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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第二章

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74/200

町のため

 その後、ユークとアンジェは紅の魔物と遭遇し、撃破に成功。能力さえわかれば対処は容易であり、単独で行動しているところを連携で崩し、倒すことができた。


「これで仕事は終わりだが……」


 ユークは呟きながら再度索敵魔法を使用する。大森林内に魔物の気配はあるが、ユーク達が遭遇した人の手で作られた魔物とは違う。

 ただ、野生の魔物については以前訪れた時と同様に数が少ない。森林規模から考えても数は相応にいるはずだが――


「……魔物が少ないのは、純白の魔物が食い尽くしたからか? それとも、現在も純白がいるのか?」

「わかりませんが、ユーク様が感知できないとなったら、居所を探すのは無理そうですね」

「……隠れている可能性も考慮して、当面は調査を継続するしかなさそうだ」


 ユークは結論を出し、町へと戻るべく歩き始める。


「しかし……突然組織に関連する魔物が現れたというのは、どういう意図があるのでしょう?」


 帰還途中、アンジェは首を傾げながら疑問を呟く。


「戦闘になる前、ユーク様も仰っていましたが……理解不能ですよね」

「ああ、ここで姿を現すメリットが何もない。純白の魔物を倒した報復……あるいは、大森林内を制圧するために派遣したとしても、今である必要はない」

「それだけ、この森が重要ということでしょうか……?」

「可能性としてはそれくらいしか考えられないが……シアラに心当たりがないか確認してみようか」

「そうですね……とはいえ、魔物を無事倒せたのは良かったですね」

「魔物は複数いたが、全て単独行動だったからな……制圧するなら戦力をバラバラにするべきじゃないし、そういう意味でもやっぱり動機が不明なんだが」


 ユークは頭をかきつつ、さらに考察を進める。


「可能性としては、アンジェが言ったようにこの場所がかなり重要であり、魔物を使って勢力圏を広げる必要があった。あるいは、単純にシアラの活動を見て対処すべきだと判断したか」

「……後者の場合、なぜそうまでしてシアラ様を?」


 ――ユークとしてはシアラから事情を聞いているため動機が存在しているとわかるが、アンジェにとっては疑問しかない状況。

 とはいえそこについては話すことなく、ユークは彼女へ言う。


「彼女は領主として色々動き回っているようだし、本人が気付かず内に誰かから恨みを買っているとか、そういう可能性もあるな」

「そうした人間が組織の誰かに依頼をした……と?」

「ディリウス王国で国が動き回っている状況でやる意味はわからないけど……ま、俺達は組織の目的もまだわかっていない段階だ。もしかすると解明したら納得できる内容かもしれないし」

「動機は不明ですが、敵は動いている……ならばそれを利用し、組織に近づくというわけですね」

「そうだ……明日以降、また魔物が出現したら場合によっては組織の構成員とかが近くにいるかもしれない。それがわかり次第、捕まえたいところだな――」






 ユーク達は魔物討伐を終え屋敷へと戻ってきた。そこでシアラが仕事をする書斎を訪れ報告をすると、


「紅の魔物か……ログエン王国と関連があるとみて、間違いはなさそうね」

「……国には報告するんだよな?」

「ええ。勇者ユークに協力してもらい、という報告をすれば国側も無碍には扱わないでしょう。もしかするとここに人が派遣されてくるかも」

「事情を聞きに、か……シアラとしては悪くない展開か?」

「国が関心を持つようになるのなら、それに越したことはないわね」


 応じるとシアラは椅子に座りながら腕を組む。


「ログエン王国側から勇者とか派遣されたら、それはそれで話が複雑になっちゃうけど」

「最悪、その勇者が組織と手を組んでいる可能性もあるか……か」

「想定しうる一番面倒な状況がそれ。ただ、国の指示を受けてということなら無茶はしないでしょう。ユーク、あなたなら騎士や勇者と顔を合わせ、感情は読み取れるでしょう?」

「そうだな。警戒されていたりすれば、それだけで怪しいという風に解釈できる」

「ひとまず国へ報告し、出方を窺いましょう……今後も同様の魔物が現れたら、都度動いてもらうけど、いいかしら?」

「それで構わない。シアラの方は情報収集中心になるし、デスクワークばかりになりそうだな」

「私としては窮屈だけど、これも仕事だからね……」


 机の隅に置かれた書類の山を見ながらシアラは苦笑する。


「そういえば、シアラ。秘書とかいないのか?」

「仕事が一段落したから、ちょっと休んでもらっているだけよ。でもここから夕方まで延々部屋にこもって仕事になるわ」

「……大変そうだな」

「これが領主というものだから」


 シアラの表情は、仕事により疲労感もあったが――表情は晴れ晴れとしたものだった。

 町のために働ける、というのが何より嬉しいのだとユークは理解する。亡き両親のためにこの町を守りつつも、なにより町が好きだから――ユークは確信しつつ、報告が終了したので部屋へ戻ることにしたのだった。


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