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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第三章

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180/200

金色

 ユークがシャンナへ報告へ赴いた時、既に彼女は情報をキャッチしており部下に指示を出していた。場所は戦士院の中に存在する彼女の執務室。幾度か交流している間にこの部屋を訪れたことがあり、ユークは何の障害もなく今日も部屋に入ることができた。

 その中でもユークが来たことで彼女は応対する。何かしら情報を持っているだろう、という思惑からだとユークも推察でき、


「魔物が動き出したきっかけだけど……」


 索敵魔法で観測したことを伝える。


「以前、顔を合わせたデレンド=シュバーザという人の魔力を感じた」

「シュバーザ家ですか……国の中枢にも入り込んでいる大物ですね。ただ、今はひとまず魔物の対処です」

「状況は……」

「魔物が森から出現したことで王都へ至る街道に混乱が生じています。ただ、すぐさま避難誘導を始めたので一般の方々に被害は出ていません」

「それは良かった」

「現在騎士団と勇者達が戦闘準備を始めています。そして森から出現した魔物は人型……ただ、これまで観測していなかった魔物がいます」

「それは?」


 聞き返したユークにシャンナは少し間を置き、


「色で言うと金色です」

「金……」

「他の人型と比べて大きい。見た目から鈍重というイメージを与えてくるような魔物です。それと、避難している間に魔物の特性についても観測できました。魔物に近しい場所に商人が複数人いて、慌てて避難し始めたのですが……彼らが所持していた武具から魔力を吸収していたようです」

「武具から……?」

「これはあくまで推測ですが、金属や鉱物から魔力を取り込むのではないでしょうか」


 なるほどとユークは思う。


「金属などと親和性が高いのであれば、鈍重かつ強固な体躯を持っていることはある程度想像できます。非常に厄介であり、相応の攻撃能力が必要になるでしょう」

「他の魔物は?」

「紅の魔物はいますが、漆黒や純白はいません。他は人の形を成してはいますが、魔力量は少ないように見受けられる……おそらく、色つきの魔物と違い何の特性も持たないような魔物なのでしょう」

「……たぶんデレンドは魔物の実験をしていたんだと思う」

「ならば、色つきのなり損ないということで説明はつきますね」

「問題はデレンドについてだけど」

「ここまで騒動を引き起こした以上、なんとしても追い込んでみせます」


 シャンナの目には明らかな怒りがあった。それを見てユークは彼女ならデレンドを牢屋に入れるまで戦うだろうと確信できたため、


「俺は政治的な力はまったくない……大変だろうけど、シャンナさんに任せるしかない」

「ええ、その辺りはおまかせください……あなたはどうしますか?」

「もちろん、迎撃に向かう」


 決然としたユークの言葉に、シャンナは頷いた。


「わかりました、お願いします。既に勇者ルヴェルなどは動いています。彼と合流し、街道に出てきた魔物を討伐してください――」






 ユークが急ぎ王都を出て現場へ向かっていると、その途中でルヴェルとその仲間達と合流した。


「予想外の展開だな」

「敵側もさすがにこの事態は予期していなかったと思うよ……これは俺の予想なんだけど」


 と、ユークはルヴェルへ語り出す。


「デレンドは『混沌の主』に由来する魔物を一度なくそうと思ったんじゃないかな」

「今までの研究が恐ろしいものだったことから、一度リセットしようとした、と?」

「たぶん。デレンドが組織に所属していてどういう風に考えていたのかわからないけど、少なくとも『混沌の主』なんてものに手を出していた、というのは汚点だと考えたんだ」

「ま、一度手放そうって気になるのもおかしくはないな。ただ、タイミングは遅すぎたか」

「そうだね」

「……君と俺がやったことがきっかけだとするなら、ちゃんと自分達の手で解決したいところだな」

「さすがに俺達の責任だ、なんて言われるのは心外だけどね」


 ユークが肩をすくめる間に、街道から王都へ向け突き進んでくる魔物の群れを発見する。


「……あれか」


 そしてユークは金色の魔物を捉える。他の人型と比べても大柄な体格を持ち、まとう魔力も漆黒や純白と遜色がない。

 ただ、見た目通り鈍重といった様子であり、対処を誤らなければそれらと比べて対処は難しくないだろう、とユークは思う。


「新しい魔物だな」


 と、ルヴェルは金色の魔物に対し言及。


「見たところ防御能力が高い個体といったところか?」

「たぶんそうだ。シャンナさんから聞いた情報によると、金属などから魔力を得るらしい」

「固そうに見えるのはその辺りが関係しているのかもしれないな……数が合計で五体か。紅の魔物もいるし、鈍重とはいえ相手にするのは面倒そうだ」


 会話をする間に、ユークは魔物の群れに背後から迫る一団を発見。それは騎士達であり、馬を駆り突撃を試みようとしていた。


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