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5話:ゴブリン戦

 剣が完成するのは一週間後。

 なので、それまでの間はギルドで依頼を見繕い、王都近辺の魔物を倒すことにした。

 ガルートから予備の剣、とはいっても量産品ではあるが、それを借りている。

 ゼノンは早速ギルドへと赴いていた。

 受付に行くと、丁度カトラがいたのでそちらに並んだ。

 他の受付嬢でも良かったのだが、顔見知りの方が話しやすいからという理由だ。

 別段、カトラに好意があるわけでもない。


「ゼノンさん、父から聞きました」

「作ってくれなかったら困っていたところだ。また安物の剣になるところだったよ。にしてもカトラの親だったとは驚きだ……」

「ははっ……」


 カトラは苦笑いを浮かべる。


「それでゼノンさん、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「そうだった。今日は王都近辺で魔物の討伐依頼に出向こうかと思って。剣ができるまで待っていたら体が訛るからな」

「なるほど。では一度挑戦者(チャレンジャー)カードをお預かりします」


 言われた通り、ゼノンは挑戦者(チャレンジャー)カードをカトラに渡す。

 機器に通し確認する。


「確認しました。攻略階層は【原初の塔】10階層ですね」

「ああ。それとできればだけど、塔の5階層くらいの魔物だとありがたい。少し戦い方を見直したくて」

「分かりました。では少々お待ちください」


 席を離れたカトラは程なくして戻ってきた。

 そして一枚の紙をゼノンに見せる。


「それではゴブリンの討伐などはいかがでしょうか?」


 ゴブリン。人型で大きさは子供程度だが、醜く肌が緑色なのが特徴の魔物だ。

 スライム同様、比較的弱い魔物部類に入る。

 数が多く、毎日討伐依頼が出されている。


「討伐数に制限はありませんが、多く倒していただけた方が当ギルドとしても大いに助かります。最近はゴブリンによる被害が多くなっていますので」

「ならそれを受けるよ」

「ありがとうございます。それは一度挑戦者(チャレンジャー)カードをお預かりします」


 ゼノンは受付を済ませたので準備を整え、王都近郊の森へと向かった。

 ここ、王都の出入りでは通行書となる証明が必要で、ゼノンの場合は挑戦者(チャレンジャー)カードが使用される。

 挑戦者(チャレンジャー)カードには所有者の名前と、塔をどこまで攻略したのかが表記されている。


 王都を出たゼノンが向かったのは、比較的浅い森だった。

 生い茂る木々を通り、ゴブリンを探し歩く。

 歩くことしばし、ゼノンは遠方に魔物の姿を発見した。

 発見した魔物は今回の討伐対象であるゴブリン。

数は五匹であり、どちらかと言えば少ない方だろう。

 ゼノンはゴブリンにバレないように、ゆっくりと忍び足で近づく。

 ゴブリンとの距離が十メートル程となり、木陰から様子を見守る。

 ゴブリンが倒したのだろう狼型の魔物を解体しているところだった。

 それでもゴブリンという知能が低い魔物ゆえに手際が悪い。

 チャンスと見たゼノンは無警戒のゴブリンの背後へと、腰の剣を引き抜きゆっくりと近寄る。

 そして……。


「――はぁっ!」


 ギャッという小さな悲鳴が聞こえ、ゼノンの不意打ちにより一匹のゴブリンが息絶えた。

 その声に残りのゴブリン四匹がゼノンの方へと体を向けた。

 瞬時にゼノンを敵と認識したゴブリンは、武器を手に襲い掛かってきた。

 四体同時に襲い掛かってきたことで、ゼノンは一度後方へと下がる。

 そして一番手前のゴブリンに向けて手のひらを向け、魔法を放った。


「――火球(ファイヤー)!」


 放たれた魔法は一匹のゴブリンに直撃した。

 直撃したゴブリンは、声を上げるが火傷程度のダメージしか負っていなかった。

 ゴブリン達はその光景に鼻で笑う。

 現状ゼノンの使える魔法は初級の魔法であった。

 ゴブリン達は知らない。ゼノンが器用貧乏ゆえに様々な魔法が行使でき、さらには魔法の同時展開が可能だということに。


「一つでダメなら複数だ!」


 ゼノンはそう言い放ち、右手を振るった。

 すると、ゼノンの前に複数の火球(ファイヤー)が出現した。


「喰らえ!」


 四体のゴブリンのうち、一匹のゴブリンに魔法が殺到し――直撃した。

 小さな悲鳴が聞こえ、魔法が直撃したゴブリンは地面を転がっており、仕留め切れていない。

 ゴブリンが一瞬、視線を外したのを見たゼノンは駆けだした。

 今のゼノンに仲間はいない。

 だから、自分で考えて行動するしかない。

 戦闘で判断が遅いということは、それは死を意味する。

 マルチタスクが可能なゼノンにとって、戦いながら考えることは朝飯前のこと。

 地面に転がったゴブリンの胸部に剣突き刺す。


「これで二匹」


 仕留めたゴブリンには目もくれず、残りの三匹を見据える。

 動きが一瞬止まるも、すぐさま手に持っていた得物でゼノンに襲い掛かった。


「所詮はゴブリンと言いたいところだが、油断は禁物」


 迫るゴブリンを目で捉えつつ、攻撃を避ける。

 そのまま流れるようにしてゴブリンの背中を取り斬り裂いた。

 小さな悲鳴とともに背中が斬り裂かれたゴブリンは地面に倒れて動かなくなった。


「三匹……」


 すぐに後ろを振り返って剣を構え直し、体勢を立て直す。

 そこで残りの二匹がゼノンを見て動きを止めた。

 人数差で有利だと思っていたゴブリンは、ゼノン一人を相手にここまで追い詰められていたからだった。

 いくら最弱のゴブリンといえども、三匹も倒されては慎重にならなければならなかった。

 故にゴブリンは立ち止まり、ゼノンのことをしっかりと見ていた。

 自分達に勝てる相手なのかと。

 だがそれも束の間。

 二匹のゴブリンはゼノンへと襲い掛かった。


「逃げるべきじゃなかったのか?」


 そう告げるのと同時、ゼノンは一匹のゴブリンの攻撃を躱し、もう一匹に迫った。

 ゴブリンはゼノンが迫っていることに焦った表情をする。


「当てが外れたか?」


 ゼノンは二匹目の攻撃を避けると、その胸へと剣を突き刺した。

 力なく倒れるゴブリンをゼノンは確認することなく、後ろを振り返り手のひらを向けた。

 今まさに襲い掛かろうとしていたゴブリンに、ゼノンは魔法を放った。


「――火球(ファイヤー)!」


 小さな火の球がゴブリンに直撃する。

 ゴブリンから驚きと小さな悲鳴が聞こえたのと同時、ゼノンは駆け出した。

 そのままゴブリンの背後を取る。

 ゴブリンはゼノンから目を離したことで姿を見失ってしまう。


『ギャ……?』


 ゴブリンの腹部から剣先が突き出していた。

 ゼノンは剣を抜き、そのまま首を刎ねた。


「ふぅ……」


 ゼノンはゴブリンとの戦闘が終わったことで息を吐いた。

 そして自分の傷を確認するが、怪我は見受けられなかった。


「上手く戦えたかな?」


 戦闘を振り返ると、危ない場面やもっと気を付ける場面が多々見受けられた。

 ゼノンは頷く。


「よし。もう少し戦ってみよう」


 ゼノンは納得のいく戦闘ができるまで、戦い続けるのだった。



成長して強くなっていくゼノンを見守りいただけたらと!


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