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13話:順調な攻略

 ゼノンは一週間程の休息を取り、【原初の塔】に足を運んだ。

 今日から本格的に攻略していくためだ。

 収納のブレスレットのお陰で、食料や回復薬などのストックが十分すぎるほど確保できた。

 カトラやガルート、マリーにも【原初の塔】に籠って攻略する、と伝えているので心配はいらない。

 余計な心配をかけて、捜索隊が出されるよりはマシと判断したからであった。


「はぁぁっ!」


 一体のコボルトが斬り伏せられた。

 ゼノンは現在、【原初の塔】26階層にやってきていた。

 順調に進んではいるが、最初の階層と比べると、魔物が強くなっている。

 連携を取って攻撃してくるが、ゼノンは魔法も駆使して倒して進んでいく。


 一日1~2階層ずつ進んではいる。

 他の挑戦者(チャレンジャー)と比べたら、ゼノンの階層攻略速度は異常なほど早い。

 その理由はもう一つあり、アイリスから魔物などの魔力を持つ存在を見つける方法を教わっていた。

 その方法とは、自身の魔力を周囲に薄く広げるようにしていく。すると魔力の反応が引っ掛かる。

 アイリスはこの技を『魔力探知』と命名していた。


「どこかいい休憩場所はないか?」


 長時間の攻略続きでゼノンは疲れていた。

周囲を歩き探索していると、洞窟を発見して中を確認する。

 暗くて分からないので、ゼノンは『魔力探知』を少しアレンジする。

 周囲に魔力を広げるのではなく、前方のみに魔力を飛ばす感じで使用した。

 洞窟の中に魔力が広がっていき、脳内に洞窟の構造と魔物の反応が浮かび上がってくる。


「広いな。それに魔物の反応が少ない」


 暗い洞窟にいる魔物など極わずか。


「魔物は怖いが、洞窟なら外より危険は少ないか。地面に穴を掘ることも考えたが……」


 洞窟があるならその方がいいだろう。

 決めたゼノンは両サイドに土の壁を作ることで魔物の侵入を拒む。

 壁は何重にも重ねて作ったので、いざとなったときの対処も可能だ。

 ゼノンは満足そうに頷くと、収納のブレスレットから荷物を取り出して食事の準備を始める。

 基本、野営での食事ともなれば、乾燥させた干し肉やパンが主流だ。

 だが、ゼノンが取り出したのは新鮮な肉だった。


「この収納のブレスレット、入れた時のまま保存が可能だから、便利だな」


 そう。ガルートから貰った収納のブレスレットの能力だった。

 生きた生物以外なら、何でも入れた時と同じ状態で取り出すことが可能なのだ。

 ガルートに感謝しつつ、食事を作り始めるゼノン。

 料理なんてできないと思われるゼノンだが、器用貧乏故になんでもできる。

 だから料理だって人並みにできるのだ。

 完成した料理を食べ終わったゼノンは、寝床の準備を始め寝ることで疲れを癒すのだった。



 起きたゼノンは片付けを済ませ、早々に洞窟を出て攻略へと取り掛かった。

 現れたホブゴブリン三匹を倒したゼノンは、ふと気付いた。

 自分が以前よりも強くなっていることに。

 現れたホブゴブリンも、以前のゼノンであれば苦戦していた相手。

 それもこうも簡単に倒しているのだから、驚かないというのが無理な話だった。


「俺、強くなっているのか……」


 ゼノンは強くなっていることに笑みを浮かべ、拳を握り締めた。


「もっと強くなってやる!」


 意気込んだゼノンは、次の階層に向けて歩を進めた。

 それから一週間が経過したゼノンは、35階層までやってきていた。

 30階層ボスは強力な魔物ではなく、集団で襲い掛かってくるタイプの部屋、通称『モンスターハウス』と呼ばれるものだった。


 苦戦はしつつも、なんとか乗り越えたゼノンだが、思ったのは「もうやりたくない」という感想だった。

 百体近い様々な魔物が現れては連携取って襲ってくるのだ。

 誰でもやりたくはなかっただろう。

 だがモンスターハウスを突破したお陰なのか、魔物との戦闘が楽に感じるようになっていた。


 そして、常時『魔力探知』を使い、さらには魔法も使っての戦闘だったので、魔力を一気に消耗した。

 一日である程度回復はしたが、少し魔力に余裕があるようにも感じた。


「もしかして魔力を使えば使うほど、魔力量が上がるのか……? あの時は底になるまで使ったが、それが原因かもしれないな」


 ゼノンの推測は正しく、魔力は一度底について回復すれば、多少なりとも内包する魔力量は向上している。

 推測したゼノンは試してみることにした。

 なるべく1階層の攻略で全魔力を消耗するようにして戦っていると、明確に分かるほど内包する魔力量が上がっていた。


「推測が正しかったならこのまま攻略を続けよう。だけど主な戦闘は剣や体術を使った戦闘に趣を置こう」


 方針を決めたゼノンは、着々と攻略を進めていくのだった。





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