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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第三章

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密談

「それで、君の方はどうなんだ?」


 ユークが聞き耳を立てている中、デレンドの通信魔法越しの相手との話し合いは続く。


「そちらも作業を続けているか?」

『ああ、問題ない。いずれ具体的な成果が表れてくる……そうだな、一ヶ月ほどか。しかし、本当にいいのか?』

「何がだ?」

『俺はデレンドから話を聞いて今回の作戦に加担している。そしてそれは、組織のやり方とは合致していない』


(……合致、していない?)


 ユークは内心で呟く。その間も会話は続く。


『これは明確に、反旗を翻しているということにならないか?』

「ああ、そういう解釈でも構わないさ」


 そしてデレンドの返答は明瞭なものであった。


「今回の一件、多数の工作者を斬り捨て静観する構えをとった。勇者ユークの出現がその要因となるわけだが、それにしてもずいぶんと消極的な動きだ」

『それに納得がいかないのか?』

「一度顔を合わせ話はしたさ。無論、勇者ユークの行動によって組織が表沙汰になってしまうという懸念はあったし、多くの人員を費やして組織を守ったのは事実だ。しかし、そのやり方はひどく強引であり、私が動かしていた人間も巻き添えを食らった」

『……なるほど、意思疎通はできていなかったのか』

「そうだ。結果的に私は組織の中で立場も悪くした……他の者達は様子を見るつもりのようだが、逆に言えばここが好機だ」

『組織内で地位を高めるために、か』

「ああ、魔物を生成し、成果を上げれば私が組織の主導的な立場をとることができる」

『そうまでして組織のトップに立つことに意味はあるのか?』

「単純に金銭的なものが目的であるなら、ここまで資源を費やす必要はないな……だが」


 沈黙が生じた。ユークは使い魔を介し耳を澄ませる。

 やがて、


『……力か』

「そうだ。組織にしかない力。それを手にすれば……あらゆる望みが叶うだろう」

『この国を乗っ取って王にでもなるつもりか?』

「それも良いかもしれんな」


 あっさりと返答したデレンドに対し相手は沈黙。


「……冗談だ。さて、報告はこれまでとしよう。ああ、それともう一つ――」

『頼まれ事なら、いつもの場所に資料を置いた』

「ああ、それならいい……どれだけ調べることができた?」

『現在幹部となっている面子はほとんど調べることができた』

「それだけ聞ければ十分だ」

『組織の面々についても調査するとは、抜かりがないな』

「主導権を握るためには、色々な方法がある……選択肢は多く持っておかなければならないだろう?」

『その行動力には驚かされるよ。それでは、報告は終わりだ。次はいつにする?』

「そちらの準備が完了次第で構わないぞ」

『ならば一ヶ月後だな……それまでには良い報告ができるよう作業を進めておく』


 ――報告が終わった。一時沈黙が生じた後、部屋の中で物音がした。


「さて、確認しておくか」


 デレンドは動き出す。部屋の扉が開き、ユークは目立たないよう使い魔を廊下の隅へ。

 見つかることなくデレンドは廊下を歩んでいく。手には魔法の明かりが灯ったカンテラを持ち、迷うことなく屋敷の廊下を進む。


 ユークは慎重に使い魔を操作して後を追う。程なくして辿り着いたのは庭園。深夜の庭園だが月明かりによってほんのわずかだが植えられた木々の輪郭が見える。

 その中でデレンドは茂みに入った。そしていくらか中で動いた後、出てくる。手には資料らしき物が握られていた。


(……さっきの話通りなら、あの資料は組織幹部の情報が記載されている)


 ユークはあれこそ組織を壊滅させるために重要な資料だと判断する。現在操作している使い魔であれば、資料を持ってくることは可能。だが、さすがに重要情報が記載されている資料を机の上に置きっぱなしにするようなことはしないだろう。


(盗み見て、どういう人物が記載されているかを確認するしかないか)


 もし組織の場所などが記載されているとしたら、状況を一気に進展させることができる――デレンドは資料を手に部屋へと戻っていく。そこでユークは密かに彼の部屋へ使い魔を侵入させた。

 デレンドは椅子に座り、魔法の明かりを利用して資料を読み始める。といっても時間にして五分程度。資料を一通り確認した後、金庫らしき重厚な箱の中へしまった。


(……しめた)


 ユークは胸中で呟く。やがてデレンドは明かりを消してベッドへ入る。それを見計らいユークは使い魔を操作して金庫近くへ。

 当然ながら開けることはできない――しかし、使い魔である以上は隙間を縫って中へ侵入できる。


(金庫の中に仕掛けはないだろうから、中へ入り込めばいくらでも資料を確認できるはずだ)


 そして使い魔は金庫の中へ侵入を果たす。暗視の魔法によって内部構造は確認でき、デレンドが先ほどしまった資料も発見した。


「……よし、まずは確認だ」


 ユークは一つ呟いた後、使い魔を通して資料の確認を始めたのだった。


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