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最善策

 ユークは情報を得た後に眠り、翌朝になって情報をまとめた。デレンドが手にした資料については組織の面々に関する詳細だけでなく、組織に属する拠点や施設に関してもあった。


(シャンナさんの姉がいる場所についても書かれていたし、この情報を国へ渡せば一気に決着をつけられる……組織壊滅の可能性は大きく高まった……ただ)


 ユークは考える。多くの情報を手にした。しかしデレンドが組織の人間だと明かせば、組織側も相応の動きをとるに違いなく、拠点を抑えて構成員を捕縛する、というのは難しくなるかもしれない。


(色々とやり方を工夫しないといけない……可能であれば敵が拠点にいるところを見計らって捕縛したいところだけど)


 シャンナの姉については記載されていたが、他国にある施設や山奥に存在する拠点もあるため、全てを調べるには時間が必要となるし、各拠点を一斉に捜索する、というのはいかにディリウス王国でも極めて困難であることは予想される。


 そして、


(デレンドという人物が組織の幹部であり、密かに反旗を翻そうと動いているのはわかった……その上、彼は一ヶ月後には行動しようとしている)


 もし組織に対し仕掛けるならばそれほど時間はない――さてどうするか、とユークは思案する。


(デレンドを捕まえることはそう難しくない……使い魔は屋敷にいるし、資料をかすめ取ってそれを証拠にすれば捕縛まで事が進むだろう。ただ、シャンナさんの姉が絶対に出てこなくなるだろう)


 彼女を捕まえなければ、事件はおそらく解決しない。それに、彼女が扱っている力が『混沌の主』由来のものであれば、放置すればどんなことになるのか――


「……相談、するしかないか」


 ユークはひとまずルヴェルやシャンナに話そうかと考える――が、両者が動けば当然組織も反応する。


(うーん……あまり時間はないけど、ここで大きな動きがあればデレンド達だって怪しむだろうな……難しいところだ)


 ユークはどう動くか迷う。核心的な情報を得てしまった段階であるため、ここから先に動き出せば間違いなく組織側も何かしらアクションを起こす。それによってはユークにとって状況が悪くなる危険性すらある。

 かといってただ待つ――あるいは迷っていればデレンドが動き出す。現在彼は何かの準備をしている。実験も継続しており、それが果たされればどうなるのか。


(……デレンドが独自に動くのであれば、組織側はそれを利用し実は存続していたが今度こそ崩壊した、という演出で切り抜ける可能性が高い)


 組織の中核を全て抑え込むにはどうすればいいか――


(……ただ、その中で一つ気になることがある)


 ユークは思う。シャンナの姉は『混沌の主』を利用しようとしている可能性がある。


(でも、勇者オルトや勇者ロランはそれを認めていたのか?)


 勇者の指導者のこともある。果たして彼らは『混沌の主』の力を使っていることを踏まえているのかどうか。


「……力の源泉がどこにあるのか。それを公にして、反応を窺ってみるのも手か」


 ユークは考える。もし、彼らが何も知らない中で組織に協力していたのであれば、風向きが変わる可能性もある。


(もし力の正体を公にして、組織幹部が動揺し始めたのであれば……デレンドやオガスが動揺したのであれば、そこで情報を持っているとして捕まえて、事情を吐かせる……組織は一気に瓦解し始めるかもしれない)


「外部から干渉するより、内部から壊した方がいいかもしれないな」


 それこそ、最善策――とはいえ、混沌の主の力であると理解した上で加担していたとしたら、状況は変わらない。


「リスクのある動きをするよりも分の良い賭けであるのは間違いないか……とはいえ、果たして『混沌の主』による力なのか。まずはそこから確認しないといけないな」


 ユークは決断し、動き始める。屋敷を出てまずはルヴェルの所へと向かう。


(ルヴェルさんには『混沌の主』が持つ力かもしれないと伝えてあるし、手は貸してくれるはずだ)


 ではどうやって証明するのか――既にユークの頭の中にはプランがあった。


「でもここについては人員が必要だし、動きが捕捉される可能性は高い。その上、証明できるものがあるのかどうかも賭けではある」


 ただ、とユークは思う。組織と戦ってきたユークは、魔物が保有している力がどういったものなのか調べることに違和感は持たれないだろうと考える。よって、少しくらい目立った動きをしても問題はないと断じた。


「可能な限り多くの人を巻き込むべきだな……デレンドが動き出すまで残り一ヶ月。それまでに勝負を決め、力の正体について公にする」


 ユークはそう呟き、歩調を速めて酒場へと向かった。


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