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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第一章

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新たな武具

 ユーク達はシャンナと顔を合わせてから即レイテオンを離れ、彼女が提供した情報を基にして移動を始めた。目指すはレイテオンの南にある町。そこに、普通の冒険者は知らない施設があるらしい。


「情報によれば、研究所らしいな」


 ユークは街道を歩きながらアンジェへ解説を行う。


「さすがにシャンナさんから渡された情報ではわからなかったけど、少しギルドで調べたら判明した。でも、調べようと思わない限り見つからないというレベルではあった」

「国が意図的に情報を隠している、ということでしょうか?」

「勇者の武具……それに準ずる物を作成しているというなら、おいそれと公表するのはまずいって話だと思うよ。他には……そもそも俺達が向かう施設は、研究をしている場所だ。武具が欲しいからと押しかけられては面倒、ということだってあるかもしれない」

「……ユーク様、なぜその施設を訪れようと?」


 アンジェの問い掛けにユークは笑みを浮かべ、


「一番怪しそうだろ?」

「確かに、研究所で武具とは繋がりにくいですし、何というか怪しさもありますね」

「シャンナさんが国を背負って情報を提供しているのなら、大丈夫だとは思うけど……その研究所自体、シャンナさんの知らないところで何か騒動に関係している可能性もゼロじゃない」

「なるほど、つまりそれっぽい場所を調べてみて怪しいものがないか確認したいと」

「大丈夫だとは思うけど」


 ――そんな会話を行いながらユーク達は旅を進める。資金を稼ぐ必要性がなくなったので、今まで貯めたお金は全て旅費に回せている。結果、どこかで路銀を稼ぐ必要もなく、ユーク達はあっさりと目的地である町に辿り着いた。


 規模はユークが修業時代にコッソリ訪れていた場所とそう変わらない。特徴的なのは、町の片隅に存在する重厚な塀に囲まれた屋敷のような建物。領主の屋敷にしてもどこか物々しい佇まいであり、町の人にとっては見慣れた光景であるため特に視線を向けることはないが、ユークにとって違和感を覚えるくらいだった。


「……ふむ」


 町に場違いなほど重厚な建物――その理由は、町に入り地面を見据えたことで答えが出た。


「どうやらあの建物、土地から魔力を吸い出しているな」

「そうなのですか?」


 アンジェは驚きながら地面に目を向ける。


「……何も感じませんが」

「本当に微細な動きだからな。土地から魔力を、と言ってもその量は大したものじゃない。大河から桶で水を汲むくらいの影響しかない」

「大地から魔力を供給しながら研究する……という場所は、王都にもありますが」

「もしかするとこの辺りの土地は魔力を吸い出しやすいのかもしれないな……あるいは、魔力の質的な関係で、勇者の武具に近しい物を製造できるのかもしれない」


 ユーク達は迷いなく屋敷へ。入口は鉄門で仕切られ、とても入れるような佇まいではないが――ユークが門番と思しき人物にギルド証を提示すると、その人物は建物の中へ入り確認へ向かった。


「話は通しているみたいだな」

「……ですね」


 やがて戻ってきた人物は「中へどうぞ」と告げ、ユーク達は門を抜け建物の中へ。調度品もほとんどないようなエントランスに、一人の男性が出迎えとして立っていた。


「ようこそ、勇者ユーク、勇者アンジェ」

「……俺達のことは、どの程度知っているんだ?」


 ユークは問い掛けながら男性を観察。短い黒髪で年齢は三十前後といったくらい。白衣を着ておりずっと室内にこもっているためか真っ白い肌と細い体を持ち、どこか不健康そうにも見えてしまう。


「先日、戦士院から連絡がありました。勇者として活動するお二方が訪ねてきたら、武具を作成して欲しいと……他にもこういった施設はありますが、なぜここへ?」

「レイテオンから近かったのが理由の一つ。あと」


 ユークは男性を見据えつつ、


「なんとなく、ここは結構怪しそうだなー、と」


 その言葉で男性は目を丸くしたが――すぐに笑い始めた。


「なるほど、勇者オルトの騒動がありましたから、こういった施設にも関わりがあるのでは、と考えたのですか」

「……その辺りの事情も把握している?」

「この施設は戦士院が管理しています。そして勇者の武具……それにまつわる施設であるため、重要情報が回ってくるのです」


 そこまで語った後、男性はユーク達へ奥へ向かうよう手で促した。


「とはいえ、ここがどういう場所なのか情報を多くは持っていないでしょう。ならばまず、この施設が何をしているのかを、しかと説明するところから始めましょうか」


 にこやかに語る男性。ユークは「わかった」と短く返答した後、歩き出す。それにアンジェも追随し――ユーク達は、建物の奥へと向かうこととなった。


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