組織の動き
ユーク達は青の魔物を倒してから、旅を再開した。自分達の能力を活かせる武器も手に入れたため、次の目的地は――
「というわけで、シアラの下へ向かおう」
「わかりました」
アンジェは頷き、ユーク達は街道を歩む。
「ユーク様、シアラ様の所を拠点にして活動するというのは理解できますが……そこから先はどうしますか?」
「んー、青の魔物……そうした存在がいることからも、敵の組織は準備を相当進めているのだと予想はできる。よって、あんまり悠長にしてもいられないと思うんだが……」
ユークはここで頭をかきつつ、
「アンジェ、報告書は送ったんだよな?」
「はい、数日以内には届くかと」
「青の魔物の能力は非常に危険だとディリウス王国も認識するだろうし、警戒度合いはさらに上がる……ただ、調査だけでも相当な時間が必要になるだろう」
「その間に組織は動き出す……でしょうか?」
「正直、そこは微妙だな……なんというか、俺達が思ったよりも活躍してしまったことで、敵の出方がわからなくなった」
そんな発言を受け、アンジェは眉をひそめた。
「活躍……したのは良いことでは?」
「組織の活動を止めた、ということなら犠牲者なんてのも出なかったし良いとは思うんだけど、問題は俺達が間違いなく組織にマークされるくらいには色々やったこと……結果、俺達の対策をするために動き出す可能性がある」
ユークの言葉を受け、アンジェは沈黙。
「組織の活動はディリウス王国の上層部では知られていなかったのは間違いない。一方政治に携わる誰かが組織の構成員で、情報を流しているというのは確定だろう。いくら山の中とか森の中とか、そういう場所で密かに魔物の生成実験をやっているにしろ、傭兵や冒険者は色々な場所へ赴く。バレないはずがない」
「今までは人の目を誤魔化せていた……それは、政治に関わる人間がいて、人がいない場所について情報を持っていたから?」
「そうだと思う。あるいはそれこそ『戦士院』にスパイがいるか」
アンジェは厳しい顔をする。そんな表情にユークは、
「いくらでも疑う余地はある……そしてディリウス王国側は組織の存在を知ってしまった。よってここからは組織と国が戦うわけだが……いくら強力な魔物を生み出せるといっても、現段階で組織が国に喧嘩を売るような真似はできないだろう」
「軍事力的に、一組織が国に勝てるわけがありませんからね」
「その通り。組織の目的はまだわからないけど、例えば国を支配することだと仮定しよう。その場合、密かに青の魔物を始めとして様々な能力を持った個体を作成し、機が熟したら――つまり、戦力を整えたら仕掛けるということになる」
「現段階で魔物の生成実験をしているわけですし、そうなるのはずいぶん遠い話になりそうですね」
「ああ、そうだな……でも、俺達が盤面を動かしてしまった」
ユークは発言しつつ肩をすくめる。
「組織が密かにやっていた活動を白日の下にさらしてしまった以上、組織側は次の一手を考えなければならない。それが一度潜伏してほとぼりが冷めるまで待つ方向だったらありがたいけど、後々障害になるかもしれない俺や他に邪魔だと考えていた勇者を始末する……とかだったら面倒なことになる」
「国が大々的に動き出している今、わざわざ動くでしょうか?」
「むしろ今動かないとまずい、と判断する可能性がある。勇者オルトのことを考えると、ディリウス王国の庇護下にある勇者の中に組織と内通している者がいる可能性は極めて高いし、国は調べているはず」
「……そうした人が国の調査で暴かれてしまえば、動ける人員がいなくなってしまうと」
「ああ。だからこそまだ露見していない今のうちに……国の手が伸びる前に組織幹部は潜伏するだろうけど、その前に厄介者を倒しておく、なんて考えてもおかしくないわけだ」
「そういった行動に乗じて何かしら情報を得られれば、騒動解決の糸口になりますが……」
「敵は相当用心深いし、厳しいだろうな」
ユークの言葉にアンジェは少し考え込み、
「例えばこちらが上手く情報を流せば相手のことを割り出すことも可能でしょうか?」
「できなくはないかもしれないけど、手紙のやりとりをしているだけでそこまでやるのはさすがに厳しいかな……かといって、俺達が王都に直接乗り込んでも敵が尻尾を出すとは思えないし」
「シアラ様の所は安全でしょうか?」
「場合によってはシアラの所にも敵が来るかもしれない」
「その辺り、シアラ様に説明しないといけませんね」
「ああ……場合によっては組織からの攻撃を受けるとして追い返される可能性があるけど……ま、ここは彼女と話をして決めることになるな」
「もし追い返されたらどうしますか?」
「旅を続けることになる……とにかく彼女の所へ向かおう。以降のことは、シアラと顔を合わせてから決めるようにすればいいさ――」




