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1話 陰で戦う

 ――観察眼。


『だ、駄目です! 迎撃ミサイルでも傷1つありません!』

『くそ! 化け物が! これだから議員連中の給料なんかよりも防衛費を上げろと……』


『あはははははははははははははは! 脆い! 脆いぞ! 人間というなんと貧弱な生き物なのだ! 我は魔界のその一角を収める王! 今日よりこの土地は我が牛耳る! 大人しく降伏し、隠している《神子》を差し出――』


――最上級魔法、流星メテオ


『な、なんだあれは、早く逃げ……ぐっああああああああああああああああ!! 我がこんなに簡単にぃぃぃいいいぃぃぃいぃっ!』

『い、隕石? 隊長! ここは撤退を!』

『わ、分かっている! だが……くそ! これではまた役立たずと罵られるではないか!』


 異物がまた日本に入ってきたから排除。

 今月はこれで10件目。

 ふぅぅ。最近多いな。これじゃあ仕事に支障が出るんだけど……。


「いたいた影山君! ちょっとお願いしたいことがあるんだけど……」


――観察眼解除、っと。


「分かりました。あ、でもこれだけ吸わせてもらってもいいですか? たばこも最近は高いくて……勿体ないので」

「なら頑張って禁煙でもしたらいいんじゃないかな? そうすれば私も仕事的に助かるんだけど」

「……考えておきます」

「それ、絶対しないでしょ。ま、いいわ。終わったら他の人に頼みごとされる前に私のところに来てね」

「りょーかいです」

「……。それと、2人きりの時は敬語じゃなくていいんだからね」

「あー……。でももう慣れちゃいましたから」

「そう……」


 喫煙所から出ていく上司で幼馴染の課長。

 課長、姉崎とは関係を深めるわけにも、俺のこの力をバラすわけにもいかない。

だって万が一彼女が奴らにとって本当に【貴重な存在】だと気付いてしまえば、自分のせいで地球が危機に晒されていてしまっていると、自己嫌悪に陥るだろうから。


 あいつ、強気な年上お姉さんみたいな雰囲気の割にナイーブなところがあるか――


「ねえ、あなたが《神子》でしょ? 流石に不用意過ぎると思ったけど、このビルの周りにあった魔力の残滓があなたから感じる魔力の波長とぴったり一致なのよね。これだけ質の高い魔力を保有しているのは《神子》しか考えられない」


 折角煙草の残りを楽しんでいたっていうのに、今度は別の異物が喫煙所まで……。

 

スキルで感知できていなかった訳じゃないけど……大物を倒してちょっと油断しちゃったか。


「……。すまないけど、うちの会社に部外者が立ち入る際はアポイントメントが必要でさ、話があるならまずは電話。どうしてもって言うなら俺の仕事が終わるまで待ってくれ。今日はまだ急ぎの仕事があるみたいだからさ」

「初めて見たけど、《神子》って言うのは随分と神経が図太いのね。いきなり現れた私に対して、しかもこの半身が竜の私を見てその態度なんて」

「異形の輩は見慣れているからね。それに……あんた程度、どさくさに紛れて侵入してくるような小物は脅威になりえない」

「貴様……。この私を侮辱して――」


――スキル《ツイスト


 触れた物体を遠隔で捻じって捻じって捻じって捻じって……。

 確かこれ、元々は簡単に自由研究の粘土細工を作ろうとしたときに取得したスキルなんだけど……。


「ぐ、あぁ、ぐぁ、あぁぐあっ、きゅっぅ……」

「あんた、粘土以下だね。弱すぎるよ」

「おま、なんあ、そのづよ、さ……。なんで、こごまで《差》がでどぅ」

「そりゃあ俺だけにレベルって概念があるからだよ」

「レ、べる……」

「《神子》……。異界の王、ドラゴン、地底人、宇宙人、古代からの使者……。そんなよくわからない存在たちにとって喉から手が出るほどのエネルギーを内包している俺だけに許された特別なシステムさ。じゃあね、半身竜の美人さん。最上級魔法《強制転移ワープ》」


 たまにはわざと逃がして嘘の情報を流すのも重要。

 そうすれば今度別の奴が現れた際、確実に姉崎に勘付くことなく俺を狙うから。


「はぁ。にしてあいつら、ついでに世界征服なんてしようとしなければいいのに。……。ふぅぅ。本当にすみません日本の防衛の人たち」

「――ちょっとなんか大きな声が、ってなに新しいの吸い始めてるの!?」

「いや、ま、ちょっとストレス過多で……」

「もう! その一本分は私が払うから早く戻ってきて!」


 手を引かれてオフィスに連れ戻される。

 こんな何でもない日常を守るため、俺は明日もこっそり陰で戦うのだった。


「……。なんてね――」

『レベルが9999に上がっています。新しくスキル《生物掌握テイム》を取得しました。ドラゴニュート(女性)の承認を待っています。承認が確認できました』

お読みいただきありがとうございます。


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