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2話 神話級魔法

『――ねえ』


「実は担当の子の作業データが消えちゃったみたいで……。しかも、その子も補佐の子も今日に限って病欠。それで……資料だけは残ってるから、明日までにここのコラム、これを頼めないかな? ほら、こういう特集なら得意分野でしょ?」

「明日までって……。俺急かされて仕事するのはちょっと……」

「お願い。もう頼める人いなくて……。仕事に追われずにいつも通りの休憩時間に煙草吸ってるくらい余裕があるのなんて影山君しかいないのよ」


『――ねえってば』


「……分かりました。じゃあその資料見せてもらってもいいですか?」

「ありがとう! この埋め合わせはするから! 今用意するからちょっと待っててね」


『――この私を無視するって言うの? 貴様、いえ、あなたが私を欲したんでしょ? 男ってなんでこうも身勝手なのかしら。そうだ! そんな態度ならあなたの周りにいる人間を――』

ツイスト

『いたたたたたたたたたたっ! 分かった! 分かったからそれ止めて! 折角身体がもとに戻ったばかりなのに!』


 ……。面倒が増えてしまった。

 どうしたものかな。

 いっそのこと殺そうと思って最大火力でスキルを使ってみたけど、痛ぶることはできても殺すまではできないみたいだ。


 今日はまだ仕事も残っているし、休憩はさっき済ませたばかり。

 もしかしてこのスキル、倒した相手全てを……ってことはないよな?


『ねぇ、私お腹空いたんだけど。それに1回命令してくれないと動けなくて……。なんか、遠くにヤバそうなやつらも見えるのよね』


 また敵か。本当に最近は多――


「そうか。そうだよな。折角仲間にしたんだからこの仕事を押し付けちゃえばいいんだよな……」

『? いいから帰還の命令をお願い。そもそも私があなたに命令されるなんて屈辱だけど』

「分かった。それじゃあ、俺の言う通りにしろよ。命令、そいつらを蹴散らして、その後に一度……『俺の家にこい』」

『はぁ? そんなの無理に決まってるでしょ! ちょっと私を捨て駒にする気?』

「以上。反論はするな」


 ふぅ。自分で殺せないなら殺されるのを待つ。

 それに、敵の駆除を任せられるなんて一石二鳥――


「あ、その、えっと……。影山君……。家に来いって……。そんな、いきなり言われても……。今日はその、地味なのしか着けてないんだけど、な」

「え?」


 もしかして聞かれて……た?

 あれ? なんか周りの視線もおかしい。


「お前らなあ……」

「あ、部長! 違うんですよ。今のは、誤解で――」

「16時か。おい! このコラムの仕事は田沼、お前がやれ」

「ええっ! それ受け持ったら俺朝までコースですよ!」

「お前は何度それを影山にやらせた? それと姉崎君、そういえば今月の残業時間が上限近いよね? 今日はもう帰宅していいから。折角の華金だ。影山と一緒に飲みにでも行ってきなさい」


 部長の気遣いに拍手が起こる職場。

 なんですかこれ、めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。


「え、えっと、じゃあお先に失礼します。影山君も帰る準備して」

「は、はい……」


 しかもこれ家に呼ぶ流れ継続してるな。

 今更断るにはいかないが……くそ、あいつのせいで俺の計画がめちゃくちゃじゃないか。


『――た、助けて! 1匹が限界! 3匹は無理! 無理だから!』

「……」


 ――観察眼


 ドラゴニュートの目の前に鳥? 天狗みたいなのが3匹確かにいる。

 いっそこいつらにドラゴニュートが殺されれば、とも思ったが……。


 それよりも、俺の八つ当たりの対象とさせてもらうか。

 ストレス発散の方が今は大事だ。


「1匹だけ残して……」


 とびっきりの魔法をぶち込む。


 ――対象設定……神話級魔法《星光ステラ


『な! なに? 空が急に暗くなって……あれ、隕石……ってレベルの大きさじゃない! それも複数!? だ、駄目! 右も左も! あれ? 私、潰さ、れ……ない? でも目の前のこいつは――』

『ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!』


 対象のいるごくわずかな空間だけを意図的に発生させた星々の衝突に巻き込み、まるで地上で起きた出来事のようにその場に居合わせた者たちの目に映す幻想的な転移系魔法。

 そんな魔法の生み出した一瞬の閃光は命を絶った者の叫びにも見え、美ささえ感じる。


 だがそれはとどのつまり即死。


 これを使うと明日ちょっとだけ二日酔いみたくなるから嫌だったけど、爽快感がたまらなくて……ま、今日くらいは派手にいってもいいよな。


『凄、すぎるわ……』

「じゃあ後は命令通りで」

『……了解』

「命令って……。まぁぐいぐい来てくれるのは嬉しいけど……社内ではあんまり、ね。帰りましょう影山君」


 また聞かれてたか。

 今度は小声にしてたんだけど、《神子》って身体能力とかも飛び抜けてるみたいなんだよな。

 それを本人は至って普通だと思っているくれているのはありがたいことだけど……。


『ドラゴニュートのランクがEからDに上がりました。スキルの選択が可能です』


 ……。テイムでそんなことも出来るようになるのか。

 ただ、スキルの選択……は後でいいや。

 だってモンスターを倒すのなんかと比べ物にならない程大変なことが今起きてるんだから。


 どうしたもんかな。本当に。


「影山君の家って……小学生以来、だね」

「……。そういう話も職場では止めておきましょう」

お読みいただきありがとうございます。


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