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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第二章

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想定外

 シアラとの話し合いの後、ユークは彼女の私室を出て自分の部屋へ戻る。そして、


「組織は思った以上に色々な場所に影響を及ぼしているというわけか」


 呟いた後、窓際にある椅子に目を付け座った。


(シアラの身に起きた出来事を整理しよう。彼女には勇者の証があり、両親は教育を施した。その両親はディリウス王国の貴族によって毒殺された……彼女は当初流行病だと思っていたが、誰かがおかしいと告げ、調査し事実が判明した)


 復讐心を利用し組織は勧誘をしようとしていた――あるいは彼女の足でそこへ赴くように仕向けようとしたか。ただ、彼女は復讐に走らなかった。


(純白の魔物が近くにいたことから何かしら干渉しようとした可能性はあるな。そしてシアラは俺と協力して魔物を倒した……組織の人間からすると、彼女の立場は微妙だな。そしてディリウス王国の貴族を利用、ということを踏まえればやっぱり組織は王国の政治なんかに深く関わっている人間がいるな……俺は彼女から得た情報で何をすべきだ?)


 ――シアラは傀儡となっている人を介した形だが組織に関わったのは間違いない。純白の魔物のこともあり、この町に報復が来てもおかしくない。よってユークとアンジェを招き、町の守りを盤石にしようと考えた。

 そして彼女はユークに事実を話した。ユークとしてはシアラから貴重な情報を得たことで色々と考察できるようになった。


(もしかするとここに滞在するだけで、何かしら情報を得る機会があるかも……ここを拠点にして、活動していくのは正解かもしれない)


 ともあれ、ユークはここで迷う。組織の尻尾をつかまえるための手がかりはある。だが、


(ディリウス王国貴族について調べるのはログエン王国に来てしまった以上、難しい。かといって俺達は他国の人間である以上、ログエン王国内の騒動に首を突っ込むことはできないし、ならば俺とアンジェにできることは……)


「ひとまず仕事をこなしつつ、かな」


 ユークは町を見て回った際、戦士ギルドがあることにも気付いた。他国ではあるがログエン王国でも仕事をすることは可能だ。


「シアラが持ってきた仕事をこなし、戦士ギルドで情報を集め……かな。しばらくは地味な作業が続くだろう」


 そう述べた後、ユークは軽くのびをした。そして窓を見ると、日が傾きかけている。


「明日から、改めて仕事開始かな」


 呟きつつ、ユークは屋敷内でも見て回るかと考え、部屋を出たのだった。






 ――ユーク自身、町を攻撃される危険性を考慮しつつも、当面は騒動もなく平穏な日々になるだろうと考えていた。無論、組織側が魔物を倒して回っているユークとアンジェの存在を危惧している可能性はある。


 干渉してこないだろうと考えた根拠は二つ。一つはユーク達がディリウス王国の上層部と繋がっている点。下手にユーク達に干渉して手がかりを残してしまえば、逆に追い詰められる可能性がある。


 勇者オルトの騒動もまた完全に収束していない上にディリウス王国も動き出している。組織としては対策を行いつつ当面は活動を控えると予想できる。魔物の存在が表面化したことで逆に動きが活発化する懸念もあったが、国が動き出している状況を踏まえれば、実験段階である魔物を利用し攻めてはこないだろうとユークは推測した。


 もう一つの根拠としては魔物を倒して回っている点。実験をしている魔物達がいなくなっているため、組織側としても計画が進んでいない状況のはず。この場合、一度態勢を立て直そうとするのは至極当然であり、一つ目の根拠もあって近々に攻撃などしてこないだろう――と、ユークは考えていたし、アンジェも同意見だった。


 そうした中でもシアラは防衛対策を町へ施し――ユークの予想が外れたとわかったのは、翌日の朝だった。


「少し、想定外の状況になっている」


 朝食を済ませた後、ユークとアンジェはシアラに呼ばれて彼女の私室を訪れた。そこで報告を聞くことに。


「大森林内にいる魔物……どうも、私達が戦った純白の魔物と同系統の魔力を持つ魔物が出現しているようね」

「組織が動いたってことか?」

「かもしれないわね」


(……どういうことだ?)


 ユークは内心首を傾げる。国が大きく動こうとしている状況下で、リスクしかない行動のようにしか見えない。


「敵の意図は理解できないけれど、出てきたのであれば対処するしかない」

「そうだな……魔物を始末すればいいか?」

「そうね。何より町に被害を出さないように」

「なら、俺とアンジェで対処しよう。シアラは町の防衛を」

「二人で戦うの?」


 問い返したシアラに対しユークは頷いた。


「ああ、魔物の動きや特性を観察してみる……単体でウロウロしているのであれば、対処するよ」

「……わかった。気をつけて」


 シアラの言葉にユークとアンジェは頷き――早速、行動を開始した。


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