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深夜の調査

 デレンドの屋敷を訪れた夜、ユークは一人作業を開始する。明かりも付けず、あえて眠っているフリをしつつ、仕込んだ使い魔の視界を共有する。

 眠ったフリをするのは、ユークは基本規則正しい生活を繰り返しているため、デュラに怪しまれないようにだが――魔法の実験をする、くらいのことを言っておけば良かったかもしれない。


 ユークは意識を集中させて少し経った後、使い魔を通してデレンドの屋敷を見ることができた。現在地は訪れた研究室。広い空間には誰もおらず、明かり一つついていない。


「夜通し研究しているのかと思ったら、そうではないか」


 ユークは一つ呟きつつ使い魔を操る。遠隔操作である以上は多少なりとも魔力を消費し、それが使い魔から発せられてしまうのだが、可能な限り対策はしているためおそらく大丈夫だろうとユークは思う。


「ま、バレても使い魔を消せば痕跡は残らないからな……」


 ユークは音を立てないよう慎重に使い魔を操作する。明かりが一切無い漆黒の空間だが、これも想定済みで使い魔には暗視の魔法を仕込んでいる。

 よってユークは使い魔の視線を通して研究室内を見渡すことができる――使い魔は机の上を歩く。資料などが置きっぱなしになっており、使い魔を通して詳細を確認することはできる。


「ふむ……資料自体は怪しいものではないか」


 デレンドが屋敷内で行っている研究内容そのものは、取り立てて変なものではなかった。しかしこの場所で組織にまつわる何かをやっていたとしたら、その資料を見つければ――


「けど、資料を見つけただけじゃ駄目か……組織とやりとりをしている手紙とかあればいいんだけど、さすがにそんな証拠は残さないか」


 そうユークは口にしつつも、あり得ない話ではないと考えた。よってユークは研究室内を使い魔によって見ていくが、それらしい物はない。


「この場所ではなく、デレンドの私室とか……かな?」


 ユークは研究室内を一通り確認した後、移動することに。


「廊下を移動して怪しまれないかが問題だけど……」


 ユークは扉の隙間に使い魔を入り込ませる。ネズミのような見た目だが、姿形は変えることができる。

 廊下へ移動し、ユークは屋敷の中を進んでいく。そこで周囲に魔力が存在しないことを確認。


「監視魔法は起動していない……まあ、深夜の時間帯にわざわざ屋敷を見ている人間はいないか」


 セキュリティそのものは万全のはずであり、外から屋敷の中へ入ってくるようならすぐに気付く算段にはなっているはず。しかし元々内側にいたのであれば、気付かれずに動ける。

 これが人くらいの大きさであれば話は別だったかもしれないが、使い魔であれば無人の野を進むように動くことができる。


「問題は、デレンドの私室がどこなのか、だけど……」


 ユークは屋敷内を色々案内される間にある程度場所にあたりはつけていた。とはいえそれが正解かどうかはわからないため、ここからは運も絡んでくる。

 最大の懸念としては使い魔の稼働時間。仕込んだ魔力によって動き回っている使い魔だが、それが途切れれば虚空に消える。証拠は残らないため問題はないのだが、使い魔が力尽きる前に情報を得たい。


「一応、別個体もいるからなんとかなるかもしれないけど……と、待った」


 使い魔は立ち止まる。音のない廊下――だったが、どこからか人の声が聞こえた。

 それは人間の耳では知覚できないレベルの音。けれど使い魔は視覚や聴覚を鋭敏にしているため、気付くことができた。


「……行ってみよう」


 そちらはデレンドの私室があるかもしれない、と推測した方向。ユークは決断し使い魔を動かす。

 やがて――声が少しずつ明瞭となってくる。仮にユーク自身がこの場にいても気付かないレベルのものであり、廊下ではなく部屋の中で誰かと話している。


 人であれば聞き耳を立てればもしかすると会話が聞こえるかもしれない程度のものだが、使い魔ならば――ここで声がする部屋に到達。中で、ユークの耳に声が聞こえた。


「――ああ、現状で実験は上手く進んでいるぞ」


 それは紛れもなくデレンドの声。大当たりだとユークは思いつつ、彼は通信魔法か何かで誰かと話しているのだと推測する。


「魔物の生成速度は増し、新たな魔物も制作した……ああ、気取られてはいない。何かあれば報告はするが」


(……会話の相手は誰だ?)


 ユークは疑問に思いつつ会話を聞き続ける。すると、


『――ここからさらに実験を加速させる場合、バレることなく対処できるか?』


 通信魔法によってややくぐもった男の声。ユークにとっては聞き覚えがばう。


「ああ、そこについては問題ないだろう……と、そういえば勇者ユークと顔を合わせた」

『危険では?』

「動向を探るのは必要だろう。ひとまず、組織は壊滅したと思い込んでいるようだ」


(怪しまれてはいないな)


 その点について、ユークは内心で安堵した。


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