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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第二章

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95/200

一つの意見

 ラナベールへ向かう道中、ユークは町の詳細について女剣士キイラから教えてもらう。町の近くは魔物が発生しやすいなど周辺情勢などは把握していたが、


「近くにある森は瘴気が多いけど、それは裏を返せば魔力が溜まりやすい……貴重な薬草なんかが手に入りやすいという意味合いもある」


 そうした歴史的な背景などを教えてもらう。ユークはキイラの説明に「なるほど」と応じつつ、


「だから危険ではあるものの人が集まり、町があると」

「そういうこと。アタシも何度か仕事で入ったことがあるよ……名はゲイブの森。シュバーレイド大森林と比較しても、遜色ないくらい危険度が高い。森の中を進めば山に到達するし、起伏もある危ない場所でもある」

「そういった場所に魔物が……」

「そうだね。しかしだからこそなのか、魅力的な物が数多くある」


 と、キイラは語ると目を輝かせ、


「中には強大な力を持った勇者の武具なんて物が存在していると」

「……さすがにいくらなんでも眉唾では? 貴重な薬草とかならわかるけど、人間が作った物が森の中にあるとは考えにくいけど」

「ゲイブの森を攻略しようと考えた勇者の遺品、とかいう話だよ」


 説明にユークはある程度納得はしつつ、


「とりあえず危険度の高い場所かつ、人が多い場所ということか」

「そうだね」

「で、そんな場所でも今は異例なほどに魔物が多い」

「そう……勇者オルトの騒動と関係していると吹聴する輩もいる。正直その辺りは国に調べてもらいたいところだが、アタシはさすがに考えすぎなんじゃないかと思ってるよ」


(一般的な勇者だと、そういう見解かな)


 ユークは内心で考察しつつ、


「それで現在、国の依頼で勇者が多く集まっていると」

「そうだね……こういう言い方は不謹慎に思われるかもしれないけど、アタシとしては一種のお祭りのようにも思えてくるね」

「お祭り?」

「多数の勇者が集まるなんて、大きなイベントでも滅多にないからね……ま、勇者として活動歴が長いのなら、ちょっとした同窓会みたいな感じにも思えるかもしれない」


 ――ユークはその言葉を受け、横の繋がりがあるのだろうと察する。


(勇者オルトもそういったコミュニティに加わっていたはず……だとすれば組織に勧誘した人物だっていたかもしれないな)


「……あの、一つ質問が」


 ユークが問い掛けるとキイラは「どうぞ」と告げる。


「アタシに答えられることなら何でも」

「……勇者オルトのことをどう思う?」

「アタシはあんまり縁の無かった人間だから、ああそういう馬鹿もいるんだくらいのもんだね。ただ、なんというか……漏れ聞く噂を考慮すると、国を恨んでもおかしくないかなとは思うね」

「……噂とは?」

「勇者として教育を受けてきたけど、どこか抑圧された生き方をしてきたみたいだからね。たまにいるんだよ、勇者としての教育を受け、真っ直ぐに育ったけど世間の勇者に対する風当たりとか、理想と現実のギャップとかに悩まされて恨みを抱くような人間が」

「オルトもその一人だったと?」

「動機については解明されていないんだろ? なら勝手な噂でしかないが……ま、勇者という存在は黒い噂が立ってしまうくらいには、色々とあるってわけさ」


 そう語るとキイラはユーク達を一瞥し、


「二人はたぶん、大切に育てられてきたんだろうね」

「……あまり良い意味合いではなさそうだな」

「いやいや、そういう勇者だっているさ。なんというか、勇者についてもランク付けみたいなものがあって、二人はおそらく最上級……それに対しアタシやオルトなんかは、まあ平均以下ってところかねえ」


 自分のことをそう評価するキイラ。ただ、声音に嫌みなどは含んでいない。


「アタシは今の立場に満足しているし、自由気ままに動けるからそれでいいと納得できているけどね。でもまあ、恨みを抱くケースだってあるって話さ。国もちょっとは扱いを考えないといけないのかもしれないね」

「……そうだね」

「あんたも同じことを考えているのかい?」

「制度を変える、なんてできるかはわからないけれど……少なくとも、今がどういう状況なのかを調べようとは思っている」

「そうかい。ま、やりたいようにすればいいさ……あ、ただ一つ。アタシみたいな勇者もいるけど、あんた達エリート連中を恨んでいるような勇者もいる。同族嫌悪ってやつかな? 色々と付き合う場合は気をつけるんだね」

「……アドバイス、ありがとう」

「どういたしまして」


(……彼女の言動も、一つの意見だな)


 生い立ちによって、考え方も変わる――が、似たような境遇だからといって、考えが一緒になるわけでもない。


(勇者制度……大きな力を持つ以上、国は放置できない。けれど、だからといって……難しい問題だな)


 ただ、今の制度によって組織に加担する勇者がいるのも事実。自分はそうした中で何をすべきなのか――ユークは思案しつつ、アンジェやキイラと共に町へと歩き続けた。


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