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喧嘩を売る理由

 その後、ユーク達は勇者ロランと合流した。肩に掛かる程度の黒髪を無造作に束ね、どこか目つきの鋭い戦士……それがロランの見た目。


「……勇者ユークか」


 初対面ではあったが、彼はユーク達のことを認識しているらしい。


「まったく、いつも思うんだが単独行動は勘弁してくれよ」


 ここで勇者ルヴェルが声を上げた。


「今回はシャンナが指揮を執っているし、お前にもしものことがあれば迷惑被るのは彼女だぞ」

「シャンナであれば俺がこう動くことも想定しているだろう」

「お前なあ……」


 呆れたように呟く勇者ルヴェル。


「ま、話はこれくらいにしておくか……森の奥へ進んでみたはいいが、魔物の気配はないな」

「まだ、いるかもしれない」


 けれどユークはそう告げる。


「銀の魔物は他の個体……魔物の気配を薄くすることもできるみたいだし」

「なるほど、そうであればもう少し詳しく調べるべきか……ま、漆黒の魔物が十数体とかいなければ問題はなさそうだけどな」


 ここで勇者ルヴェルは仲間へ指示を出した。


「周辺の索敵を頼む」


 彼の仲間はそれに従い魔法準備を始める。


「さて、とりあえず調査するということにして……ロラン、単独で行動していて気付いたこととかはあるか?」

「一つだけ」


 と、淡々とした口調で勇者ロランは言う。


「魔物の動きはまさしく軍隊のそれだ。間違いなく、誰かが指示を出している」

「ほう、そうか……であるなら、使役する誰かを捕まえないとこの討伐は終わらないな」


 そう告げたルヴェルは一度周囲を見回す。


「かといって、どこかに潜伏しているというわけじゃないだろ?」

「そうだな」

「なら考えられるのは……俺達勇者あるいは騎士の誰かが使役しているといったところか」


 その考察に勇者ジスト、勇者ロラン双方が険しい表情を示した。


「ただ一つ疑問がある。この魔物は最近巷を騒がせていた犯罪組織由来だろ? その組織は壊滅したわけで、何のためにここで魔物を使役して俺達に喧嘩を売っている?」

「可能性は三つだろう」


 と、発言したのは勇者ジスト。


「一つは組織の残党。森にいる魔物を利用し組織そのものを再興しようとしている」

「俺達に喧嘩を売っているのは?」

「言わば対外的なアピール……勇者達を倒せる力を持っているということを示し、他の組織に売り込もうとしたのかもしれん」

「なるほど、一応説明はつくな」

「二つ目は復讐目的。組織の残党で魔物を使役できるわけだが、何かしら特定の狙いがあって騒動を引き起こしている」

「勇者である俺達の中に、復讐しようとしている相手がいると?」

「かもしれん」

「ふうん、まあそういう可能性もゼロじゃないか……三つ目は?」


 勇者ルヴェルの問い掛けに勇者ジストは少しだけ間を置いて、


「まだ組織は存続していて、何かしら目的があって行動している」

「……面倒な可能性だな。ジスト、あんたはどう見ている?」

「組織壊滅のニュースは新聞で見た。情報によれば相当な大物も捕まっているようだから、さすがに組織が存続しているとは考えにくいな」

「ふむ、そうすると組織の残党で、売り込みか復讐?」

「そうだと考える。魔物を使役できている時点で組織の構成員であるのは間違いないだろう……勇者達の中に紛れているというのならどうやって探すかだが……」


 頭をひねる二人。一方で勇者ロランは周囲に警戒の視線を送り他に敵がいないか確認している。


「……ま、とりあえず魔物を全滅させればおとなしくはなるか」


 やがて勇者ルヴェルが口を開いた。


「魔物は面倒な手順を踏んで生み出されるだろ? なら、ここで全滅させておけば同じように魔物が出現する……とはならないはずだ。ジスト、どう思う?」

「ああ、そこは同意する。ひとまずこの場の制圧を優先しよう」


 そうした結論でまとまる……よって索敵の結果を聞いてどう動くか判断することに。

 その間に後方から戦闘音が聞こえてくる。雑兵クラスの魔物が残っていて、交戦しているようだ。


「援護に回るか?」


 音を聞いて勇者ジストが口を開く。それに応じたのは、


「必要ないだろ」


 勇者ルヴェルだ。彼は森のさらに奥を注視しつつ、


「シャンナの指揮もあるし、漆黒の魔物さえどうにかできれば他は対応可能に違いない」

「そうだな……しかし、驚いたな」


 勇者ジストがなぜかユークの方を見て発言した。


「まさか漆黒の魔物を一撃で倒すとは」

「……勇者ジストと勇者ルヴェルが戦っていた個体は強化魔法が使われていた。もし同じように強化されていたら、あんな戦い方はできないよ」

「だとしても、一撃で倒したのは間違いない……それを目撃した勇者も数多い。今後は史上最強……その噂がより広がることになるかもしれんな」


 ――もしそうなったらどうなるか。ユーク自身考える。


(まあ、顔を売って仕事をしやすくするというのは良いか……)


 そんな結論を導き出した時、勇者ルヴェルの仲間が作業を終えたらしく近づいてきた。

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