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16話:50階層ボス攻略Ⅱ

 先程以上に強くなっているカイザーオーガと対峙するゼノンは、慎重に相手の動きを観察していた。

 少しでも判断を誤れば、死ぬかもしれない。

 だけど、それが挑戦者(チャレンジャー)というもの。

 どちらも動こうとはせず、睨み合っていたが、先に動いたのはカイザーオーガだった。


「――なっ!?」


 十メートル近い距離があったのにも関わらず、一瞬で詰められカイザーオーガの間合いへと入っていた。

 オーガという魔物は動きが遅いのが特徴だが、代わりに力が強い。

 だがそのオーガの動く速度が速くなると言われたらどうだろうか?

 きっと戦いたくないに違いない。


 すでに戦斧を振るえる間合いに入ったカイザーオーガは、三つの瞳がその姿を捉えた。

 戦斧を振るおうとするカイザーオーガを捉えたゼノン。回避行動を取ろうにも間に合わない。

 判断したゼノンは持っていた剣を盾替わりにした。

 ガンッという大きな音と、火花を一瞬だけ散らし、衝撃によってゼノンは吹き飛ばされた。


「――がぁっ!?」


 地面を転がるゼノンは、傷と汚れを気にせずすぐに立ち上がる。

 ズキンッと腕に痛みが走るが、迫るカイザーオーガを前に回復薬など飲む暇はない。

 眼前に迫る戦斧を間一髪で躱し、懐へと潜り込むことに成功する。

 力一杯、カイザーオーガの胴体を斬り付けるが、傷は浅く、致命傷になっていない。


『――ガァ!』


 鬱陶しそうに振るわれた腕を回避して後方へと跳躍し、一度大きく距離を取った。

 距離が出来たことで無造作に取り出された回復薬を一気に飲み干す。


「チッ、さっきより硬くなっているじゃねぇかよ」


 悪態を吐くゼノンだが、口元の笑みは未だにそのまま。

 今度はゆっくりと迫るカイザーオーガに向けて、ゼノンは手のひらを向けた。


「――炎槍(ファイヤージャベリン)!」


 三本の炎の槍がカイザーオーガへと放たれた。

 迫る炎の槍を前に、カイザーオーガは戦斧を振るった。

 それだけで三本の炎の槍は掻き消された。


「ズルいだろ!」


 思わずそんなことを言ってしまうが、カイザーオーガには伝わらない。

 ゼノンは魔法で身体を強化し、迫るカイザーオーガへと駆け出した。

 カイザーオーガは戦斧を振るうが、ギリギリで回避したゼノンは、地面に突き刺さる戦斧を駆ける。

 跳躍したゼノンはカイザーオーガの目へと剣を突き放った。

 鮮血が舞い、咆哮のような悲鳴がゼノンに衝撃となって襲う。

 吹き飛ばされるゼノンだが、空中で体勢を立て直し、地面に着地してカイザーオーガに笑みを向けた。


「今のは痛かっただろう?」


 挑発染みた言葉にカイザーオーガは反応しない。

 返答とは取れないが、カイザーオーガは怒りの眼差しをゼノンへと向ける。

 威圧となってゼノンに降りかかるが、それでも笑みを崩さない。

 そしてカイザーオーガの体に魔力が纏わり付き、振り上げられた戦斧に魔力が集まる。

 それを見たゼノンが額から冷や汗を流す。


「少し怒らせ過ぎたか……?」


 やらかしたかもしれない。今になって後悔するが、それでも弱点であり、どんなに強化しようと、強化されない目を狙ったのは良い判断だ。

 そこへ、振り上げられた戦斧が――振り下ろされた。

 斬撃が地面を砕き迫る。


(受け流すか? いや――無理だな)


 即座に無理だと判断したゼノンは回避を考え――止めた。

 ゼノンの取った行動に、カイザーオーガは驚いたような表情をする。

 ゼノンは避けるのではなく、斬撃に向かって走ったのだ。

 迫る斬撃を前に、ゼノンはカイザーオーガに向かって飛んだ。空中で体を捻り、斬撃を避ける。

 服の一部が掠ったが、ダメージは負っていない。


 驚きで固まるカイザーオーガの側に着地したゼノンは、見様見真似で剣に魔力を流す。

 だがゼノンは斬撃に使うのではなく、剣の強化に使ったのだ。

 身体を強化できるのなら、剣も強化できる。

 その原理でやってみたら出来てしまった。


 カイザーオーガは立ち止まっているゼノンに、再び剣を振るった。

 間一髪回避したゼノンは、そのままカイザーオーガの脇腹を切り裂いた。


『グォォォォオ!』


 カイザーオーガから悲鳴が聞こえた。

 硬かった皮膚は切り裂かれ、血を流していた。

 うまくいったことで口元が僅かに上がる。

 互いに見つめ合う。


「――行くぞ!」


 ゼノンは片手に火球(ファイヤー)の魔法を出し、駆け出した。

 そこからゼノンとカイザーオーガによる激闘が繰り広げられ、両者はボロボロになっていた。

 だが有利なのはカイザーオーガであった。

 ゼノンもすでに余裕がない。

 額から血を流し、血だらけになりがら、ゼノンはカイザーオーガに向けて剣を構える。

 口の中に血の味が広がるも、地面に吐き捨てる。

 静寂な空間は、次の瞬間には再び火花と剣と戦斧による衝撃音が響き渡る。


「――がっ、はっ!?」


 ゼノンが思いっきり吹き飛ばされるが、剣を支えに何度も立ち上がる。

 両者の限界が近づいていた。

 これ以上長引けば、ゼノンは死ぬ。

 それを理解していたゼノンは、剣を構え、深く息を吐いて瞑目した。

脳内では今までのカイザーオーガとの戦いが流れる。

 ゼノンは目を開き、カイザーオーガを捉えた。


「これで決めようぜ!」


 ゼノンは残った魔力を全て、体へと行き渡らせた。

 睨み合うこと数秒、両者が動きだした。

 カイザーオーガの、今まで以上に素早い戦斧による攻撃をギリギリで躱したゼノンは、懐へと潜り込み――胸部を突き刺した。

 そして、数秒してカイザーオーガの体が光となって消えていく。

 最後に残ったのは、拳よりも大きい魔石が一つ、音を立てて地面に落ちた。

 こうしてゼノンは50階層ボス、カイザーオーガを激闘の末、倒すのだった。




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