表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/200

従者と試練

「というわけでまず、宿へ戻ろう」


 闇夜の平原でパーティーが結成された直後、ユークは従者となったアンジェへそう発言した。


「確認だけど、派遣されたのは君だけだな?」

「はい、ユーク様が警戒するだろうと判断し……」

「俺の従者になること、それ以外に何か指示は?」

「状況を報告をしてほしいと」


(さすがに報告もなしに派遣はしないか)


 ユークは心の中で呟きつつ、


「わかった……が、報告書については検分させてもらいたいんだけど」

「検分、ですか?」

「君はたぶん、俺と旅をする出来事を記録していくだろうけど、俺としては流して欲しくない情報があるかもしれないし」


 アンジェの表情が強ばる。それと共にどういうことなのか、という疑問に満ちた表情。よってユークは、


「魔の気配……それについてなんだが、このディリウス王国内に存在しているのは観測した。でも現在は、それを捉えられていない」

「それは、潜伏している?」

「あるいは、国外に出たか……どちらにせよ、きちんと調べないといけない。もちろん、俺なりに色々な可能性を考えているわけだけど……だからこそ、この情報は伝えるとまずいかもしれない、と思うパターンが出てくると思う」

「なるほど」


 アンジェはあっさりと納得する。すごく真面目で、ユークのことを信頼しきっている様子だ。


(どういう説明を受けてここに来たのだろう……)


 その辺りも確認しなければならないか、と思いつつユークは彼女へさらに語る。


「納得はしてくれたみたいだから、話を進めよう。現在俺は戦士ギルドに所属する旅人という立ち位置だ。君は俺についてくる従者という立場でいいか?」

「はい、問題ありません」

「なんと呼べばいい?」

「私は従者ですので、何なりと。あ、ただエインディットの名を告げるのは好ましくないですね」

「何でご令嬢がここにいるのか、という話になるからな……名前で呼ばせてもらうけど」

「はい」


 どこか嬉しそうなアンジェ。ユークは一度頭をかきつつ、


「あとは、そうだな……明日仕事を引き受けようかと思うけど、一度君の実力を確認させてもらいたい」


 その要求についてはどうやら予想していたらしく――アンジェはすんなり頷いた。


「どのような試練でも構いません」

「試練って……まあいいや、町へ戻り今日は休む。行動は明日からだ」


 首肯するアンジェ。そしてユーク達は、ゆっくりとした足取りで町へ戻ることとなった。






 ユークは宿泊していたのとは別の宿に入り、そこで一泊。翌日、支度を済ませた後宿を出て、ギルドへと向かう。


「そういえば」


 道中、アンジェはユークへと話し掛けた。


「戦士ギルドで登録はされているんですね……その情報があれば足取りを追うこともできたと」

「登録者名は偽名だぞ」

「偽名ですか?」

「ああ、ついでに言うと旅を始める前に登録していた」


 アンジェは淡々とユークの言葉を聞く――これがどういう意味を持つのか、理解していない様子。


「そこについては色々考えあってのことだから、報告書には記載しないように頼むよ。ま、いずれ是正するつもりだ。場合によって……国やギルドに頼っても問題ないと判断したら、対応を変えるよ」

「わかりました」


 あっさりとアンジェは了承。ユークは全面的に信用されているなあと思っているとギルドに到着。建物の中に入り仕事を探す。

 といっても、今回は少し趣が違う――室内には多くの人がいた。先日魔物の討伐があったので、仕事がないかと探しに来ているのだろう。


 ユークは依頼内容が貼り出された掲示板へ目を移す。そこには以前と比べずいぶんと多くの仕事がある――内容は主に魔物に関する調査。つまり、以前発生した魔物の出所がどこなのか、あるいは他に魔物がいないか確認をする、といった仕事である。

 いつもであればそうした依頼の内、一つを手に取って請け負うのだが今回は違っていた。ユークが目指したのは仕事がある掲示板の横。そこには、


「……それは、賞金首ですか?」

「ああ」


 いくつか手に取る――賞金首、とは端的に言えば国や戦士ギルドが脅威と認めた存在のこと。指名手配犯であったり、あるいは凶悪な魔物であったり――それを倒せば一定の報酬が得られる、というわけだ。

 ユークはいくつか紙を確認した後、一枚手に取った。触れた瞬間、淡い魔力が漏れる。紙自体に魔力が注がれており、この魔力を用いて魔物や指名手配犯を探してくれ、というわけだ。


 そして報酬の支払いは――ユークはギルド証を取り出す。手のひらに乗る程度の大きさを持つカードであり、賞金首の詳細が書かれた紙に触れると、その魔力がカードに移動した。


「それじゃあ、行くか」

「……魔物を発見し討伐したら、カードをかざして魔力を照合すれば依頼達成と認められる、でしたっけ?」

「戦士ギルドに関する情報もバッチリみたいだな……行きがけに今回の相手を説明しよう」

「魔物みたいですが、それを討伐することが試練?」

「道すがらそこについても話すよ」


 ユークは紙を戻し、アンジェと共に外へ出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ