14話:50階層ボスに向けて
ゼノンがダンジョンに籠り始めてから一カ月近くが過ぎた。
【原初の塔】49階層へとやってきていた。
ゼノンは現在、鬼の魔物であるオーガに周囲を囲まれていた。
その数は何と二十体。
オーガは強力な魔物であり、普通はパーティで倒すものだ。
そだがゼノンはピンチにも関わらず、余裕な表情を浮かべていた。
「またお前らか。懲りないよな」
ゼノンはオーガ達と何度も戦闘を繰り広げていた。
逃走してはまた襲ってくるので、非常に迷惑な相手だった。
それでも戦闘の訓練にはあるのでゼノンは逃げることは一切しなかった。
ゼノンは剣を構え、相手の出方を伺う。
ここで自分から仕掛けるというのは、此方に大きなアドバンテージがあった時だけ。
それ以外でこちらから仕掛けては、多数相手には不利になってしまう。
それを理解してゼノンは、慎重に相手の出方を伺っていたのだ。
緊迫した空気に耐えられなかったのか、ゼノンの正面にいるオーガが仕掛けてきた。
そのオーガが動き出したのを合図に、周囲を囲んでいたオーガ達も動き出した。
正面の攻撃を回避しながら背後からの攻撃も受け流す。
魔力探知に両脇から迫るオーガを捉え、上に跳躍することで回避する。
ゼノンは真下にいるオーガに向けて左手を向け、火の魔法を放った。
「――火球」
ゼノンの放った複数の火球がオーガに直撃し、爆発して砂塵が舞う。
だが、オーガに下級の魔法はダメージが入らない。ではなぜゼノンがこの魔法を使ったのかというと、煙幕の代わりである。
周囲に立ち込める砂塵により、オーガはゼノンの姿を見失ってしまった。
『ガァァ――……』
一体のオーガから悲鳴が聞こえ、ドサッと地面に倒れた音が響いた。
ゼノンは魔力探知を使って周囲のオーガを把握し、目に魔力を集めることで視力の強化を行っていた。
そこから順調にオーガを倒していき、順当にその数を減らしていく。
砂塵が晴れた時には、オーガの数は十体までになっていた。
オーガ達が一歩、後退した。
(怖気付いているのか……?)
ゼノンはオーガ達が怖気付いているように見えた。
それでも油断はできない。相手はオーガなのだから。
ゼノンは剣を構え直すと、オーガ達が警戒して武器を構える。
ゼノンが一歩詰め寄ると、オーガ達が一歩後退した。
(やっぱり警戒しているか。なら……!)
ゼノンはもう片方の手に火球の魔法を出す。
そして――ゼノンが動き出した。
正面で警戒するオーガに魔法を放ち、怯ませる。
その隙を突いて首を切り裂き一体を仕留める。
両サイドにいるオーガがゼノンに向けて棍棒を振り下ろした。
砂塵が舞い、オーガはその一点を見つめる。
風が吹き、砂塵が晴れると、そこには血の一擲も存在しなかった。
見渡しゼノンを探すオーガ達。
一体のオーガが悲鳴を上げて地面に倒れた。
「探しているのは俺だろ?」
その瞬間、一気に襲い掛かるオーガ達。
ゼノンが嗤った。
「それは悪手だ」
一体の攻撃を躱し、もう一体の攻撃を受け流しつつ背中を斬り付けた。
攻撃は浅く仕留め切れていない。
ゼノンは手のひらをオーガに向け、傷つけた箇所に向けて魔法を放った。
「――雷撃!」
雷が傷付いたオーガの背中に直撃した。
痺れて動かないオーガにゼノンは駆け、首を刎ねた。
一度距離を大きく取ったゼノンは、オーガの数を確認する。
「残りは三体か。余裕だな」
そのまま危なげなく二体を仕留めた。
その時、一体のオーガが逃げ出した。
「逃がすか! ――土の拘束!」
逃げ出すオーガの両足が地面に飲み込まれた。
地面が固まったことでその場に拘束され、逃げ出すことが出来なくなってしまった。
ガラ空きとなったオーガの背後に、ゼノンは手のひらを向けた。
「――炎槍!」
炎の槍が、身動きの取れないオーガの背中に向けて放たれた。
後ろを振り帰ったオーガが目にしたのは燃え盛る炎の槍。
急いで逃げようとするオーガの背中を炎の槍が貫いた。
ドスンと倒れるオーガを最後に、周囲に魔物姿は見受けられない。
倒したオーガの魔石を回収し、ゼノンは近くの木に腰を下ろしてもたれかかった。
「思ったより疲れたな。魔法も練習出来たし、次のボス戦に備えてどこか休める場所を探すか」
しばらく休んだゼノンは、ゆっくりできそうな場所を探す。
魔物を倒しながら歩いていると、次のボス部屋の近くで休めそうな場所を見つけた。
「ここにするか」
決めたゼノンは早々に眠りにつき、ボス戦に備えることにした。
起きたゼノンは装備を取り出して手入れを始めた。
その後少し体を動かし、違和感がないか確認する。
十分動かして問題がないことを確認したゼノンは頷いた。
「よし、問題ないな」
ボス戦では必要ない物を、ブレスレッドに収納することで身軽にする。
階段を登り、程なくして巨大な二枚扉の前に到着した。
大きな門を前に、ゼノンは息を飲んだ。
50階層ボス。ここ【原初の塔】の中間地点となる場所だ。
もう一度確認するゼノンは頷き、扉を両手で押し開けた。
「――さあ、攻略の時間だ」
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