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4話:新たなる剣

 ゼノンがやってきたのは、王都の外れにある鍛冶屋だった。

 周りには人は少なく、同様の鍛冶屋が点在していた。

 受付嬢のカトラが紹介してくれたのだが、最後にこう言っていたのを思い出した。


「頑固で気まぐれ。人を見て作るか判断する、か……鍛冶屋ってみんな頑固なのか?」


 そう思ってしまう。

 紹介してくれた鍛冶屋に着いたゼノンは古びた扉を叩く。

 少し待つが反応がなく、もう一度叩いてみる。


「聞こえとるわ!」


 男の怒鳴り声が響き渡る。

 少し面倒くさいと思いつつも、剣が無ければ塔に入れないので仕方がない。

 ゼノンが扉を開けて中に入ると……


「とんだ若造じゃねぇか。ここはガキが遊びに来る場所じゃねぇ!」


 ゼノンを見て開口一番にそう言い放ったのは、片手に金槌を持った40代前半の大柄な男だった。

 ゼノンは怯むことなく、ここに来た要件を伝える。


「剣を打ってほしい」

「剣だぁ?」


 訝しみの視線を向ける男にゼノンは続ける。


「ギルドのカトラからの紹介で来た」


 ゼノンの口から出た名前に、男の眉がピクリと反応する。


「カトラだとぉ……?」


 頷くゼノンに、男は深いため息を吐いた。

 そして頭をガシガシと掻き毟りながら口を開いた。


「カトラの紹介となれば話だけは聞いてやる。いいか? 話だけだぞ。とりあえずそこに座って少し待ってろ」


 そう言って男は奥に消えていった。

 言われた通り座り待っていると、程なくして男は戻ってきた。


「鍛冶師のガルートだ」

「ゼノン。見ての通り【原初の塔】に挑む、挑戦者(チャレンジャー)の一人だ」

「ふん。で? 俺に剣を打ってほしいと?」


 ガルートの言葉にゼノンは頷き、持っていた剣を鞘か引き抜いてガルートに見せる。


「この通り、剣が折れて使い物にならない。鍛冶師のガルートなら見て分かったと思うが、この剣は量産された安物だ。先日、10階層でミノタウロスとの戦闘で剣が折れた」


 受け取り剣を眺めたガルートは、「ほう……」と声を漏らした。

 それはゼノンが使っていた量産型の安い剣だが、折れたのにも関わらず、しっかりと手入れのされた跡が残っていたからだ。

 それでも鍛冶師であるガルートから見たら初心者もいいところ。

 そして先ほどのゼノンの話を聞いたガルートは思い出した。


「もしかして、つい最近仲間が全滅した挑戦者(チャレンジャー)っていうのは……」

「俺のパーティだ」

「そうか。こんなことを聞いてすまない」

「いや、気にしないでくれ」


 ゼノンはそこで気付く。

 この話はあの時いたギルドの者しか知らないはずだったからだ。

 他の挑戦者(チャレンジャー)が、外れにある鍛冶屋に来て話したとは思えない。

 ならと、消去法でいくとカトラしか存在しない。


「カトラから聞いたのか?」

「そうだ。仲間が死んだにも関わらず、辞めない者がいたと。しかも強い意志を宿していたって」


 ゼノンは自分がそう評価されていたと知り、少し恥ずかしい気持ちになる。

 仲間の為にも、頑張らなくてはならない。

 何より、ゼノンが目指すのは今も昔も変わらない。

 全ての《神の試練》を制し、最強になること。

 だからこんなところで止まっていられないと。

 ゼノンは一つの疑問を抱き、ガルートに質問した。


「カトラとはどういった関係なんだ? 受付嬢だから、そりゃあ鍛冶師の知り合いくらいはいると思うが……」


 こんな外れにいる鍛冶師と知り合いだとは思えない。

 ガルートは頬を掻きながら答えた。


「カトラは俺の一人娘だ」

「なるほど……」

「以外だったか?」

「そんなことはない。でも納得がいった」

「納得?」

「人柄をよく知っていて、尚且つその鍛冶師の腕を信頼しているってところだ。娘ならそりゃあ当然か」

「俺の腕を信頼している、か。照るな」

「いいことじゃないか。それで? 俺の剣は打ってくれるのか?」


 ゼノンの問いに、ガルートは……


「――当然だ」


 差し出されたガルートの手をゼノンは取った。

 ガルートは座り直し、ゼノンの顔を見る。


「ゼノン、剣の種類は知っているか?」

「すまない。詳しくはない」

「それじゃあ説明してやる」


 そう言ってガルートは親切に剣の説明をしてくれた。

 数時間ほどの長い説明が終わる。


「説明は終わったが、ゼノンはどの剣がいい?」

「無難にショートソードだな」

「まあそうだよな。無駄な説明だったかもな」


 ガルートが申し訳なさそうな表情をするが、ゼノンは首を横に振った。


「いい勉強になった。知らないことが多かったから」

「そう言ってくれると助かる。予算だが、どうする?」

「金貨三枚までに収めてほしい。頼めるか?」

「誰にものを言っている。任せておけ。最高の剣を打ってやる」


 自信満々にそう告げた。


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