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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第一章

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三つの話

「では、私が個々へ赴き何をするかはわかりますか?」


 話を進めるシャンナ。ユークは彼女を見据えつつ、返答する。


「俺達の旅に関する言及と、戦士ギルドに関する話……それと、武器について。三つかな?」

「ご明察通りです」


 感嘆の声を発するシャンナ。


「ただ、そこについて言及する前に一つ。私がここへ辿り着く前に戦闘があったのはわかりましたが、他に同行者がいましたか?」

「ログエン王国の勇者だけど」

「ああ、ミューレン家の現当主でしたか。領地のことを考えれば来るのは至極当然ですね」


 すぐに状況を理解した。ここでユークは彼女との交流について話すのは今だろうと考え、


「実は――」


 改めて説明を行う。シャンナはそれを一通り聞いて、


「なるほど、彼女の立ち位置を考慮すれば、組織の人間である可能性は限りなく低いですし、ミューレン家のお世話になる、というのは良い解答ではありますね」

「隣国の勇者と領主なわけだけど、否定はしないんだな」

「正直なところ、ディリウス王国でユーク殿が信頼できる人間を探すのは困難でしょう」


 そんなことを言い出す。ユークとしては内心驚いたが、シャンナは話を進める。


「そこについては私から説明しておきましょう。それに、悪い話ではありません。勇者という存在は基本、あまり国外へ出ないものではありますが、交流を禁止しているわけではない。あなた方の活動を利用し、ログエン王国と手を結ぶという方策も生まれますし」

「なるほど」

「ただ、一つだけ忠告を。ミューレン家の当主は生い立ちから考えて信用に値しますが、彼女は既に社交界へ出ている身。ユーク殿と手を結ぶことは単純に騒動解決に繋がるだけでなく、自身の地位向上にも利用できる……というより、そうした思惑は大なり小なりあるでしょう」

「出世欲は強くなさそうだけど、自分の領地を守ろうという意思は強いから、政治的な利用も多少は考えているだろうな……ま、その辺りはどうするか今後考えるよ」

「わかりました。では、私がここに来た点について本題へ入ります」


 前置きをしてから、シャンナは語り始める。


「まず、ユーク殿の方針……つまり国としてあなたとどう接するかですが、現状維持という形で国の方針が決まりました」

「つまり、俺はこのまま行動してもいいと」

「ミューレン家の一件については私から報告しておきますが、話を聞く限りこの騒動は国をまたいでいる様子。そしてユーク殿はまだ世間に顔を出しているわけでもないため、そう問題になることはないかと」

「わかった」

「次に戦士ギルドの話ですが」

「これは当然、偽名を使っていることだな」


 言及にシャンナは小さく頷いた。


「こちらの管理でギルド証を発行しますので、受け取ってください」

「ん……? 偽名はそのままでいいの?」

「ユークという名は勇者間で広まっている節があります。よって戦士ギルドにおける活動でユークの名を使うのは不都合が生じる可能性はあります……が、何かあった時に備え本名の方で活動できるようにしておくべきでしょう」


 そう言いながら彼女は懐からギルド証を取りだした。


「どうぞ」

「……どうも」


 ユークはそれを礼を述べながら受け取る。


「ユーク殿の判断でギルド証を使い分けてください。ああ、戦士ギルドにはその旨を伝えていますので、特に問題はないかと」

「わかった。ありがとう……で、残る話題は武器について」


 シャンナはコクリと頷きつつ、


「鍛冶の町を訪れたのは武具を手に入れるためだと推測されます。現在ギルドで仕事を請け負っているのは資金稼ぎのためでしょう?」


 ユークは首肯。それでシャンナはとある提案を行う。


「勇者の武具をお二方に渡すの現状では難しいのですが、それに類する武具を手に入れる手段はあります」

「類する……?」

「そもそも勇者の武具を扱うには魔力の適性などを見る必要がある。それを推し量るのに特定の期間、準勇者の武具とでも言うべき物を扱う期間を設けるのです」

「……書物なんかにそういう記述はなかったけど」


 ユークの疑問に対しシャンナは笑みを浮かべ、


「これは国の制度的な問題ですし、読んでいる書物の枠外だったのかもしれません……ユーク殿は本名のギルド証を提示すれば、そうした場所を訪れることができます」

「……そこはどこにあるんだ?」

「複数箇所あります。これがその地図です」


 彼女はギルド証に続き折りたたまれた地図をユークへと差し出した。


「どこを訪れるかはユーク殿の判断に任せましょう……では、私の役目はこれで終わりです。お二方、旅の無事を祈っております」


 一礼し、シャンナはあっさりと退散する。森の中、ユーク達は彼女の後ろ姿が見えなくなるまで、その背中を見つめ続けることとなった。


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