士もその回収を手伝うと、エリスは兵士と集めたゴブリンの素材を半分に分け、兵士に渡した。

「これ、どうぞ。案内してくれたお礼です。」

「い、いえ私は何もしておりませんので、貰えませんよ。」

「倒した本人がいいって言ってるんだから、貰ってよ。私が持ってても特に使い道ないしさ。」

「…それならありがたく頂きますね。」

一度は断った兵士だったが、エリスからさらに言われ、ゴブリンの素材を受け取った。そしてエリスと兵士は、白たちが夜営しているところに戻った。

「お疲れ様~やっぱり一人でも大丈夫だったんだね。お姉ちゃんにぎゅ~ってする?」

「ん~お姉ちゃんも疲れてるならそろそろ休んだ方がいいんじゃない?」

「特に何もしてないし疲れてもないけど、明日にはハウ王国に着くし、エリスちゃんに言われた通り休もうかな。」

いつも通りの対応をした白に対して、いつもより少し大人びたように対応した。その返答を聞き、白はエリスの言うとおりに休むことにした。白の隣に座っていたリゼはアルスと目が合った。

「では白様、一緒に寝ていただけませんか?その方が安心しますので。」

「へ!?リゼちゃん!?一緒に寝てくれるの?」

「はい…駄目でしたか?」

「ううん。むしろ嬉しいよ!あ、でもそうなると馬車の中だよね。エリスちゃんとアルスくんと一緒に寝れないし…」

白はリゼに一緒に寝てほしいと頼まれる事は予想外であり、その場で立ち上がり驚きと喜びが合わさった反応をした。しかしエリスとアルスのことを気にかけ、一緒に寝れないことについて悩んでいた。

「僕のことは気にしなくていいですよ。それにいつもは白さんが勝手に寄ってくるだけじゃないですか。」

「え~お姉ちゃんからの愛情表現をそんな嫌そうに言わなくてもー。」

アルスは白と一緒に寝れないことに対して特に何も感じてないどころか、逆に嬉しそうな感じで返した。白はそれを聞きムスッとしていた。

「今日はアルスと寝るから、お姉ちゃんはリゼさんと一緒にいてあげて。」

「ん~分かった。じゃあリゼちゃん、いこっか。」

「(アルス様…頑張ってくださいね。)」

エリスが突然放った言葉にアルスは凄く驚いていた。白も驚いてはいたものの、何となく空気を察してリゼと寝ることにした。リゼは心の中でアルスに何か思いながら、白と共にリゼが乗ってきた馬車に入っていき、その場にはアルスとエリスだけが残された。

「エリス!?急にどうしたの?」

2人きりになった途端、エリスはアルスの横に座るとアルスの膝の上に頭を乗せ、上半身だけ横になった。

「…リゼさんと会ってからさ、リゼさんのことばっかり見てたでしょ?」

「それは…だって王女様な訳だし……」

「私のことも見てほしかったんですけど。」

エリスはアルスに対して少し不機嫌そうに、リゼと出会って以降のことを思いながら本音を話した。

「…もしかしてそれで機嫌が悪かったの?」

「そうだけど、何かおかしい?」

「ううん、そんなことないよ。エリスにはいつもよくしてもらってるのに、それを返せてない僕が悪いから…。」

アルスはそれを聞きようやっと原因が分かった。そしてエリスのことをあまり見ていなかったことに気づき、罪悪感を感じていた。

「じゃあ私の事好き?///」

「っ///!?な、なんで急に…」

「いいから答えて!」

エリスからの急な言葉にアルスは顔を赤くしながら驚いた。尋ねたエリスも頬を赤く染めていた。アルスはどのように答えるのが正解なのか分からなかったが、頬を掻きながら答えた。

「…仲間として好ましくは思ってるよ?」

「ふ〜ん。ま、今はそれでよしとしてあげます。」

アルスの返答が、照れ隠しであることに気付いたエリスは、にやけながら、そのまま目を閉じた。

「ちょっ、エリス!寝ないで。どういうことか分からないんだけど!!」

アルスは最後まで自分の気持ちとエリスの質問の意図を理解することはできなかったが、エリスの機嫌がよくなったことだけは分かり、自分も眠ることにした。

 そして翌日、白たちはリゼたちと共にハウ王国へと向かった。


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