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再認識

 謁見をする際に、ユークは勇者ロランが保有していた魔力と同質の力を、あの場における国の重臣に感じた。とはいえ顔は憶えたが残念ながら名前まではわからない。


(人の顔と名前を一致させないことには調べられないので、まずはそこからか……)


 ユークが思考する間に屋敷内を一通り見終わり、デュラは今日の食事の時間を告げて立ち去った。

 ここでユークは部屋へ戻りひとまず今後の算段を考える。


 デュラはアンジェに対し「いつでも遊びに来ていい」と述べたため、少なくともデュラの存在によってアンジェが顔を合わせられなくなる――という事態にはならない。

 もっともアンジェの家側がユークを遠ざけるような動きをすれば、下手すると来ないなんて可能性もゼロではない。


「ま、ひとまず様子見かな……」


 ユークは一つ呟きつつ今後の方針を改めて考える。謁見の時に怪しい存在は見つけた。そこから発展して現在の組織のことを把握し、一気に倒すというのが基本的な流れとなる。

 ただ組織を打倒するにしても弊害はあった――ユークとアンジェの関係は懸念点の一つではあるが、問題はそれだけではない。


「とにかく、まずは下調べからだな」


 そう呟いてユークは明日どうするかについて決める。


(まず、俺は王都のことをほとんど知らない。町を見て回り、脱出するための情報を集めておく。他は……)


 と、色々と考える間に時間は過ぎていく。気付けば夕刻となり食事の時間に。

 ユークは最初デュラと食事をするのかと思ったが、彼は夕方にも関わらず屋敷を出ており、一人で食べることに。


(その内顔を合わせて食事をすることになるだろう……)


 そんな風に考えながら早々に食事を終えてユークは部屋へ戻る。そして眠る準備を始めた。


「しかし、やることが多いな……とはいえ、時間的には余裕があるわけだし、ゆっくり一つずつ進めていこう」


 そんな風に結論づけつつ、王都一日目の夜は更けていったのだった――






 翌朝、ユークはひとまず支度を済ませ朝食をとった後、デュラの部屋を訪れまず何をするかを伝えた。


「まずは町を見て回ろうと」

「ああ、それがいい。案内は必要かい?」


 問い掛けにユークは首を左右に振る。


「一人で見て回って、色々調べるのも面白そうだなと」

「そうか……もし何かわからないことがあれば遠慮無く言ってくれ。ああ、ただ私も不在なことも多い。その場合は侍女に伝言を」

「はい」


 ――デュラは自由にさせるという方針なのだとユークは認識する。もしかすると国王からの進言かもしれない。


(下手に干渉されない方が楽でいいけど)


 ユークはそう思いつつ屋敷を出る――目的は町中の様子などを確認し、なおかつ王都の脱出路を確保しておくこと。

 とはいえ、王都は広く一日でそういった場所を見つけることは困難だろう――


(とりあえず午前中見て回る……もちろん、王都の規模を考えれば相応の時間が必要だろうけど……)


 そう思いながらユークは町中を進んでいく。大通りには多数の人が存在し、ユークは旅装姿であるため特に目立ってはいない。


「ただ、俺のことを知っている人がいるかもしれないよな」


 その場合はどうすべきなのか――勇者ロランの一件もあるため、もしかすると敵意を抱いて近づいてくるかもしれないとユークは思い、多少なりとも警戒すべきかと断じる。


(ただ、さすがに何かしら魔法を使うのはまずい。騒動になることは可能な限り避けたいが……)


 考える間にユークは周囲に視線を向ける。大通りには多種多様な商店が並んでいる。そして歩を進める人々へ呼び込みをする人も。

 活気づいているなとユークは認識すると共に、ここでも魔力を探り怪しい人物を捉えていく。さすがに王都を訪れる人の中に組織に関与する人物がいたとしても、それを見つけ出すのは困難ではあるのだが――


「まあ現時点では色々な可能性がある……調べられるだけ調べるとしようか」


 呟きながらユークは進む。とはいえ人の多さから、関係者を見つけ出すのは非常に困難だろうとは思う。


「闇雲に探すだけでは意味がないな……本当なら人数を投入して調査すべきものなんだろうけど」


 しかし、誰も頼ることができない――ユークは改めて戦う敵の面倒さを再認識する。


「逃げられるのが一番最悪だからなあ……と、あれは」


 ふと大通りの一角に目を留める。視線の先にあったのは戦士ギルド。


「一応、あの場所の様子を見てみるか」


 ユークはそう決断してギルドのある方向へ進む。おそらく王都である以上、戦士ギルドも相応の規模なのだろうと予想し、間近で建物が大きいことに気付く。


「さすがは王都だな」


 感心しつつ、ユークは建物の中へと入った。


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