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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第一章

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36/200

大森林

「さすがに、勇者オルトが関係していた組織がどうとか、そういう可能性はないだろう……彼が捕まっている時点で組織側としてはあまり目立たないよう動きたいはず。そんな中で国をまたいで誰かがやってくる。その上で活動をするとか……いくらなんでも怪しすぎる」

「偶然このタイミングでやってきてしまった、という感じでしょうか」

「それが答えじゃないかな……単純に武器を求めてここに来たんだろう。まあタイミングは悪すぎると思うけど」


 ユークのコメントにアンジェは「そうですね」と応じながら苦笑した。


「……彼女が何者かはわかりませんでしたが、害はなさそうなので放っておきましょうか」

「それが無難だな……で、戦士ギルドへ行ったついでに仕事を確認してきて、調査依頼を受けたわけだけど」


 話を変えるユーク。それに対しアンジェは首肯し、


「はい、ここから東にある森……ですね」

「ディリウス王国内でも一番の規模を持つ大森林だ。国境もその森中にある川で区切られているんだから、広大さがわかるな」

「調査範囲は国境まで、とのことですが……」

「魔物の調査とはいえ、範囲が無駄に広すぎる……とりあえず調べられる範囲でいい、という話だったけど……」


 ユークは語りながら仕事を請けた際のことを思い出す。

 あくまで調査依頼なので魔物と遭遇しても戦う必要はないのだが――ギルドの人間は「危険だと判断したら即逃げるように」という内容を二度ほど語った。ずいぶんと念押しをするな、と気になってしまったのだが、


「仕事を引き受けた時のギルド側の人……なんか様子が変だったよな?」

「はい、といっても大森林がとにかく危険だ、みたいな話は出てこないですし……」

「騒動があったけど、それが知られていないということか……?」


 何にでも勇者オルト関連と決めつけるのは良くないが、とユークは内心で思いつつ、


「とりあえず、警戒する必要はありそうだな……というわけで、明日から活動開始だ」

「はい」


 返事をしたアンジェに対し、ユークは小さく頷いた。






 翌日、ユーク達は早朝から行動を開始した。地図で場所を確認し、人通りが少ない大通りを抜けて街道に出る。

 しばらくは道を進んでいたが、やがて草原が見え遠くに森――それが、目指している大森林、シュバーレイドと呼ばれる地名の森である。


「森に入る前に索敵をするよ」

「わかりました」


 ――ユークとしては、森の外側で魔物の動きを観測できればそれで終わらせることも考えた。仕事を請けた際のギルド側の反応が気にはなったが、わざわざ首を突っ込まなくてもいい案件である気もしている。


(仕事が終わった後、改めて調べるという手もあるけど……)


 とはいえそれはタダ働きなので、資金が必要な今はやりたくない――


(なんというか、お金を求める方に思考が進んでしまっているな……旅をしている以上は仕方がないけど)


 まあお金の計算などは生活に必要だし、今のうちに色々学んでおくか――と心の中で呟きつつユークは、森の手前に到達した。


「作業を始めるから周囲を見ていてくれ」

「はい……とはいえ、森の入口付近は平和そのものですね」


 魔物的な気配は一切無く、動物の気配はそこかしこに感じ取れる。


 ユーク自身、この森に漆黒の魔物がいる可能性は低い、と考えていた。理由としては、


(大森林であり、悪さができる環境ではあるけど……町から近いからな)


 ユーク達が拠点としたレイテオン以外に、大森林の周囲にはいくつも町が存在する。なおかつ国境を越えた先にも町が点在しており、森の中も狩人を始めそれなりに人が入り込む。

 つまり、ユーク達が漆黒の魔物と遭遇した山岳地帯や渓谷と比べ、人の目が多い。そのため、こんな場所で組織も活動しないだろ、というのがユークの見解であった。


(ただ、ギルド側の説明からすると、何かがあるのは間違いないだろうな……でも、何かがあったとしても組織と結びついているかどうかなんて、確かめようがないしなあ)


 色々と思考をする間にユークは魔法を起動する。索敵によって大森林の中を調べ、魔物などがいないかを確認し――


「……アンジェ」

「はい」

「人がいるな」


 そうユークが言うと、アンジェは首を傾げ、


「森に入って薬草などを採取する人はいるでしょうし、それほどおかしなことはないのでは?」

「いやまあ、そうなんだけど……なんか、変な気配なんだよ」

「変な気配?」

「明らかに殺気というか、戦意があるというか……もしかして俺達以外にも調査依頼を請けた人がいて、魔物を探しているとか?」

「可能性はありますが……ちなみにどのような気配なのか、わかりますか?」

「うーん……二人組っぽいんだけど……」


 調べるべきか、関わり合いにならないようにすべきか――ユークが悩み始めた時、気配に新たな動きがあった。


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