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10話:ギルドで

 20階層を攻略したゼノンは魔石を回収し、痛む体に鞭打ってボス部屋の奥にある部屋に向かう。

 部屋を開けると、床に魔法陣が描かれていた。

 これは10階層でミノタウロスを倒したときと同じだ。

 その先には21階層へと続く階段がある。

 だが、今回は21階層にはいかない。

 理由は単純。ゼノンがこれ以上戦えないからだ。

 ゼノンは魔法陣の上に立つと光始めた。


「それじゃあ、帰るか」


 そう言葉を残し、ゼノンの姿は消えるのだった。

【原初の塔】を出ると、日が沈んでおり、西の空が赤く染まっていた。


「もうこんなに経っていたのか」


 塔の中では昼夜様々だ。

 昼のように明るければ、夜のように暗い階層もある。

 兎も角、ゼノンは宿に戻ることにした。


「ギルドに行くのは明日だな。というか、ゆっくりしたい……」


 疲れ切っていたゼノンは宿へと戻るのだった。

 翌日、ゼノンはギルドに赴いていた。

 今日の予定は今回の塔攻略で回収した魔物の魔石をギルドで買い取りをしてもらい、その後は鍛冶屋のガルートのところで剣の手入れをしてマリーの店で次の塔攻略で使った分の買い足しだ。


「魔石の買取りをお願いしたい」

「分かりました――ってゼノンさん! 戻って来たんですね。一週間も音沙汰がなかったので心配しました」


 カトラはゼノンが無事に戻ってきたことで安堵の表情をする。

 他の挑戦者(チャレンジャー)からは、ゼノンが一人で【原初の塔】に挑み帰ってきたことで驚きの表情をしている者が多数いた。


「どうせ2~3階層程度しか攻略できてねぇだろ」

「一人でボス討伐なって、よほどの実力者でもなければ不可能だろ。一介の荷物持ちには無理無理」


 誰もゼノンが20階層ボスを倒したとは信じていなかった。


「ではゼノンさん、先にドッグタグのご提示を」

「はいよ」


 カトラに渡して少し、「えっ!?」という驚きの声が聞こえた。


「ゼノンさん、一人で20階層のボスを倒したんですか!?」


 大きな声でそう尋ねるカトラだが、後になって周りが自分を見ていることに気付き、急ぎゼノンに頭を下げて謝罪した。


「す、すみません!」

「いや、気にしてないから大丈夫。でも、できればもう少し声量は下げてほしいかな。王都ではあまり目立ちたくないんだ。こういう扱いを受けていたから」

「はい。気を付けます」


 謝罪を受け入れたゼノンだが、周りの反応は違う。

 訝しむ視線がゼノンに突き刺さる。

 ヒソヒソと聞こえてくるのは疑いの声。


「ソロで20階層攻略だと?」

「たしか、20階層のボスはゴブリンジェネラル一匹と取り巻きのホブゴブリン二匹、だったよな……?」

「そう聞いている。一人でそれらの相手をするとなると、さっきも話していたように、よほどの実力者でもなければ無理だ」

「だがあのカトラちゃんがそう言っているなら本当なのか? ドッグタグには攻略した階層が表示されるのみ」

「あの荷物持ちのゼノンが他の人と組めるとも思わない」


 挑戦者(チャレンジャー)の間でそのような会話がされていた。

 事実、ゼノンが一緒にパーティを組まないかと誘ったところで、組もうとする者は極わずかしかいないだろう。それも戦闘面ではなく、荷物持ちとして。


「ゼノンさん、魔石の買い取りでしたね?」

「これだ」


 カトラに言われ、ゼノンは回収した魔石をカウンターに置いた。


「ゴブリンジェネラルの魔石が一つと、ホブゴブリンの魔石が二つ。他にも途中階層で出てくる魔石もですね。少しお時間をいただきます」

「分かった」


 待ち時間の間、ゼノンは休憩スペースに置いてある椅子に座って待機することにした。

 そして椅子に座って待機しているゼノンに声をかけてくる者がいた。

 それは先ほど会話をしていた挑戦者(チャレンジャー)達であった。


「よぉ、ゼノン」

「……なんだ?」


 面倒くさいと分かりながらも、返事を返す。


「荷物持ちのお前が本当に一人で20階層ボスを倒したのかよ?」

「嘘言ってんじゃねぇよ。本当のこと言えよ」


 男達はゼノンを疑っていた。


「一人で倒した。お前たちに関係ないことだろ」


 早々に会話を終わらせようとするゼノンだが、男達は終わらない。


「教えないか。ならお前が本当のことを言うまで体に教え込ませてやるよ」

「はぁ? 関係ないって言っただろ。どうしてそこまで俺に突っかかってくる」

「テメェが嘘を言うからだ」

「嘘は言ってない。本当のことだ」


 男達はゼノンを囲む。


「……何のつもりだ? ギルド内での争いは禁止されているはず」


 睨み合っていると、奥から静止の声がかけられた。

 全員がそちらを振り向くと、フードを被った者が男達を睨みつけていた。


「んだテメェは? やるってのか?」

「部外者は引っ込んでろ」

「部外者なのはあなた達もでしょ?」


 聞いたことのある声にゼノンはハッとする。

 そしてフードを取ると、艶やかな銀髪と、紅玉のような赤い瞳が露わとなった。

 つい最近知り合った彼女の名は、アイリス・ティファ・グラシア。

 またの名を【剣姫】。


「け、剣姫……」

「ど、どうしてこんなところに」


 男達の質問に彼女は答えた。


「私はこの国の王女であり、挑戦者(チャレンジャー)だからよ」


 アイリスだけが【賢者の塔】までを踏破している人物であり、誰しもが認める最強の挑戦者(チャレンジャー)である。

 無言がギルド内を支配する。


「ならどうして、こんな奴を助ける?」

「こんな奴?」


 そう言って視線がゼノンに向けられる。


「一週間ぶり、だな」

「そうね」


 数秒の沈黙。


「【剣姫】、一つ聞きたい」

「なに?」

「ゼノンとはどういう関係だ? 荷物持ちで雇ったのか?」

「ゼノンとはそうね」


 一瞬目が合うと、アイリスが笑ったように見えた。


「私の友人、友達ね」

「友達?」

「そう。それと一つ言っておくわ」


 アイリスはそう言って周囲を見渡してから告げた。


「ゼノンは荷物持ちなどではないわ。ここにいる誰よりも塔のことを理解し、そして成長し続けている。それにここにいる誰よりも強い意志を宿しているわ」


 少しの間が空き、アイリスは最後に言い放つ。


「あまりゼノンを下に見ないことね」


 アイリスはそう言い放ち、立ち去って行った。

 その後はゼノンに絡んでくる者はいなかった。


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