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森の中の戦い

 新たに発見した銀の魔物――その詳細を勇者シャンナへと報告するべくユーク達は移動を重ねる。ただ、ここに来てあることに気付いた。


「……様子が変だな」


 それは勇者達の同行。森奥へ移動を開始した段階では魔物を殲滅し続けた形だが、現在は守勢に回っている。


「そんなに時間は経過してないんだが……」


 気配を探る。どうやら人型の魔物らしき個体がいる様子。


「アンジェ、少し急ぐぞ」

「わかりました」


 ユーク達は足を速め――やがて原因が判明。


「人型の魔物か……!」


 どうやらユーク達が森の奥へ向かったタイミングで、人型の魔物が動き始めていた。


「どうしますか?」


 アンジェが問う。ユークはその間に戦場の状況を魔力によって探り始める。


 勇者ルヴェルやジストは気配でわかり、彼らは人型の魔物相手に押し返している――そしてどうやら敵は紅の魔物らしい。


「紅……その魔物が青の魔物と一緒に展開しているみたいだな」

「厄介ですね」

「ああ、騎士の剣術を持つ魔物……とはいえ、勇者ルヴェルや勇者ジストには通用しないみたいで、押し込んでいるくらいだ」

「お二方は問題がないと」

「ただ……他の勇者や騎士達は苦戦しているな」


 それと同時にユークは青の魔物による魔物生成の速度が相当なもので、森の中に多数の魔物がいることを認識。


「複数体、青の魔物がいるみたいだな……」

「まずはそこを倒さないと、数が減らないと」

「ああ、森の中だし際限なく生み出している……もちろん、無限に生成できるわけじゃない。でも、戦場を制圧するには十分過ぎる数だ」


 ユークは選択肢が三つ浮かんだ。一つは勇者達に加勢し、魔物を倒していく。二つ目は青の魔物を優先して倒し、状況を改善する。

 三つ目は――これに乗じて怪しい動きをする人間がいないかを確認。そうした考えが浮かんだ時、アンジェもまた同様のことを思ったか、


「ユーク様、怪しい人を探しますか?」

「それも選択肢ではあるけど……いや、青の魔物を倒すべきか。ただまずは、報告だな」

「わかりました」


 彼女が承諾すると同時に、ユーク達は動き出す。周辺の気配を探り、勇者シャンナの所へ向かっていく。

 その道中で騎士や勇者が交戦している姿を確認し、進行方向で戦っている場合はすかさず援護。勇者へ攻撃を仕掛けようとしている魔物を横から吹っ飛ばした。


「……す、すまん、助かった」


 ユークの唐突な援護に驚きつつも勇者は礼を述べた。


「このまま戦線の維持をお願いします」


 ユークは一方的に告げるとアンジェを伴い森の中を進む。その途中で勇者ルヴェルの一団が青の魔物へ近づいていくのに気付いた。


「勇者ルヴェルは青の魔物に狙いを定めたな」

「ならば、そう遠くない内に戦況は良くなると思いますが……」

「紅の魔物と青の魔物だけなら、良くなるとは思う」


 ユークの言葉には含みがあった。アンジェもそれは理解しているようで、


「先ほど見た、銀の魔物ですか」

「ああ、森の奥にいる紅の魔物を強化していた……それを踏まえれば、後続からやってくる個体は同じ見た目をしていても、相応に強くなっているとわかる」


 それによってどれほど影響が出るか――ユークは森奥へ意識を向ける。確実に魔物がやってきている。


「とにかくシャンナさんにまずは知らせないと。急ごう、アンジェ」

「はい」


 そしてユーク達はシャンナの下へ向かう間に幾度となく魔物との戦闘になる。しかしその全てが青の魔物が生み出した個体であり、ユーク達にとっては瞬殺であった。

 その光景を見た勇者や騎士から礼を言われつつ、ユークは一気にシャンナがいる後方へとやってくる。最前線からやってきたユーク達にシャンナは多少驚きつつその様子を見て、


「何かあったようですね」

「新たな魔物が」


 事情を説明するとシャンナは「なるほど」と一言告げ、


「どうやら単純に大量の魔物がいるというわけではない様子……もしかすると、組織の残党が指揮をしているのかもしれません」

「ということは森の奥に敵が?」

「あくまで可能性の話ですが、ここまで大規模に展開していて、魔物だけの仕業である、と断定するのは危険でしょう」


 ユークはその発言に首肯しつつ、


「だとすれば、今後は銀の魔物が……」

「特性から考えれば最前線に出てくる可能性はおそらくないでしょう……逆にその方が厄介ですが。最大の懸念はやはり漆黒と純白の魔物がいるかどうかですが……」


 その時だった。森の奥から今までは感じることが出来なかった魔力――相当に大きい魔力を、ユークは感じ取った。


「……これは」

「本命、かな」


 シャンナが声を上げてから、ユークも呟く。それは感じたことのある気配。漆黒の魔物の登場だった。


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