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王都へ

 そしてユーク達は旅を続ける。その目的地は王都であり、アンジェが常日頃行う国への報告でも王都へ向かうという旨を記している。


「道中で迎えが来るかもしれないな」


 そうユークが呟くとアンジェは頷き、


「遭遇した場合、そこで私達の旅は終わりますね」

「ああ……アンジェとしては今回の旅、どうだった?」


 そう問い掛けた後、ユークは頭をかきつつ、


「その、突然指示を受けて俺に同行したわけだけど……」

「良い経験ができたと思います。個人的には有意義な旅だったと感じています」

「そっか」


 ユークは彼女の返答を聞きつつ、目標は達成できたのかと思考する。


(決して長い期間というわけではなかったけれど……十分かな)


 支援役としてしっかり役目を果たし、なおかつユークの従者として国側からも認められたのは間違いない。


(もし王都を出ることがあれば……その際は彼女自身どうするのか……その中で俺は……)


 ユークが内心考えているのを他所に、アンジェはさらに語っていく。


「私としては今回の旅を踏まえ、自分なりに模索し良き勇者となれるよう尽力していきます」

「……わかった」


 ユークはそれ以上語らなかった。それと共に、ユーク自身アンジェに対しどう考えているのかを頭の中で巡らせる。


(パートナーとして上手くやってこれたとは思う。アンジェとしてはまだまだ至らない点があった、と言うかもしれないが従者として完璧だと思ったし、何よりシアラと出会って彼女は成長できた)


 ただ、とユークは思う。彼女の家系は貴族。他の勇者と決定的に違うところはそこだ。


(家に戻されて、今回の旅で得られた経験……それが役立つのだろうか?)


 ただ、いかにユークとしても彼女の家の方針に口だしするわけにもいかない。


(……王都でやるべきことについて、増えたかな)


 とはいえ、彼女に対しできることはそう多くない。勇者ロランを倒すなど、十分な功績を得たのは事実。だが政治的な影響力が皆無である以上、下手にアンジェの家に干渉すると面倒事が起きる可能性が高い。


(本当は情報収集に専念して、戦力は外部……例えば勇者ルヴェルとかに話を向ければいいんだろうけど……)


 彼についても確実に見方であるとは限らない――リスクはあるか、とユークは思う。


(ま、とにかく王都に入ってから立ち回りは考えないといけないな……いくらでも今後の動き方は考えられる。ただ、当初の予定通り学園とかに入学するとなったらそれはとんでもなく面倒だ)


 入学する前に逃げるのも手か、などとユークは考える――ちなみに、別に学校へ行きたくないとわけではない。単純に学園に入るよりも旅がしたいだけである。


(国を壊すような組織について調べているわけだし、まあ旅くらい許してもらうにしても……かといって、真実を伝えて組織を倒すために動くといっても、たぶん認めてはくれないだろうな)


 国側としてはユークのように個人で動くような勇者に色々とやってもらう、というのは望まないはず。そもそもユーク自身、立場としては微妙なものであるし――


(本当、王都へ行くために情報整理をする段階で憂鬱になるな……ある意味、組織を追い掛けるよりも厄介かもしれない)


 ユークはそう考えつつも、情報収集のために虎口へ入るしかないと考える。


(権力なんて持たないけれど勇者ロランを倒したという実績はある……この実力面を利用して色々な人に取り入って調査を進めていく、というのが本筋か)


 問題は味方をどうやってつくるのか。あるいは、誰に真実を打ち明けて協力を仰ぐのか。


(さすがに王様とかだったら大丈夫だよな? いやまあ、最大の問題はどうやって王様に話をするかなんだけど。さすがに二人対面して、なんて展開には絶対にならないからな)


 王へ話すにしても、その側近などにすら事情説明によって話を聞かれたくはないという思いがある――組織がどれほどディリウス王国に情報源を持っているのかわからないが、仮にそういった人間だらけであったのなら――


「ユーク様」


 ふいにアンジェから声が。そこでユークは我に返り、


「ん、どうした?」

「なんだか怖い顔をしていましたが……」

「ああ、ごめん。王都を訪れた時にどういうことになるのか……そしてどういった活動をすべきなのか、色々考えていたんだ」

「様々なことを想定しているようですね」

「まあね……アンジェは実家に戻ったら調査とかするか?」

「家に戻って私がどうなるのか不明ですが、可能な限りユーク様のお力になりたいと思います」

「そうか……ここについては無理するなというのがアドバイスだな。なぜ組織について調べているのか、と問われた時点で面倒になるかもしれないし、やるにしても秘密裏に頼む」

「はい」


 アンジェは気合いの入った返事をする。そんな様子にユークは苦笑したのだった。


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