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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第三章

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155/200

別のこと

 シャンナからの手紙を読んだ後、ユークは一度ルヴェルと顔を合わせ内容を報告。彼の方も「色々と調べている」と言い、


「ま、時間は掛かる。情報を得るまで、しばらく情報収集に専念だな」


 それにユークは同意し――結果として、組織に関してやることはなくなってしまった。


「俺が下手に動くとそれはそれで面倒だろうし……ま、いいや。まだまだやることはある」


 というわけでユークは、別にことをしようと決断。その翌日、朝食後にはデュラにその旨を告げ、色々と動くと宣言した。


「何をするのか決まっているのかい?」


 デュラの問い掛けにユークは小さく頷き、


「とりあえず図書館に行こうかと」

「図書館?」

「王都には国内で随一の蔵書数を誇る図書館があるでしょう?」

「そうだね」

「まだ見ぬ魔法関連の書物とかあるだろうし、調べてみるのもいいかなと」


 その言葉にデュラは感心したように、


「わかった。そういう風に動くと陛下にも報告しておくよ」

「はい」


 というわけで、ユークは屋敷を出て図書館へと向かった。






 国立の王都図書館は、膨大な蔵書数もあって建物自体も相応に大きい。また、多数の人が図書館へ入る様子があり、混雑具合にユークは驚いた。


「さすがだな」


 そんな感想と共にユークは建物の中へ。受付を済ませてまずは図書館内を動き回る。目当ては魔法関連の書物だが、他にどんな物があるのかと、好奇心によって目を輝かせながら見て回る。

 様々な学問書や論文が図書館には多数存在していた。ユークはその中で歴史に関する書物を手に取ってパラパラと読んでみる。


「……これは王都の歴史に関するものか」


 どういう経緯でこの場所に都が生まれたのか――ここで当面暮らすのだから、こういうことを調べてみるのも面白いかな、などとユークは感じつつ魔法関連の書物がある方向へ足を進める。

 程なくしてユークは目的地へ到達。そこには朝だというのに研究者を示す藍色のローブを着用した人物が複数人いた。


(研究機関の人かな?)


 王都には学園以外に研究機関も存在している。そういう人が調べ物にやってきた、という風に考えてよさそうだった。

 彼らはユークを一瞥したが、特段興味もなさそうに目を背けて書物に没頭する。そんな様子を見て誰かに声を掛けられることもないだろうと考え、


(今日一日は、集中して調べるか)


 ユークは内心でちょっとワクワクしつつ、手近にあった本棚へ近寄り、いくつかの本を手に取った。






 ――そして、次にユークが我に返った時は、昼を回っていた。


「……お腹がすいたな」


 家出をする前もそうだったが、ユークは時折集中しすぎで食事すらとらないようなケースがあった。そんな姿を見て周りの人達は感心しきりだったのだが、さすがに朝から晩までやり続けるのはよくないとして、強制的に食事をとらされたりもした。


「とりあえず、街へ出て何か食べようか」


 懐に財布を持参しているので、今日の昼はどこか――そう思いつつ本棚に本を返却していると、


「――おい、何だよその目は」


 敵意に満ちた声が聞こえてきた。何だとユークは目を向けると、ローブ姿の男性二人がいがみ合っていた。位置的にはユークは二人の横をとる形。


「何か文句があるのなら、相手になるぞ」


 体格的に大柄の男性が、小柄な男性に話し掛けている。小柄な男性は何も言わず――否、何も言えずただ立ち尽くすのみ。


「俺の物言いが気に入らなかったと? 研究内容に言及しただけだろう」

「……ほとんど、言いがかりに近いものだったじゃないか」


 どうにか口を開いた小柄な男性。すると、


「はっ、研究内容そのものに色々とあるんだから言及の一つもするだろ。あれだろ? お前って確か教授の子息だったか。役に立たない研究テーマを引き継いで色々頑張ろうとしているんだろ?」

「それは……」

「で、その目はなんだよ。言い分くらいは聞いてやるぞ」


(横柄な人だな)


 ユークはそんな感想を述べつつも、どうしようか考える。

 助け船を出すのは容易い。ただ問題は、見た目上大柄な男性が悪役に見えるのだが、実際はどうなのか。


(でもまあ、色々と周囲の迷惑になりそうな気もするし……)


 それに、ここで騒動があって今いるエリアが一時的に立入禁止とかになったら面倒だ。まあ、単なる喧嘩なので考えすぎかもしれないとユークは思ったが、

 その時だった。大柄な男性がユークの視線に勘づいたか首を向けた。途端に視線を重ねるユークと男性。


「……何だよ」


 そしてなおも強い口調。さすがにこれは見過ごせないか、とユークは思いつつ、


「図書館内では静かにできませんか?」


 その言葉と共に、ほんの少しだけ魔力を流した。それは勇者や戦士にとってはさしたる影響はないが――学者相手だと話は別だった。

 相手は威圧されたと感じたらしい。ユークの見た目は冒険者の時と同じ格好であるため、冒険者に因縁を付けられた、と考えたようで、


「……ふ、ふん。じゃあな」


 一方的に話を切り上げ、大柄な男性は足早に去って行った。


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