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11話:魔道具

 ギルドで一悶着あったが、アイリスの仲裁のお陰で事なきを得たのであった。

 そんなゼノンは今、ガルートの鍛冶屋へとやってきていた。


「ガルート、いるか?」


 声をかけて中に入ると、丁度ガルートが奥から出てきた。

 ガルートは工房で欠いた汗を拭い、椅子に座ってゼノンを見た。


「ゼノン、攻略から戻って来たのか」

「昨日な」

「そりゃあ良かった。それで、ここに来た理由は一体?」


 ゼノンはここに来た理由を説明する。


「実は一週間【原初の塔】に挑み続けていたんだ。その間手入れはしていたが、ガルートに見てもらおうと思って」

「なんだ、そういうことか。どれ、見せろ」


 ゼノンはガルートに剣を手渡す。

 受け取ったガルートは鞘から剣を引き抜き、じっくりと確認する。

 数分の間剣を見たガルートは、剣を鞘に戻しテーブルに置いた。


「及第点ってところだ。言われた通り、最低限の手入れはされている。使っていて違和感とかはあったか?」

「ないな」

「だがまあ、少し待ってろ。俺が研ぎ直してくれる」

「いいのか?」

「定期的に見せに来いと言ったのは俺だからな。約束は約束だ」

「助かるよ」


 ガルートは剣を持って工房へと消えていった。

 少し待っていろとのことだが、時間もあるので中に置かれている剣や槍を手に取り、空いた場所で振るってみる。

 長剣を振るってみる。


「槍もそうだが、長剣も俺には扱いずらいな。魔法も並行使用となると、やっぱりショートソードが一番だな」


 使えるには使えるのだが、ゼノンの戦闘方法は魔法を併用しながら戦いだ。

 長剣などの間合いが広くなる武器は、ゼノンには不向きだった。

 ガルートが戻ってきて、長剣を持っていたゼノンを見て驚いた顔をしていた。


「終わっ――って、どうした?」

「試しに長剣とか槍を振るってみたんだが、魔法も使うから両手が塞がるのは俺のスタイルには合わないと思ってな、断念したところだ」

「なるほどな。魔法を使うのか……」


 少し考える素振りをするガルート。


「あそこにあったはずだ! それと剣は研ぎ直してやったから確認しておけ」

「あ、ああ……」


思い出したような表情をしたガルートは店の奥へと急いで向かった。

 少しして奥から「あったあった」と声が聞こえ戻ってきて、その手にはブレスレッドが握られていた。


「これだ」

「ブレスレッドってことはアクセサリーか?」

「違う違う。これは昔【原初の塔】で手に入れた魔道具(アーティファクト)だ」

「手に入れた? ガルート、もしかしてお前……」


 ゼノンの言葉にガルートは頷いた。


「俺は元挑戦者(チャレンジャー)だ」

「やっぱりか」

「驚かないんだな?」

「多少は驚いたよ。それで一体これは?」


 ゼノンの問いに、ガルートはニヤッと笑みを浮かべた。


「これは収納の魔法が掛けられている」

「まさか!」

「察しの通りだ」

「でもどうしてこれを急に? 売れば大金になる」


 マジックバック同様に、収納系の魔道具ならかなりの金額で売れる。

 そしてガルートの持っているそれが【原初の塔】で出た魔道具(アーティファクト)ならば、さらに高価な代物だ。


「お前にやる」

「……は? え? はぁ?」


 急な言葉に困惑するゼノンは、どうして自分に上げるという経緯に至ったのか問いただす。

 するとガルートは恥ずかしそうに頬を掻きながらも答えた。


「仲間を失ったことで引退した。これも元々は仲間が持っていた物だが、死ぬ直前に形見として持たされた」

「形見ならなおさら俺なんかに……」


 返そうとするが、ガルートは拒否する。


「いや。お前が持っていてくれ。これをアイツから受け継いだ時、『俺だと思って連れて行ってくれ』と言われた。ゼノン、お前が俺の代わりに、アイツらにまだ見たことのない冒険にでも連れて行って見せてやって欲しい。使われないよりも、相応のヤツに使われた方が死んだあいつらも喜ぶさ。それにゼノンなら誰にも成し得なかった何かを成し遂げるって俺の予感が告げているんだ」


 ガルートとゼノンの目が合う。

 数秒、あるいは数分という時間だが、ゼノンはガルートが本気で言っているだと理解する。


「……分かった。ガルートの想い、俺がしっかりと受け取った。大切に使わせてもらう」

「そうしてくれ。ちなみにだが容量は知らない」

「知らない?」

「どれだけ物を入れようとも、魔物を大量に入れようとも、収まることを知らない」

「つまりは?」

「めっちゃ入る。それも膨大な量が」


 ゼノンの口から乾いた笑い声が漏れる。

 ガルートがゼノンの肩を叩く。


「まあ、よろしく頼む」

「ありがとう」

「次はいつ挑みに行くんだ?」

「数日休息を取る予定だ。そしたら挑みに行く」

「そうか。暇なときにでも顔を見せてくれ。ああ、それと」


 出て行こうとしたゼノンは足を止め、振り返った。


「カトラが今度、家で食事でもどうか、と言っていた。俺も大歓迎だ。時間があれば来てくれ」

「分かった。近いうちに行かせてもらう。じゃあ」


 ゼノンはガルートの鍛冶屋を後にし、次に行く場所、マリーの店に歩に向かったのだった。



 


12話の更新は18時頃です


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