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情報交換

 ノイド将軍の言葉に対し、まずユークが口を開く。


「俺と従者であるアンジェは、事態の解決を何より優先しています。シアラが報告した際に語られたかはわかりませんが……ログエン王国の襲撃事件は、ディリウス王国で発生した騒動と関連している可能性が高い。それ故、こちらとしても情報や協力が欲しい」

「うむ、その辺りの事情は知っている……だからこそ、私達が来た。ユーク君、確認だが君はディリウス王国の勇者として、国へ陳述できる手段を持っているのか?」

「はい、アンジェが作成する報告書は、ディリウス王国の上層部へ渡ります」

「わかった。ならば、いざとなれば君達のルートを通じてディリウス王国と接触できるわけだな」

「……おそらく国内には、組織の人間がいます。下手に情報を開示すれば、相手にも伝わるかと」

「そこも理解している。国と折衝するのはあくまで最終手段だ……極めて特殊ではあるが、上層部へ直通する情報伝達ルートがあることは、非常に心強い」


 将軍はそう語った後、ユーク達を一瞥した。


「さて、まずは情報を共有したい。現在ログエン王国は王族襲撃事件の犯人を捕まえるべく捜査を続けている。現在こちらがわかっていることは魔物の詳細と、事件の詳細。君達はどうだ?」


 質問に応じたのは、ユークではなくシアラ。


「大森林で遭遇した魔物の詳細……そして、襲撃事件に関連する魔物の特性と、これまで私やユークが見た魔物の詳細」

「特性か……ではまず、情報を交換しよう」


 ――ユーク達と将軍達はそれぞれ情報を開示する。それによって襲撃事件で王族を狙った魔物は、特徴から紅の魔物で間違いなかった。

 情報交換を終え、最初に口を開いたのはノイド将軍。


「なるほど、構造物から魔力を得る特性か……実は襲撃された王族の中には、防備を固めた屋敷で攻撃された者がいる。しかし構造物から魔力を吸収し、破壊……となれば、どれほど堅牢な防壁であろうとも意味を成さないだろうな」

「……隠密行動するため気配を隠す、というのはできないみたいですが」


 と、将軍の言葉に続きユークが発言する。


「魔力を吸収し、建物のどこからでも侵入できるのであれば、防備なんて関係ないでしょうね」

「極めて厄介な特性だな。魔物の能力も技術的に高いのであれば、対峙した際に対応できる者は限られる……今後も王族が狙われる可能性を考慮すれば、すぐにでも解決したい」

「現在、王族はどのように?」

「騎士を多数動員して警戒に当たっている……が、特性を考えればいくらでも出し抜けるな。ただ索敵魔法を王都周辺で張り巡らせている。さすがに四度目の襲撃事件はないと思いたいが……」

「能力が高くとも気配は魔物ですから、それで大丈夫だと思います」


 ユークの言葉に将軍は頷く。


「魔物についてはおおよそわかった……次は組織についてだな。現状では魔物の生成実験をしているということしかわかっていない。ただ様々な種類がおり、それぞれに特性がある」


 将軍はユーク達が説明した魔物の詳細について吟味しているのか口元に手を当てる。


「ログエン王国で発見したのは紅と緑に純白……緑と純白は大森林内であるため、ディリウス王国側で発生したのかもしれないが……状況的に見て、組織の中心はディリウス王国にあると見ていいのだろうか?」

「……他国の状況も調べた方がいいでしょうね」


 ユークはそう発言すると、ノイド将軍は眉をひそめ、


「どういうことだ?」

「拠点は例えばどこかの山奥とかにあって、ディリウス王国を狙っているだけかもしれませんし」

「なるほど、そうだな……魔物の居場所から敵拠点の場所を割り出すのは難しいか……」

「短期的に解決するのは非常に難しいと思います。現在ディリウス王国が本腰を上げて事態解決に動いていますが、まだ情報集めの段階ですし」

「……話を聞いてそれは痛感しているが、少なくとも事件の犯人は捕まえなければいけない」


(……将軍という立場上、国の重臣から色々と言われているんだろうな)


 相当なプレッシャーが掛かっているのだろうとユークは推測する。


「ここから犯人を捕まえるために必要なことは……」

「大森林に同様の魔物が現れていることから、この周辺を拠点にしている可能性はあります」


 ユークはここでシアラへ視線を向ける。彼女が狙われているかもしれない、という点については当然ながらなぜ、という部分を説明する必要がある。

 両親が毒殺された――そうした事実まで伝えなければいけないはずで、その判断はシアラ自身にしてもらわなければならない。ただ説明する場合アンジェは席を外す必要があるだろう――


 視線の意図を彼女はどうやら察したらしく、ユークへ向け小さく頷いた。そして、


「……大森林に程近いということから、この町を狙っている可能性はあります」


 そう彼女は話し始める。両親のことは語らないらしい。


(あまり良くない推測だけど……将軍と騎士団長、この二人が組織の人間である可能性もゼロじゃないからな)


 胸中で呟きつつ、ユークはシアラの話を聞き続けることにした。


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